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二松學舍創立135周年記念式典 理事長 式辞

 本日二松學舍創立135周年記念式典開催の日を迎え、多数のご来賓、諸先輩、教職員、学生生徒の方々にご出席頂き、誠に有難く、ここに厚く御礼申し上げます。二松學舍は、明治の漢学者、法律家、大正天皇の東宮時代の侍講であった三島中洲先生が、明治10年10月10日、この大学九段1号館の建つ地に漢学塾二松學舍を創立したのが始まりであり、本日でちょうど135年が経過、この間、二松學舍はこの地を一歩も動いておりません。

 漢学塾二松學舍が創立された当時は、国情不安定の中、明治新政府が米欧等列国に追いつくため、殖産興業、富国強兵、脱亜入欧 [ 後進国のアジアを抜け出し、先進国の欧米に入っていく ] 政策などの施策を展開、教育面では、フランスや英国など先進国の文化、学術の取入れが盛んであり、いわゆる西洋学が華やかなりし時代でありました。こうした中、中洲先生は、西洋文明の進んだ部分を自分たちのものにするには、まず東洋の文化を学び、日本人の真の姿を知ることこそが大切であると主張し、漢学を若者たちに教授することで、「道徳心を身に付け、倫理観を醸成することが、一世に有用なる人材を養成するための基本である」と説きました。この考え方を「東洋の精神による人格の陶冶」と呼び、これが二松學舍の建学の精神となっております。

 その後、昭和3年には、文部省所定の中等学校国語・漢文科教員養成を目的とする専門学校の設立を経て、昭和23年には二松學舍高等学校、同24年には二松學舍大学、昭和44年には附属沼南[現柏]高等学校、平成23年には、附属柏中学校を設立して参りました。創立以来、夏目漱石、犬養毅、嘉納治五郎、平塚雷鳥など多くの有為な人材を輩出してまいりました。また、舎長には渋沢栄一、吉田茂など政界、実業界の重鎮が就任し、新制大学移行後は、旧制二松學舍専門学校以来の伝統を堅持し、中学校・高等学校教員の輩出校として、社会的な評価を得てまいったところであります。

 さて、現在我が国は少子高齢化の加速、グローバル化、情報化、知的基盤社会化、ICT化、Face bookなどSNSの広がりなど、戦後我が国を支えてきた社会制度、構造が大きく崩れ、さらに変化しつつあります。また、海外に目を向けると、米国経済は長期的な低落傾向にあるほか、欧州の経済混乱も暫く続きそうな状況です。一方で、中国をはじめとした東アジアの経済成長は著しく、世界における重要性が増してきており、こうした東アジア諸国の台頭などから世界経済のパワーバランスが確実に変化していくことが予想されます。また同時に、市場の一体化などボーダーレス化が一層進展していくことも予想され、社会の価値観も変わり、教育・研究に対する社会のニーズも多様化していくことが推察されます。

 こうした中にあって、二松學舍建学の精神、「東洋の精神による人格の陶冶」、先ず「道徳観を身に付け、倫理観を醸成する」ことが人材育成の基本であるという考え方は、教育上普遍的な考え方であるといえます。二松學舍が、135年という極めて長い間、教育機関としての使命を果たしてきた背景には、この建学の精神に基づく本学の教育と研究が、社会から評価され、必要とされ続けてきたということがあるといえます。

 かかる状況下、二松學舍は、将来の諸環境の変化を見据えて、教育面・経営面に必要な改革を講じていき、社会の評価を継続してうけられ、永続的な発展をしていく教育機関としての存在を築いていく所存であり、このことこそ二松學舍に係る者の責務であると考えております。

 このため今般、2020年における大学、両附属高等学校、同中学校の在るべき姿、長期ビジョン「N' 2020 Plan」を作成、二松學舍の全関係者が目指す指針として定めることと致しました。追ってその概要を報告させていただく予定です。このビジョンの基本的な考え方は、創立以来135年の伝統や精神を継承しながら、内外環境の激変などさまざまな事象に対応できる教育を行い、建学の精神にのっとった人材を育成していくことです。

 今後とも本学が教育機関としての責務を果たすべく、建学の精神である「東洋の精神による人格の陶冶」に基づき、温故知新の教えに沿って、教育・研究を進めていくことを誓いまして、135周年の式辞とさせていただきます。