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理事長トピックス

「學」理事長対談-二松學舍の過去・現在・未来-
『論語と算盤』 に読む現代へのメッセージ

「學」31号誌面でおこなわれた理事長対談。
今回は二松學舍第三代舎長、渋澤栄一翁の玄孫にあたる渋澤健氏とともに、 二松學舍のめざす姿を探ります。


経済と道徳は車の両輪。 両方が揃ってこそ進み続けられる -渋澤 健氏

-理事長
 本学の創設者、三島中洲は「義理と利害とは相まって離れないもの」という「義利合一論」を提唱していました。渋沢栄一先生も『論語と算盤』で「道徳と経済は両立させなければならない」と語っておられ、二人は互いに賛同して親交を深くしたとされています。渋澤さんは『論語と算盤』をどのように見ておられますか。

-渋澤氏
 「論語」とは道徳、「算盤」は経済を意味しています。明治末期から大正の頃、渋沢は国を強くするには民間力を高め、それには目先の利益より信用を高める必要があると考えました。その基盤としたの『論語』、つまり道徳です。道徳というと固いですが、平たく言えば「人として当たり前のことを当たり前にしよう」ということ。利益追求だけでは富は永続しません。道徳と経済は車の両輪で、どちらかが大きくても進まないのです。私は『論語と算盤』を二十一世紀の視点で解釈し、サスティナビリティ (持続性)のための思想だと考えています。

二松學舍の将来的なビジョンにも 東洋の思想が不可欠です- 水戸理事長

-理事長
 今、二松學舍では十年後、二十年後に向けた長期ビジョンを描こうとしています。経済的にも東アジアの時代といわれる今、本学は漢学塾に始まり、東洋の精神による人格の陶冶を建学の理念としているわけですから、その教えに基づいて、自ら考え行動する倫理性を備えた人間、そして東アジアで活躍できる人材を育成すべきだという意見が多く寄せられています。渋澤さんは、これからの二松學舍には何が期待されていると思われますか。

-渋澤氏
 二松學舍には日本や中国の古典のイメージがあり、そうした特色ある教育が期待されていると思います。古典というと古くさく思われがちですが、それは長い歴史を経て私たちにバトンタッチされた多くの人びとの知恵です。歴史はうねりですから、過去の波を温故知新として将来に役立てることが大切。建学の理念に基づいて将来を見据えた長期ビジョン、そしてこれからの教育に期待します。私も『論語と算盤』を機に『論語』を学び、孫子や老子も勉強しました。渋沢も言っていますが、古典は自分のストーリーとして置き換えることで活きてくるものだと思います。

-理事長
 『論語』には、人生で遭遇するあらゆる局面への言葉が載っていますね。すべて読み解いて実生活に活かすことができれば、本当に強みになると思います。

-渋澤氏
 そうですね、広大で多様な東アジアにも人間として共通する土台があって、そうしたメッセージ『論語』などの古典にも登場します。『論語』は秩序ではなく土台です。東アジアが台頭する時代には、多様性のなかにもそれぞれが人として当たり前の土台を持つことが大切になると思います。



渋澤 健氏
シブサワ・アンド・カンパニー株式会社 代表取締役。
1961年生まれ。テキサス大学化学工学部卒業後、U C L A大学にてM B Aを取得。米系投資銀行、米大手ヘッジファンド等を経てシブサワ・アンド・カンパニー株式会社、コモンズ投信株式会社を創業し、『論語と算盤』経営塾や30年長期投資など画期的な事業を展開している。著書に『渋沢栄一100 の訓言』(日本経済新聞出版社)ほか多数。