学長室から
学長トピックス
- 2026年度 二松学舎大学・大学院入学式 式辞
- 2025年度 二松学舎大学・大学院学位記授与式 告辞
- 教育研究奨励助成(教育奨励賞)表彰が行われました
- 『明秀学園日立高等学校創立100周年記念式典』において学長が記念講演を行いました
- 朝日新聞出版 AERA MOOK「就職力で選ぶ大学2026」に、佐藤学長のインタビューが掲載となりました。
- 佐藤学長が招待をうけ、駐日イタリア大使と面会しました
- 2025年度 二松学舎大学・大学院入学式 式辞
- 第11回葛飾柴又帝釈天全国書道コンクール 7名入賞
- 2024年度 二松学舎大学・大学院学位記授与式 告辞
- 明秀学園日立高等学校卒業式【2025年3月1日】
- 千代田区長と学長等との懇談会に佐藤学長が出席しました
- 「倉敷市・二松学舎大学連携講座」学長ご挨拶
- 2024年度「夏休み子ども研究会」学長ご挨拶
- 2024年度 二松学舎大学入学式 式辞
- 2023年度 二松学舎大学・大学院学位記授与式 告辞
- 2023年度 二松学舎大学入学式 式辞
- 2022年度 二松学舎大学・大学院学位記授与式 告辞
- 2022年度 二松学舎大学入学式 式辞
- 2021年度 二松学舎大学・大学院学位記授与式 告辞
- 2021年度 二松学舎大学入学式 式辞
- 2020年度 二松学舎大学卒業生・大学院修了生への告辞
- 江藤茂博学長 2020年度 入学生への祝辞
- 2019年度 二松学舎大学卒業生・大学院修了生への告辞
- 江藤茂博編『文学部のリアル、東アジアの人文学』(新典社)が刊行されました
- 2019年度 二松学舎大学入学式 式辞
- 二松学舎大学附属高等学校入学式
- 明秀学園日立高等学校入学式
- 二松学舎大学附属柏中学校・高等学校入学式
- 学長 江藤茂博「小津安二郎 神戸 もしもの三人」が掲載されました
- 平成30年度 二松学舎大学卒業式 告辞
- 平成30年度 二松学舎大学卒業生名刺交換会 挨拶
- 「千代田区内近接大学の高等教育連携強化コンソーシアム」開設記念 シンポジウム開会挨拶
- 平成30年度 二松學舍大学 春セメスター卒業式 告辞
- 平成30年度 二松學舍大学入学式 式辞
- 平成29年度 二松學舍大学卒業式 告辞
- 平成29年度 二松學舍大学卒業生名刺交換会 挨拶
- 平成29年度 二松學舍大学 春セメスター卒業式 告辞
- 平成29年度 二松學舍大学入学式 式辞
- 平成28年度 二松學舍大学卒業式 告辞
- 平成28年度 二松學舍大学卒業生名刺交換会 挨拶
- 二松學舍大学創立140周年記念事業 二松學舍大学私立大学戦略的研究基盤形成支援事業主催シンポジウム 「「論語」と「算盤」が出会う東アジアの近代 渋沢栄一と三島中洲」閉会挨拶
- タイ出張記 11月11日(金)~15日(火) チュラーロンコーン大学における漢文ワークショップについて 副学長 磯 水絵
- 柏市と包括的な連携に関する協定を締結しました
- 中国文化大学日本語学科3年江さんとの道中記 付 第1回 台日大学学長フォーラム参加顛末記 副学長 磯 水絵
- 平成28年度 二松學舍大学入学式 式辞
- 平成27年度 二松學舍大学卒業式 告辞
- 二松學舍大学と倉敷市との連携協力に関する協定調印式 挨拶
- 二松學舍大学卒業生名刺交換会<異業種交流会> 挨拶
- ハンガリー エトヴェシュ・ロラーンド大学のイムレ・ハマル人文学部国際担当副学部長が本学を表敬訪問されました
- フランス リール第3大学 リチャード・デイヴィス副学長が本学を表敬訪問されました
- 菅原淳子学長がIAUP(世界大学総長協会)50周年記念式典・記念国際学会に参加しました
- 平成27年度 二松學舍大学入学式 式辞
- 第17回 IAUP(世界大学総長協会)2014横浜総会に出席しました
- 平成26年度 二松學舍大学入学式 式辞
2025年度 二松学舎大学・大学院入学式 式辞
満開を迎えた東京九段の桜も、今は緑の葉桜に変わりつつあり、生命の息吹が感じられる季節となってきました。新たな挑戦を始めるにふさわしいこの日に、多くの新入生を迎え、また多くの関係者の皆様にご臨席を賜り、令和七年度二松学舎大学入学式を挙行できますことに深く感謝いたします。
二松学舎大学に入学された皆さん、また大学院に入学された皆さん、ご入学おめでとうございます。これまでの皆さんのご努力に敬意を表しますとともに、皆さんを支えてこられたご家族や関係者の方々にお祝い申し上げます。
晴れて大学生、大学院生となられた皆さんに二松学舎大学の一員として、精一杯勉学に励んでいただくために、これから少しばかりお話ししたいと思います。
二松学舎大学は一八七七年、漢学塾二松学舎として、「己を修め、人を治め、一世に有用なる人物を養成するという「建学の精神」のもとに三島中洲によって創立されました。この建学の精神は、現代風に訳すと「自ら考え判断し行動できる能力を鍛え、社会のために貢献する人物を養成する」という意味になります。その後、長い歴史の中で「自ら考えることのできる」人材を多く社会に輩出してきました。
そして現在のカリキュラムでは、皆さんが希望されている学び、各学科等の専門的な科目のほかに、両学部共通の初年次教育における数理・データサイエンス科目、各種語学科目など、国際化、ネット時代、AI時代といった新たな要請に応じたバリエーションに富む授業科目を備えています。
ところで、時代の要請といえば、近年の生成AIの発展にめざましいものがあることはご存知でしょう。そこで、中には大学で課されるレポートは、生成AIに任せて仕舞えば作れてしまうので、大学ではこうしたツールの使い方を覚える以外に、一体何を勉強するのだろうと思われている方がひょっとしたらいるかもしれません。もちろん、答えは建学の精神にある通り、「自分の頭で考えられるようになる」ことですが、それが必要となる理由を簡単な方から順に三つ挙げていって説明したいと思います。
まず、いくら便利な機械やツールができたとしても、それを使うのは人間です。特に誰もが安価に同じツールを使えるとなれば、差は個人の能力の違いによって生じることになります。それは同じボールとバットを使っても、野球選手みんなが大谷選手と同じパフォーマンスを上げられないことから簡単にわかると思います。大学というところは、単に知識を覚えるだけでなく、学び方を学ぶ場、言い換えると脳の使い方を身につける場です。みなさんにはまだ脳の発達余地も多く残されています。安易にツールに頼らず、自分の頭で考えることで、少しでも地頭を鍛えることが、四年後の差につながって行きます。
二つ目は、他人との付き合い方の重要性です。誰もがAIを用いて短時間で同じ仕事ができるとなると、差は機械やツールの使い方ではなく、他の人間との間の関係で決まってくることになります。他人との会話からアイデアやインスピレーションを得る、他人と共同してより効率的に仕事をする、場合によっては他人との競争がモチベーションになることもあるでしょう。大学は、個人がそれぞれ自分の関心あるテーマを突き詰める場でもありますが、ディスカッションやグループワークなどを通じてコミュニケーション能力や協調性を身につける場でもあります。AIを活用することも必要かもしれませんが、周りの友人との対話を通じた学びを充分に楽しんでください。社会に出た時の差は、周囲の生身の人間との関係性構築の優劣によるということがわかるでしょう。
三つ目は、AIの出した答え、それを受けた自分の判断・考えが必ずしも正しくない場合があるという問題です。まずAIやネット情報に騙される危険性の回避方法は大学の授業にしっかり参加することで、自ずと分かってくると思います。一方、自分が誤ったことを信じてしまう理由は複雑で、人間の特性を深く理解する必要があります。自分の考えを客観視し、相対化してみれば、誤りにも気づくことができるのですが、これがなかなか難しいのです。
十八世紀に活躍したスコットランドの哲学者デイヴィット・ヒュームは「人間は誰でも近くの人間の思想を気にして、それが自分と一致すれば元気付けられ、不一致であれば衝撃を受け混乱する」と述べ、こうした傾向は人間本性に基づく普遍的なものと述べています。ここから党派が生まれ、いったん対立し合う党派のうちどちらかの党派に入れられてしまうと、自分を一体化させる人々に対しては愛着を、反対派に対しては敵意を抱き、誤った考えも修正できなくなってしまいます。ヒュームはまたこうした党派は自由な政治のもとで最も繁栄すると述べていますが、この言葉は今日の自由なネット上の言論空間におけるバトルの激しさを想起するとき示唆に富みます。
実際、ベストセラー作家のアマンダ・リプリーは近著『良い対立 悪い対立』で同様の分析をし、悪い対立に人は惹きつけられ、自らは厳然たる事実と正しい価値観に基づいて自分の意思で行動していると信じ込み、相手は全て誤っていると考えるとしています。ここには、例え間違った考えでも、それをお互いが信じ合うことで自分が味方に守られるという利点も影響しています。彼女は、悪い対立は、事実でも感情でもなく、単なる構図にすぎないとも述べています。
以上のように今後大きな過ちなく生きていくには、複雑極まる人間性を知り、自分を知り、自分の考えを相対化・客観視できるようになる必要があるでしょう。自分の能力を高めること、他人との付き合い方に上達すること、自らを客観視できるようになること、これらが生成AIの利用によって身につくわけではないことは明らかです。そのためには、さまざまな書籍に触れたり、友人と議論をしたり、自らの関心に沿って主体的に深く探究に取り組むことが必要です。
これから皆さんの学び舎となる本学は、その要望にこたえる体制を整えています。学修はもちろん、課外活動などを含めた大学生活の全般において、皆さんの挑戦をサポートする準備ができています。これからの四年間、自分の目指すものに向かって勉学に励み、二松学舎大学の学生として充実した学生生活を送っていただきたいと思います。そして我々もまた、全力で皆さんを支えたいと考えております。
無限の可能性を持っている皆さんが、本学での学生生活を経て大きく飛躍されることを祈念して、学長の式辞とさせていただきます。


