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理事長トピックス

平成28年度 卒業式祝辞

平成28年度 二松學舍大学学位記授与式 祝辞

平成29年3月16日


 皆さん、ご卒業おめでとうございます。ただ今皆さんが手にされた学位記は、学士課程、修士課程、博士前期・後期各課程の学業を終えられた証であります。これまでの皆さんの努力を称え、敬意を表します。また卒業生のご家族や関係者の皆様にも、卒業式へのご列席を感謝いたしますとともに、御卒業心からお喜び申し上げます。さらに卒業生たちをこれまで熱心に指導してこられた先生方、勉学や就職、生活を支援されてきた職員の方々にも、この機会を借りまして改めて御礼申し上げます。多くの御来賓の方々、明秀学園日立高等学校校長、学校法人二松學舍顧問、役員、名誉教授の方々、松苓会会長、父母会会長、同役員の方々、その他二松學舍関係者全員が、本日の卒業式をお祝いするため集まっております。

 さて、卒業生の皆さん、皆さんは、これからいよいよ実社会へと出て行くわけです。皆さん自身自立した生活、自己責任の下での生活が始まります。

これから皆さんが出ていく社会、グローバリゼーション、デジタリゼーションが進展し、スピードの速い世界です。また近年グローバリゼーション、言い換えれば新自由主義の進展の結果、各国において所得、雇用、教育、福祉・医療等の面で格差の拡大が顕著になり、これへの反動として、経済・政治・社会面で自由主義から保護主義への流れが加速するなど、世界において大きな潮流の変化が見られております。この流れは、例えば「BREXIT」、英国のEU離脱や米国大統領選挙におけるトランプ大統領の出現さらには難民排除等を標榜する欧州諸国における右派政党の台頭などに象徴されております。このように時代は、変化のスピードが非常に速く、かつ不透明で先行きは見通せない混沌とした社会、「CHAOS」の時代に突入しつつあります。ここで話はやや横道にそれますが、こうした一連の動きを既に予測した学者が、フランスの歴史学者で人口学者のEmmanuel Toddです。彼は、これまでソ連邦の崩壊、EUの生成・崩壊の序章等を予測し、今起きている新自由主義から保護主義への流れ、米国の没落や大統領選結果等歴史が示してきたイベントを、ことごとく予測、それが的中しております。彼は中国や日本の今後の姿等も予測しておりますので、一読の価値はあると思います。

 さて本題に戻ります。このような混沌とした時代に、皆さんが船出して行く上で、是非念頭に置いて頂きたいことを、2点申し上げておきます。第一点は、皆さんがこの二松學舍大学でどういう力を付けてきたかを整理しておきましょう。皆さんは基礎知識、様々な分野の専門知識を身に就け、その知識を使うスキルであるコミュニケーション能力、語学力、分析力、論理的思考力、批判的な思考力、創造力、社会的責任能力等を身につけ、この結果、これらの知識・スキルを兼ね備え、主体的に行動できる力が備わったと思います。従って、実社会では、様々な変化を受け入れ、皆さん自身の主体性、アイデンティティーをしっかりと持って、自らの役割を自覚し、主体的・自立的に考え、多様な文化や社会を受け入れながら、公正な判断を行い、自ら行く道を造りだしていくことが肝要です。2点目は「復元力」これを大切にしてください。復元力とは船が傾いたときに元に戻る力を言います。皆さんのこれからの人生はいつも順風満帆とは限りません。不意に訪れる逆境に対して、これを乗り越える心、折れない心、強靭な心を持つ必要があります。是非、精神をポジティブに持つ訓練を日頃からして、復元力を念頭においてこれからの生活を送って頂きたいと思います。


 「アイデンティティーの確立と復元力」以上2点を念頭において、皆さん自身が判断し、仕事をし、研究を行い、人に頼らず、自らの能力を活かして収入を得て、自立した家計を営み、その上で、そうした仕事やあるいは社会的な活動の中で、日本や世界を、よりよい社会を実現する人材として活躍することを念願して、私の卒業式での祝辞、送る言葉とします。皆さん、頑張って実社会へチャレンジして行って下さい。

平成28年度 卒業式 祝辞
附属高等学校 ― 3月1日 ―
附属柏高等学校 ― 3月3日 ―

 皆さん、ご卒業おめでとうございます。本日皆さんが手にされた卒業証書は、所定の学業を終えられた証であります。これまでの皆さんの努力を称え、敬意を表します。また卒業される皆さんを支えてこられたご家族や関係者の皆様にも、卒業式へのご列席を感謝いたしますとともに、心からお喜び申し上げます。さらに卒業生たちをこれまで熱心に指導してこられた先生方、その勉学や生活を支援されてきた職員の方々に対しましても、この場を借りて御礼申し上げます。本日ご列席のご来賓の皆様方と二松學舍関係者全員が、本日の卒業式をお祝いするために、集まってきておられます。

 さて、卒業生の皆さん、これからは、大人として自覚と責任をもって行動することが求められます。これから歩む道は一言でいえば「自立への道」です。「自立している」と云うことは、皆さんが将来やりたいこと、分野を決定し、その目的達成のために必要な知識や人間関係を構築できる力を身に就け、その上で自ら判断し、行動出来る人間であることを意味します。従って、皆さんは自立するため、大学や専門学校などで、幅広い基礎・専門知識等を主体的に学び・修得し、新しい先生や友人と出会い・交流し、その経験を通じて他者と協調し、協働出来る力を身に付けていく必要があります。このようにこれから皆さんの歩む道は、大切であり、こうした期間を送っていく上で、皆さんの念頭に置き、日々の生活で実行して頂きたいこと、それは、幅広い視野、世の中を幅広く見つめていく心、寛容な心、復元力の3つの心を持って今後の生活を続けていくことです。

 先ず「幅広く世の中を見つめていく心」は、自分の回り、住んでいる場所、学校、日本や世界で、社会・政治・経済面で何が起こっているか、新聞やテレビ等で、吸収・理解し、主体的に知識を蓄積していくことが大切です。要は社会との繋がりを意識して学校生活を送ることです。次に、「寛容な心」とは、寛容は英語でTolerance、論語では仁愛です。相手の立場に立てる心の余裕を持つということ、新しい友人や意見の異なる人と接する場合、相手を否定するのではなく、その違いがどこから来ているのか、どうしたら協力できるのかを考ながら接することが大切です。今世界では不寛容、寛容でない考え方が流れ始めております。歴史的に人々が築き上げてきた「自由、平等、博愛」( Liberté, Égalité, Fraternité)の3つの基本的な権利を絶やす訳にはいきません。是非寛容な心を持つことを忘れないことが必要です。積極的に寛容であり続けることは、世の中だけでなく、自分自身や家族、周りの人との人間関係をも良くしていくことになります。三番目復元力とは、傾いた船が元に戻る力を云います。心の広い、精神的にゆとりの有る様を指し、辛抱する、苦難を乗り越える強靭な心を持つということを意味します。与えられたことを辛抱強くこつこつと努力していくことです。皆さんのこれから歩む道は常に平坦ではありません。時には壁にぶち当たり、スランプになったとしても、それを乗り越え、克服していく強い心を持つことが大切です。

 以上、いずれもが、皆さんが将来自立していくための必要な心構えです。これらの3つの心を頭に入れて、行動していくことは、皆さん各々が、これから出会う人々から、信頼され、尊敬され、多様な価値観を持つ人々とよりよい人間関係を築いていく力を醸成する、ことであり、自立への道を歩む皆さんの将来において大切な事柄です。どうか皆さん、これらを踏まえて、各人が大きく飛躍し、皆さん一人ひとりの夢が叶う将来となるように期待して、卒業式のお祝いの言葉とさせて頂きます。

平成28年度 二松學舍大学附属柏中学校 卒業式 祝辞


平成29年3月23日
(代読:常任理事 西畑 一哉)


 皆さん、ご卒業おめでとうございます。
また、保護者の方々にも心からお祝いを申し上げたいと思います。

 さて、本日をもって皆さんは義務教育を終えられました。4月からは義務ではなく自らの意思で学問に取り組んでいくことになります。

 これを機に、私からは、一つの言葉を皆さんに贈りたいと思います。
100年ほど前に中国で活躍した「魯迅」(ろじん)という作家の言葉です。
「大地の上には、もともと道などはない。最初に歩く人がいて、続いて歩く人がいたので道ができたのだ」。
直訳すると「地面の上には立派な道が既にあり、普通の靴で楽に歩いていけると皆思っている。でも、かつて道などはなかった。最初に歩き始めた人がいて、続いて歩く人がいたので今立派な道になっているのだ」といったことでしょうか。

 私は、この言葉には二つの意味があると思っています。
一つには、今皆が立派な道だと思っている事もかつてはそうではなかったということです。140年前に学祖三島中洲先生が漢学塾を開かれるまで、二松学舎という学校はありませんでした。身近なところでは、今卒業式を挙行しているこの素晴らしい体育館も10年前には存在していませんでした。それぞれの時代に、先生方、職員の方々、そして皆さんの先輩方が、一生懸命に「二松学舎という道」を作ってきた訳です。今年は二松学舎創立140周年です。この節目の年に、この「二松学舎という道」を作ってきた諸先輩の努力に今一度思いをいたしてください。そして二松学舎で学んでいるということに誇りをもってください。

 「大地の上には、もともと道などはない。最初に歩く人がいて続いて歩く人がいたので道ができたのだ」という言葉にはもう一つの意味があると思っています。それは、意欲と力さえあれば、個々の人それぞれに新しい道を造っていくチャンスがあるということです。そこにお座りのあなたも、そしてそちらのあなたも新しい道を作っていく「ロードメイカー」になることができるのです。

 あなた方の3年先輩は、今年の大学入試で、東京大学に2名現役で合格されました。また、他の国立大や早慶上理大という難関校にも、とても多くの合格者が出ています。これも鮮やかな新しい一歩だといえましょう。

 また、昨年二松学舎大学では、二松学舎の大先輩である夏目漱石のアンドロイドを創造する「漱石アンドロイドプロジェクト」を立ち上げました。夏目漱石の孫にあたる夏目房之介さんに音声面での協力をお願いし、大阪大学の石黒浩教授に製造監修をお願いしたものです。附属柏中学・高校においてもいずれ漱石アンドロイドに漱石作品の朗読解説をしてもらい、皆さんの読書への意欲を少しでも掻き立てればと思っています。このことも僅かですが、新しい一歩を踏みだしたことになるのではないでしょうか。

 もちろん、皆さんは中学を卒業したばかりで、新しい道を造るといってもいささか力が不足しているところがあるかもしれません。その意味で、もっともっと自らの意思で学んでください。学ぶべきことは本当に数多くあります。もっと体を鍛えてください。何事にも粘り強く取り組むためには、体力も重要です。そして、ともに手を携えて大地を歩いてくれる友を沢山作ってください。

 今日の卒業を機に、皆さんが新しい一歩を踏み出すことを祝って、魯迅の言葉を贈り、祝辞に代えさせていただきます。

 ご卒業本当におめでとうございます。