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水戸英則理事長開会の挨拶 SRF・文学部共同国際シンポジウム「文学部の現在 ―東アジアの高等教育 文学・外国語学・古典学/儒学」

7月8日(土)、九段1号館で、二松學舍大学私立大学戦略的研究基盤形成支援事業(SRF)・文学部共同国際シンポジウム「文学部の現在 ―東アジアの高等教育 文学・外国語学・古典学/儒学」が開催されました。
シンポジウムでの、水戸理事長の開会のご挨拶を掲載いたします。


本日の国際シンポジウム開催にあたり、一言ご挨拶を申し上げます。

今回のシンポジウム開催の目的、それは、文学部等に象徴される人文学系の研究・教育が、きわめて変化の激しい内外の社会において、その存在がいかに重要か、その意義を考える機会を設定しようという試みが背景となっていると思います。

そもそも人文学系学問は、人間の思考、行動の結果、構成される社会の価値観とその在り方を、時系列的にその変化を考察し、異文化の人間の本質とその特性について、認識を深めることを目的とする学問であると考えられます。また同時に、人文学はこれまで我々に国語(日本語)の重要性を認識させ、精神面から我々の生活を豊かにする様々な知識を供給し,我が国文化の向上に貢献してきたといえます。
小資源国家の我が国が今後とも発展を続けるには,我々日本人の知識・識見等知力を引き上げ、優れた人材を育成していく必要があり、その基礎は国語にあるといえます.したがって、人文学を軽視することは、国語の軽視につながり,我が国国民の知識レベルの低下を招く結果になります。

とくに 最近の急速なグローバル化や知識基盤社会化の進展の元で、多様な文化が衝突した時は、異文化や異なる価値観を相互に理解する力が不可欠であります。この点人文学は、正に批判的・論理的な思考力(Critical Thinking)を涵養し、それにより鍛えられた思考力は、物事の全体を把握して大局的にものを考える力を身に付けさせ、異文化や異なる価値観を理解させる力を養成させるものです。加えて、最近はAI、IOT、ビッグデータ等第4次産業革命等科学技術の長足の進歩に伴い、ともすれば、技術レベルが先行し、研究倫理面や法的な側面が後回しになるなど今後様々な問題が沸き上がってくると想定され、それを解決に導くのは人文学系の学問にあり、自然科学系の知見を超えて、その役割はますます重要になってくるものと推察されます。またこれを一歩進めますと、今後はICT分野のみならず、病理学、細胞学、免疫学等の分野でも、同様のことが言えるわけであり、ここに人文学系の知見と自然科学系の知見との先端融合分野が、別の切り口として、見いだされてくると考えられます。

また、漢学は、これまでの過程で学術面では中国学・東洋学として構成され、教学面では、国語と並んで言語と道徳に関する学問として再編され、この学術体制は東アジアにも影響を及ぼしてきた歴史があるといえます。従って、人文学発展のため、漢学が再編された過程を共時的・通時的観点から考察し、漢学を通じて日本及び東アジアの近代化に与えた影響や問題点を探っていくためにも、東アジア各国の研究者とともに意見交換等十分な連携を取りつつ進めていく必要があります。

そういう意味で本日のこのシンポジウムは、重要な研究会であり、意見交換の結果、人文学の新たな知見の切り口が見出されるなど実りある成果を上げてくことを祈念して、挨拶といたします。