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理事長トピックス

水戸英則理事長の 2022年 145周年新年のご挨拶

創立145周年を迎えた二松学舎とN’2030 Planの課題

 学生・生徒、保護者、教職員、卒業生、その他本学関係者の皆様方に、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

 二松学舎は、本年(2022年)創立145周年を迎えます。本学は明治10年(1877年)10月に、漢学者であり法律家であった三島中洲先生により、東京・九段の地に漢学塾二松学舎として創立されたことに端を発し、「己ヲ修メ人ヲ治メ一世ニ有用ナル人物ヲ養成ス」を建学の精神として、道徳心を基に倫理観を醸成することを教育の基本理念に置き、誠実で真面目、豊かな人間力を身につけた、真の国際人を育成することを使命として、教育を行ってきており、設置校として二松学舎大学、同附属高等学校、同附属柏中高等学校を運営し、在籍総数約5115名の学舎へと発展してきました。

 創立以来、夏目漱石、犬養毅、嘉納治五郎、平塚雷鳥など多くの有為な人材を輩出し、また、舎長には今『論語と算盤(そろばん)』で脚光を浴びている渋沢栄一のほか吉田茂など実業界、政界の重鎮が就任、新制大学移行後は、中学校・高等学校教員の輩出、最近では著名企業、公務員への就職など、社会的な評価を得て参りました。また高等学校では難関大学への進学実績を積み重ねてきております。

 新型コロナウイルスは、まだまだ予断を許さない状況が続いております。こうした中、一昨年来教職員の皆様が、オンラインや対面授業、オープンキャンパスの開催、また様々な防疫体制の構築等新たに直面する課題に挑戦し、数々の困難を乗り越えて来られたことに感謝する次第です。また本学の学生・生徒やその保護者の皆さまには、修学や学校生活について、いろいろとご心配されたことと思います。学校法人としましても、学生・生徒への数々の支援措置を取らせていただきました。

 さて、本学の長期ビジョン「N’2030 Plan」は今年で5年目に入りました。この長期ビジョンでは建学の精神に基づいて育成する人材像を、時代の先行き、AIに代表されるニューテクノロジーやSDGs、気候変動対応等による経済・社会構造の大変革や価値観の多様性を展望し、「日本に根ざした道徳心を基に、良質の知識と英語・中国語等語学力を身に付け、我が国の歴史と文化を理解し、かかる知識を背景として、よりよき社会を実現する目標を持って、グローバルに活動する逞しい人材」としています。この人材像実現のため、「2030年教育体制」の構築という目標の下、大学、両附属高等学校、中学校においてのカリキュラム改革を進めてきております。

 まず、昨年の「N’2030 Plan」の業績を簡単に振り返りますと、教育研究面において、 大学では、2017年度に都市文化デザイン学科、2018年度に国際経営学科を開設し、完成年度である2021年度の収容定員は、2720名となり、従来の2400名体制から320名の増員となりました。また文学部では、文部科学省から歴史文化学科新設ならびに、「中学校(社会)・高等学校(地理歴史)各教諭一種免許状」の教職課程認可を得ました。これで文学部は4学科体制となります。さらに本年4月施行予定の新カリキュラム導入に向けた諸準備のほかICT教育環境の拡充として九段キャンパスのWIFI環境を高速化・大容量化させ、1年次生から学生1人1台PC体制を開始しました。また、施設面では、2017年取得の「九段5号館」の整備も進み、4月からは、アキバラボの設備を移設、都市文化デザイン学科に限らず、多目的な施設としての活用を始めました。さらにWithコロナ時代の学生支援、就職支援の拡充・強化を図り、産業界、地域社会等との連携強化も図ってきたところです。

 次に両附属高校の課題である進学実績の向上については、両校とも難関大学への進学実績が引き上げられ、また同時に生徒募集力の強化、コロナ禍における生徒・保護者満足度の向上、奨学金制度の見直しも実施したところです。更に、「Society5.0」時代に求められる人材育成のため、2015(平成27)年度から段階的にタブレットPCの生徒一人一台体制を進め、現在では全生徒に普及が完了しており、これを活用した学習指導・進路指導の充実化が年々図られております。附属柏中学校については、生徒募集対策の見直し・特待生制度の改善等を図りましたが、引き続き定員に満たない状態です。2022年度入試に向け、法人・同中学校が一体となり対策を検討・実施しているところです。

 学校法人部門では、適切なガバナンスの充実・強化策として、ガバナンス・コードの策定・公表を行い、資産運用も初期の目標を達成しました。そのほか奨学金ファンドである2号積立金への繰り入れや寄付金募集体制の強化を図ったほか、文部科学省の改革総合支援事業については、タイプ3「地域社会への貢献」で採択されました。新型コロナ対応としては、大学、附属高校、同柏中高等学校両キャンパスとも、遠隔授業、各種会議のインフラ、オンライン化対応設備の充実化のほか、サーモグラフィー、飛沫防止パーテーション、換気設備、空気清浄機、消毒液の設置などを実施したところです。

 なお、昨年中、与党自由民主党や文部科学省設置の各種会議で学校法人制度のガバナンス改革論議が行われ、当該改革に対し私学団体が反対声明を出すなどの混乱ぶりが報道されました。文部科学省は今のところ本年4月以降の通常国会で私立学校法の改正を企図しており、今後成り行きを注視していく必要があります。

 次に2022年度の主要事業計画ですが、まず大学部門ではこの4月から文学部新学科である歴史文化学科(定員60名)がスタート、既述のごとく地理歴史の教員資格を取れる教職課程も備えております。また大学院国際日本学研究科(定員30名)も新たにスタートします。また数理データサイエンスを含む教養科目を両学部の初年次教育に織り込んだ新しいカリキュラムがスタートします。定められた3ポリシーに従い本カリキュラムを元に教育を進めて行きますと、「N’2030 Plan」の育成する人材像実現のための教育体制が創り上げられることになります。新カリキュラムのスタートを含め本年度以降は学修者の立場に立った教育の展開など教学マネジメント全般を見直し「教育の質保証」を再確認し、「良い教育をする大学」としてのブランド化を図っていく方針です。並行して今回のオンライン授業を行った結果、デジタル活用に対する教育現場の意識が高まっており、これを契機として教育環境にデジタルを大胆に取り入れることで質の高い成績管理の仕組みや教育手法の開発を進め、大学におけるデジタル・トランスフォーメーション(DX)を推進していくことを考えております。これは、大学教育における教学マネジメントにデジタル技術やAI技術を積極的に取り入れ、厳格かつ適正な成績管理等を通じて教育成果の可視化の一助としての信頼性あるディプロマサプリメントの作成など「学修者本位の教育の実現」、「学びの質の向上」「出口:就職等先の保証」に資するための取組における環境を整備していく方針で、学内に「教学マネジメントDX委員会(仮称)」を立ち上げ、具体案を検討していきたいと考えております。

 そのほか昨年来コロナ禍のためやむを得ず中止した卒業式や入学式、オンライン授業の展開も、大学が策定した「新型コロナウイルスの活動基準」によって、実施方法が決められることとなっており、その都度連絡をする形となりますので、公式ホームページをご覧ください。

 両附属高等学校および中学校でも、学習指導要領が探求型科目構成に代わってきており、タブレット端末を交えアクティブラーニング中心に、授業展開をしていくことになります。これらを通じて引き続き難関大学の実績引き上げのための対応を果たしつつ、 生徒募集対策である学校説明会、見学会、個別相談会のほか、入試説明会の実施や学校案内パンフレットやホームページのリニューアル、スクールバスのラッピング広告のほか、ブランドイメージ動画の作成、配信などによる広報活動を行っていく方針です。

 最後に法人部門ですが、既述の私立学校法改正等学校法人制度改革の動きを注視しつつ、法人運営の更なる透明性・公明性を強化するためガバナンス・コードの充実、情報公開の拡充等ガバナンス体制の改革を引き続き進めていくこと。人事制度・組織についても整合性ある形を追求していくこと。重要な使命である財務の安定的な管理・運営に配意し、将来の教育環境整備や奨学金基金の一部として活用するための恒常的な寄付金募集体制の強化を図りつつ、補助金については、改革総合支援事業制度の仕組みの共有を通じて、獲得を図っていくこと。資金運用については、規程に基づきリスク管理を徹底し慎重な運用を行っていくこと。このほか外部第三者評価による法人財務格付の実施などにより得たアドバイスに基づき各種改善を図ると共に、「N’2030 Plan」の最終目的である本学のブランド力の向上、すなわち「いい教育をする学校の評価獲得及び各設置校の志願者・入学者の増加とその安定」に結び付けて行きたいと考えております。この間、新型コロナウイルス感染症対策は昨年同様、十全を期しながら実施していく方針です。

 最後に二松学舎創立145周年を記念して、現在いくつかの記念事業・記念広報の実施を計画しており、本学の社会的プレゼンスを高めて参りたいと思います。この中で「創立145周年記念募金(二松学舎教育研究振興資金)」の募集もご案内させて頂く予定でございますので、ご協力頂ければ幸いです。

 以上、新年度の課題、話題をお話ししたところです。今後も、創立以来145年の私共の建学の精神に基づいた教育理念を継承しながら、予想される内外環境の激変など様々な事象に対応できる知恵を古典から生み出し、将来の発展につなげていくなど、建学の精神に則とった人材を育成していくことが、私共に与えられた使命であると確信しており、この方針の下、次の150周年に向かって進んで行きたいと思っております。

 教職員の皆様には、「皆さんの気合を揃え」各部署でそれぞれ、精励して頂きたくお願い申し上げます。また、卒業生、保護者、父母会や関連するステークホルダーの皆様に対しましても、引き続きご支援・ご協力をお願いして、145周年の新年のご挨拶といたします。