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理事長トピックス

平成27年 新年のご挨拶

 教職員の皆様、卒業生の皆様、本学関連の皆様に、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

「松 無 古 今 色」
松に古今の色はなし

 松の翠(みどり)は四季を通じ、今昔を問わず、いつもみずみずしく茂っています。創立138年目を迎える二松學舍が、長い歴史の上にまた歳月を重ねながら、その輝きを保ち、今よりも更に輝いていくためには、教職員が気合いを揃えて切磋琢磨し、松の翠を保っていく努力を続けて行く必要があり、このために策定されたN’2020 PLANに基づくアクションプランの実行が切に求められるところであります。
 さて、平成25年度から開始されたアクションプランは約2年が経過しました。進捗状況を概観しますと、大学部門においては、グローバル化や知識基盤社会化の進展等の環境変化に応じた大学教育の質的転換が大きな課題の一つで、学長を中心にこれを軸として教育改革を進めていただきました。具体的には、カリキュラムのナンバリング化、すなわち両学部の全開講科目を難易度別に順序だて、学生がどの順番で受講すればいいのか、その判別を容易にさせていく役割を持たせることとしました。同時にシラバス(学習計画書)に予習、復習時間の目安や小テスト、レポート作成等を指示するなど、授業以外の学習時間を増やすことで、履修科目の知識や理解をさらに深める試みを行ってきました。ナンバリング化については、今後更にもう一歩進めて、語学教育を含めた共通教育と専門教育の識別をつけていく方向での検討が必要となるほか、初年次教育や補習教育の充実、強化も本年の課題になります。次に教育方法については、課題を与えグループ討議や意見発表の時間を多く設けて、個々の学生が自分の意見を発表し、他人の意見に耳を傾け、それらについて、結論をまとめていける力を養うことが必要であり、アクティブラーニングや課題解決型、体験型授業の展開等、この面での教育方法の更なる拡充を検討いただくよう先生方にお願いしております。また、グローバル化対応面では、国際政治経済学部に2年次から履修できる英語特別プログラムを設置しました。さらに、文学部にも中国語や英語の語学プログラムを設置できないか、検討方お願いをしております。また海外大学との学術交流協定については、ハンガリー、中国、ミャンマーの大学との交流協定を学長、文学部長が現地に赴き、締結をしております。次にキャリア教育については、両学部に初年次から正課の授業として「キャリア教育」を設置しており、加えて文学部では、2年次に選択必修科目を増設しました。これまでもキャリア教育を行って参りましたが、学生の中には就職とは何か、何故就職をしなくてはならないのかなどの疑問を持っている向きが少なくなく、就職の意義や必要性、すなわち、大学と企業の違いや社会的に自立する意味などを、早いうちから教育する必要があるとの観点からの対応です。さらに学生個々の学修履歴や資格取得履歴、学習の成果等をデータベースに保持し、学生自身が将来を展望する際の自己分析や教員との面談、就職相談時等に利用できることを目的とした総合ポータルシステム「ライブキャンパス」も導入しました。こうした措置が本学の教育の質的転換を構成しており、これらのうち、どれか一つが欠けても、目標とする「社会に貢献し、社会で生き抜く力」を身に付けることはできません。これら本学の取組は、文部科学省の採択制補助金「私立大学等改革総合支援事業」に平成25年から2年連続で採択されるという成果を生んでいます。
 教育の質的転換の今年の課題は、上記措置をさらに深化させていくことに加え、GPAの厳格な運用にあります。GPAの利用の範囲を学部生の休学、退学予備学生のチェックや進級判断等へと拡大して行くことが必要になってきます。また授業評価体制の充実やFD・SD体制の充実、学修評価の判定等アセスメントポリシーの構築、高大連携・接続のあり方等も検討課題となります。
 次の課題はキャンパス整備です。平成25年度から大学機能を九段に完全集約致しました。これに伴う教室や学生のラウンジスペースの不足が懸念されておりましたが、既設の1・2・3号館に加え靖国通りに面した4号館の建設に着手し、昨年末無事に竣工をみました。4号館にはラーニングコモンズ(次世代型の自主学習スペース)やICTを活用した高機能教室を設置しており、東アジア学術総合研究所等も入る予定です。また、平成27年中に既設の1・2・3号館は全面的に諸部署の移転・改装を行います。2号館の1階、2階には、4号館と同様、ラーニングコモンズが新設されます。1号館には、すでに地下3階に移設が完了した大学資料展示室のほか、7階に国際政治経済学部教員の個人研究室が設置されます。また、3階では、教務課、学生支援課、入試課の教学事務部各課、キャリアセンター、教職支援センターをワンフロアに集約し、入学から卒業までの対応が一箇所で出来る、文字通り学生へのワンストップサービスが実現されることになります。これらの施策は私ども大学構成員として常に学生個々人への教育関連サービスの充実を第一とする考え方、Student Personnel Serviceの観点からの施策であります。大学九段キャンパスの整備はこれで一段落する訳で、今後はこれら施設の効率的な使用をお願いする次第です。
 附属高等学校においては、昨年、長年の夢であった野球部の全国高校野球選手権大会、夏の甲子園への出場を果たしました。柏キャンパスの内野練習場に、神宮球場と全く同じ人工芝を用いる等の環境整備が夏の甲子園大会出場への一助になったと考えております。これに加え、本年は野球部合宿所の改修を計画しており、昨年の野球部の活躍を今年に繋げたいと考えております。また、附属高等学校職員室の改修もこの年末年始で完了しており、快適な環境のもと、良い教育を展開してほしいと考えております。
 両附属高等学校の最重要課題は、引き続き、難関国公私立大学への進学実績を上げていくことであり、両附属高校長を中心に、生徒の自主的学習を促すための教育環境の改善や教育方法の工夫等の施策を進めて頂いております。かかる施策を通じて、学力の他に人間力を養い、一人1台PCの利用などICT活用により21世紀型スキルの習得や理数教育の強化などが課題になります。またグローバル化時代への対応として、英語力の強化にも力を入れていく必要があり、具体的には、英語の外部試験や生徒の海外研修必須化策等を導入して生徒の英語習得を促進させ、国際的な素養を身に付けさせるなどの施策も併せて進めて行く所存です。これらの施策は生徒とともに教師にも同様の課題が課せられることになります。
更に、中学校では平成27年度から「グローバルコース」を新設し、中学段階から国際社会で活躍できる人材育成を行っていく予定です。
 このようにアクションプランは、着実に実行されております。これは個々の教職員が、日頃目標に向けて努力を続けている結果であり、言い換えれば教職員が改革の原動力であります。こうした教職員への待遇改善、福利厚生にも、アクションプランの進捗状況をみながら、十二分に配慮して行くつもりです。
 そして二松學舍は、全体として着実に変わりつつあります。然しながら、周りも変化をしています。少子化は確実に進展し、東京都心所在の私立大学は、都心回帰を強め、今後は都心部の学生獲得競争が激化して行く様相です。立地がいくら良くとも、安心できない状況が生まれてきております。更に第三次安倍政権は、政策の目玉として地方創生、東京一極集中是正策を講じていく方向にあり、文教政策にも、何がしかの影響、すなわち地方大学進学生に対する優遇措置や補助金等の都市部所在大学と地方所在大学との格差付けなどの施策の展開が考えられます。このように情勢は刻々と変化しており、これらの情勢を見ながら、本学のあるべき姿を見据え、必要な見直しを加えながら本学のアクションプランを展開して行く必要があります。
 中国の古典、詩経に「周は旧邦なりといえども、その命、維れ新たなり」という言葉があります。この意味には、周という国は、伝統と歴史があるしっかりとした国であるが、日々国民が国をよくするため切磋琢磨しているので、益々強い国となるという意味も含んでおり、二松學舍もこれに倣い、「日々これ新たなり」という精神で今年も、既述の課題を一つ一つ実現をしていく必要があり、教職員挙げて持続的な改革努力(sustainable efforts)を行って頂きたく、未年、新年のご挨拶といたします。