理事長トピックス
水戸英則理事長2026年 年頭所感
「歴史的岐路と二松学舎の使命」
はじめに
謹んで新年のご挨拶を申し上げます。皆様におかれましては、日頃より本学の教育研究活動に多大なるご支援を賜り、心より感謝申し上げます。
さて、2026年の年明けは、我が国の高等教育、とりわけ私立学校経営にとって、極めて厳しい未来を展望する中で迎えることとなりました。 中央教育審議会の「知の総和」答申等でも繰り返し指摘されている通り、「18歳人口の崖」と称される2040年問題は、もはや遠い未来の課題ではなく、予想を上回る速度で現実のものとなりつつあります。 加えまして、生成AIの急速な発展と社会・経済構造への浸透は、知識基盤社会のあり方そのものを根本から変えようとしており、大学教育に求められる役割もまた、大きな変革期を迎えております。
2040年を展望した二松学舎の使命
この未曾有の変革期は、本学が来年に創立150周年を迎える今、我々に対し「二松学舎は何者か」という根源的な問いを突きつけていると認識しております。
こうした中、我々はこの歴史的な岐路に立ち、今こそ「創立の原点」に立ち返る必要があります。 1877年(明治10年)、創立者・三島中洲が「西欧文化の摂取に汲々としている」激動の時代に対し、あえて「東洋の精神に基づく人格教育」が新時代を担うと確信した、その「カウンター的精神」とも言えるDNAこそ、現代の課題に対する解答を見出すための原点であると確信いたします。
人間中心の教育という戦略的資産
生成AI等テクノロジーが人間性を希薄化させる恐れのある時代において、本学が150年近く貫いてきた「人間中心の教育」は、過去の遺産のみならず、我々が持つ最も強力かつ独自の戦略的資産です。 この確固たる資産を核に、検討を開始した次期長期ビジョン「N’2040Plan」を見据え、未来への変革を実行してまいります。
二松学舎の取り組み
本学の取り組みの第一は、これまで築き上げてきた独自の資産をさらに伸ばすことです。 AIが情報処理や分析で人間を凌駕するからこそ、その情報の本質を見抜き、批判的に思考する基盤となる全学的な「国語力」教育、教員と学生が対話し人格を陶冶する「少人数教育」、そして東洋学・漢学を基盤とし「人としていかに生きるべきか」を問う「人文社会科学の叡智」は、AIには代替できない、倫理観や創造性を育む基盤として、その価値は一層高まっています。
第二に、未来への投資として「足りない資産」を創り上げていく所存です。 国の文理横断教育の推進方針にも合致する、本学独自の人文知と数理・データサイエンス・AIを真に融合させた「新しい文理融合学部の創設」の検討は、本学の「人文知に導かれたデータサイエンス」をポジショニングとして、現代社会が直面する「理系・文系の人材のミスマッチ」の解消に応える喫緊の課題です。
また、そのほか検討事項として挙がっているテーマとして、本学が誇る貴重な漢籍・和本といった学術資産を、最新技術で社会に公開する「デジタル・ヒューマニティーズ(DH)の推進」、さらには第三代舎長・渋沢栄一の「道徳経済合一」の思想を現代に実装する「社会人向け教育(MBA等)の展開」 を通じ、社会の新たなニーズに力強く応えていくこと等です。
両附属高等学校・中学校の教育改革
これら大学の取り組みに加え、両附属高等学校・中学校においても、『論語』に基づく人格教育を土台とした「学舎エコシステム(連携システム)」を強化し、中高大院連携プログラム「二松学舎エクスペリエンス」制度の導入なども検討事項の一つです。
学校法人の取り組み
そして法人としては、これらの教育研究活動を支えるため、改正私立学校法にも対応した攻めのガバナンス体制の構築と、安定した財務基盤の維持と一層の充実・強化に努めてまいります。
いつも選ばれる大学・高等学校・中学校としての地位確立
本学のこれからの使命は、AIと人間が協働する未来において、異なる多様な知見を融合させて新たな価値を創造する「共創知」を育み、ひいては一人ひとりの人間と社会全体の持続的な幸福である「ウェルビーイング」の実現に貢献することにあります。
最後になりましたが、創立150周年が目前に迫る本年、教職員一同、この厳しい環境を乗り越え、「いつも選ばれる大学、高等学校、中学校」としてのゆるぎない地位の確立を目途に、皆様とともに、確実に着実に歩んでまいりたいと考えております。
引き続き皆様のお力添えを切にお願い申し上げまして、新年のご挨拶といたします。
何卒よろしくお願い申し上げます。

