理事長トピックス一覧へ

理事長トピックス

夏目漱石アンドロイド記者発表 理事長説明

 本学創立140周年記念事業の一環として、本学卒業生であり、没後100年、来年生誕150年を迎える夏目漱石先生(以下、漱石)のアンドロイドの作成をこれまで進めてまいりましたが、このほど完成しましたので、本日発表させていただきます。

 本プロジェクトは、大阪大学大学院基礎工学研究科と二松学舎大学大学院文学研究科の共同研究、これは国立大学理系研究科と私立大学文系研究科とのあまり前例の無い連携事業の下、進めてまいりました。具体的には、アンドロイド研究の第一人者である石黒浩大阪大学大学院基礎工学研究科教授監修のもと、漱石のご子孫の学習院大学教授夏目房之介先生、漱石が長年勤務した朝日新聞社様、アンドロイド製作の専門会社、株式会社エーラボ様との連携・協力の下、本学大学院文学研究科の山口教授ほかの教員で構成した研究チームでアンドロイド本体の製作を行いました。

 アンドロイドの外見は、大正元年、漱石45歳時撮影の写真の姿に基づき、頭部は、朝日新聞社所蔵の「デスマスク」データを、胴体、手足は、「デスマスク」のサイズを基準とし、多数の漱石の写真と比較、そのサイズを導きだしたほか音声は、夏目房之介氏の声を収録、その音素を再合成して人工音声を創作、洋服は、当時のモノクロ写真を、早稲田大学理工学術院石川研究室に、AIによるカラー化を依頼、生地の色を決めました。この間、広島県安芸太田町にある加計家所有の漱石の声が録音されている「蝋管」の確認、愛知県明治村にある漱石のフロックコート、シルクハット等衣服など実地調査等学生も交えたフィールドワークも実施しました。

 アンドロイドの動きは、主な動作の事前プログラミング化とそれをPCで操作する遠隔操作、朗読や講演プログラムの事前登録を再生する各操作で行っております。

今回完成した「漱石アンドロイド」は、教育現場での活用はもちろん、今後、二つの研究の基盤となるものです。一つ目は、漱石に関する新たな文学研究、人物研究です。これから講義・授業用のプログラムを開発しますが、その中で、漱石の伝記的研究(Biograhical Resarch)すなわち漱石の容姿、表情、話し方、しぐさ等を示す証言や資料収集を行い、その結果をプログラムに取り入れ、アンドロイドに搭載「漱石像」を形作っていきます。また、出来上がったアンドロイドの「漱石像」と個々の漱石文学研究者が抱いている「漱石像」との相違等も研究対象として参ります。

 二つ目は、人間社会におけるアンドロイドの受容性の研究です。「漱石アンドロイド」を教育現場で運用することで、その現場でどういった存在になっていくのかということを検証していきます。まずは、大学・高校・中学での講義・授業の際、受講学生・生徒に対して、詳細なアンケートを実施し、アンドロイドに対する受容性などのデータを年齢別、男女別に取り、研究に活かしていき、人間社会における受容性を研究する予定です。

 今後AI技術は長足の進歩を遂げ、それを搭載したアンドロイドは益々進展して行く、その中で漱石アンドロイドも成長して行くわけで、今後漱石アンドロイドが切り開いていく様々な研究の切り口は、新たな文学研究、人間研究、教育・社会研究において無限の可能性を秘めていると言えます。