学部卒業生、そして大学院修了生の皆さん、二松学舎大学教職員を代表しまして、ここにお祝い申し上げます。本日は、誠におめでとうございます。また、本日まで立派にご子息ご息女を育ててこられたご家族ご関係の皆様にも、心からお祝い申し上げます。

　この１年間、私たちは成員のひとりとして社会に協力することで、新型コロナウイルス感染拡大の世界的危機に立ち向かうことになりました。この感染防止のためのさまざまな自粛の日々では、大学本来の教育環境も私たちは保持することはできませんでした。

　現実は冷酷で誰もが救われるわけではありませんが、わずかでも何かを救うことが自分にもできるかもしれない。ボーダレス時代、グローバル時代の今日を、この消してはならない小さな可能性で、私たちはお互い結びついて生きているのです。このことを、不幸なかたちで実感せざるを得ませんでした。

　教育環境はたとえ変則的ではあったにせよ、私たちは、共に二松学舎大学の教育研究をしっかりと守ることができたと思っています。学びの場を決して放棄することなく、共にさまざまな工夫を試みながら、教えるものと学ぶものが互いを支え合う教場空間を、ここに生むことができました。それは、漢学塾を由来とする二松学舎大学にとって、まさに原点とも言える学びの場でもあったと思います。

　これからの皆さんの人生は、この社会変動での貴重な経験と、大学で学ばれたさまざまな知見とを重ねることで、新しい道を逞しく拓かれるであろうことを私は信じています。前例は参考にはなっても、そのまま踏襲することではなんら解決できません。これから新しい挑戦に満ちるであろう、皆さまの人生に大きな声援を贈りたいと思います。

　すでにご存じの通り、二松学舎大学は明治10（1877）年に漢学塾として出発した学校です。2000年を超える東アジア漢字文化圏の叡智をその背景とし、この九段の地に学校として長く教場を開いております。そして数多くの卒業生たちが、さまざまな領域で活躍されて、社会貢献の責務を果たされてきました。

　皆さんもまた、二松学舎大学で学んだひとりであることを誇りに、私たちを含め先行する世代から託されたことをしっかりと受けとめて、よりよい社会を、皆さんの豊かな人生と共に築いてもらいたいと思います。今後の皆さんのご活躍を心より願い、告辞とさせていただきます。

※ 3月16日（火）に九段キャンパス１号館中洲記念講堂・201教室・202教室において、感染に対する安全性に配慮しながら卒業生・修了生等に対する学位記授与を行いました。学長告辞は、当日、卒業生・修了生等に印刷物として配付しました。