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2023年度 二松学舎大学・大学院学位記授与式 告辞

― 3月20日 ―

 学部を卒業される皆さん、そして、大学院を修了される皆さん、二松学舎大学教職員を代表して、心からお祝い申し上げます。また、学生の皆さんがここまで学びを続けることに、ご理解とご支援を捧げられたご家族やご関係の皆様にも、心からお祝い申し上げます。

 皆さんの多くが入学された2020年は、新型コロナウイルスが広がり、世界が凍り付いた年です。それからの2年以上、感染拡大防止のための厳しい行動制限が求められ、本学でも全面的なオンライン授業の実施や、入学式をはじめとした行事や課外活動が中止や延期となるなど、それまでとは全く異なる大学生活を送ることとなりました。皆さんが入学前に期待した大学生活は、よき友達、教員や先輩と出会い、中等教育と社会人との狭間にあって、最も自由に活動することができる大学生活を、活動的に過ごしていくことだったと思います。未知のウイルスによるパンデミック対策としてやむを得なかったとはいえ、その期待に十分応えられなかったことを大変申し訳なく思います。しかし、行動制限が少しずつ緩和され、教室やゼミナールに集ったときの皆さんの笑顔を私はしっかり覚えています。皆さんは、それからの2年間で多くを取り戻し、よく学び、仲間と高めあい、本日、無事卒業の日を迎えられました。大学生活を振り返り、困難に直面し、オンラインを活用して教員に対しより深く質問や意見を述べ勉学に励まれたこと、オンラインや対面の機会をとらえ、積極的に友達との輪を拡げたこと、家族への感謝と自らの貢献を自問自答し、如何にこの困難を乗り越えてきたか、その道のりを確認し、明日を切り拓いていく力にしてください。

 この間の出来事に目を向けると、2022年2月にはロシアによるウクライナ侵攻があり、世界的な穀物価格やロシア経済制裁に伴うエネルギー価格の高騰、サプライチェーンの見直しなど紛争がもたらす困難に私たちの生活も巻き込まれてきました。これからの人生の間には、誰しもが自然災害やパンデミック、世界で起きる紛争が、繰り返し私たちの生活を脅かすことを経験することでしょう。災害に遭った人たちの言葉のなかで印象的なのは、「かつての日常は取り戻せない、前を向いて生きていくだけだ」という言葉です。かつての日常を思い、羨んでも失った喪失感にさいなまれるだけで、よりよい人生を切り拓いて行くためには、前を向いて生きていかなければならないという決意が表れていると思います。困難に直面しながらも前を向き卒業の日を迎えられた皆さんもまたそうした決意を持って立ち向かってきたことでしょう。

 東日本大震災や熊本地震、能登半島地震、新型コロナウイルスの日本上陸の際も、人々の「秩序を重んじ助け合う」姿が世界から賞賛されました。同調圧力の強い国民性ゆえという人もいますが、繰り返し私たちを襲う災難の中で、「困ったときはお互い様」という精神文化が培われてきたのではないかと思います。分断は迫害を生み、団結こそが未来を切り拓くことを、繰り返される災害の中から経験と知性が汲み取ってきたのではないでしょうか。大学での学びは、知識の教授と知性の涵養だけでなく、これからの社会において人間がどう行動すべきかを考える徳育の場でもあります。新型コロナウイルス・パンデミックという困難に直面し、二松学舎大学に学んだ皆さんは、一致協力して感染予防対策に取り組み、その脅威に打ち勝つとともに、勉学、大学生活に前を向いて取り組み、この卒業の日を迎えました。改めて、心からおめでとうとお祝い申し上げます。

 本学自身もまた学術機関としての在りよう、研究倫理の保持に疑いの目が向けられるという困難に直面しています。私たちは、事案の正確な全容解明に取り組むとともに、研究倫理の徹底指示と研究倫理研修等再発防止策の着実な実行により、信頼回復に全力を尽くしていく所存です。本学創立147年間の歴史を大切に、皆さんの母校として、より評価の高い大学にしていく決意です。

 二松学舎大学には、卒業される皆さんを入れて33千人を超える卒業生がいます。日本のどこかで、世界のどこかで二松学舎大学の卒業生と出会うことでしょう。困難を乗り越えた皆さんは、必ずや二松学舎大学の仲間とともに、より良い未来を切り開いていくと確信しています。

 皆さんの努力と研鑽に対する心からの賞賛を以って私からの告辞といたします。ご卒業おめでとうございました。

2024年3月20日
二松学舎大学学長代理 髙岸直樹

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