理事長トピックス一覧へ

理事長トピックス

平成27年度 『論語』の学校 -RONGO ACADEMIA- 開会挨拶

平成27年11月21日(土)、九段1号館中洲記念講堂において、「『論語』の学校-RONGO ACADEMIA-」が開催され、420名を超える多くの方にご参加頂きました。水戸理事長の開会のご挨拶を掲載いたします。

 皆さんこんにちは。今年も「論語の学校 ―RONGO ACADEMIA―」にかくも多くの方々にお集まりいただき、誠にありがとうございます。開会に当たりまして、一言ご挨拶をさせていただきます。

 学校法人二松學舍は今年10月、創立138年目を迎えました。そして、本学が主催する「論語の学校―RONGO ACADEMIA―」は、平成17年度から開始した「シンポジウム『論語』」から数え、本年で通算11回目の開催となります。

 さて、今年も、医学・生理学賞で北里大の大村智特別栄誉教授、物理学賞で東京大宇宙線研究所所長の梶田隆章教授と、二人の日本人ノーベル賞受賞者が誕生しました。これまでの日本人ノーベル賞受賞者総数は24人、世界で7位(自然科学系で5位、米、英、独、仏)、アジアでは断トツの受賞者数です。この背景は何かと探ってみると、いきつくところが陽明学の存在ではないか。その実利主義的、‘fact standard’重視の学問が土台となったのではないかという話を皆さんにご紹介します。

 皆さんご存じのとおり、陽明学は、中国明代の王陽明がおこした儒教の一派であり、其の代表的な言葉として「知行合一」(ちこうごういつ)が知られています。これは「知識と行為は一体であるということ。本当の知は実践(fact)を伴わなければならないということ」(knowledge & action)を意味します。

 我が国で幕末・明治の陽明学者、あるいは陽明学に深く影響を受けた人物といえば、佐久間象山、吉田松陰、高杉晋作、西郷隆盛、河井継之助、山田方谷(二松學舍の創設者三島中洲先生が備中松山藩、今の岡山県高梁市で陽明学の教えを受けた先師)、佐藤一斎、横井小楠、大塩平八郎などが挙げられます。この人々の殆どが明治維新の立て役者であることから、陽明学は革命をサポートした学問といわれてきました。
これらの人たちは西欧から、帆船や大砲、銃なども導入して、時代の流れに基づいて現実を変えていこうと革命を起こし、その正道を実現しようとしたわけです。 こうした陽明学の教えを土台に「蘭学」「英学」などが移植され、医学や兵学を「学問」として受け入れられました。

 また「事実」が正しければ古来の書物の記載を改めることにも躊躇しないなど、陽明学の革命体質が「科学革命」にも受け入れられたといわれています。すなわち 明治以降、積極的に導入された西欧科学について、数理、物理、心理、生理、倫理とこれら学問の大半に「理」という言葉が使われていますが、この「理」は陽明学の説く「心即理」と深く関係づけられて命名されたと言われており、陽明学の考え方は、明治の若者たちを世界最先端の「科学革命」へと近づけていったと考えられるのではないでしょうか。そして、日本の近代化を支え、世界のトップランナーに仕立てた原動力となったといえる訳で、現代、綺羅星のようにノーベル賞受賞者が我が国に多いのも、蓋し陽明学の存在が大きく貢献しているという訳です。

 さて、皆さんのご意見はいかがでしょうか。

 最後に、本日の「論語の学校」は、ゲスト講師として、佐々木常夫氏(株式会社 佐々木常夫マネージメント・リサーチ代表取締役)をお招きしております。本日は、どうか最後までご静聴いただき、質疑応答にも積極的にご参加頂きたいと存じます。