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理事長トピックス

2024年度「『論語』の学校―RONGO ACADEMIA―」 水戸英則理事長挨拶

 皆様、こんにちは。この度は、19回目の開催となる学校法人二松学舎主催の「論語の学校―RONGO ACADEMIA―」に、225名の方々にお集まりいただき、心より御礼申し上げます。 本学は今年で創立147周年を迎えました。明治10年に創設者の三島中洲先生が、この中洲記念講堂の真上の地に、先生の私邸を漢学塾二松学舎として創設したことが、本学のルーツとなっております。今は塾跡に、本学の歴史の銘板と二本の松が植えられております。お帰りの際、ご覧いただければと思います。このように本学が、これまで長きにわたり教育・研究機関として社会に貢献してこられたのも、皆様からのご評価、ご支援の賜物と深く感謝しております。
 さて、この度石破新政権が発足いたしました。少数与党という厳しい状況下でのスタートとなりますが、経済政策は、前岸田政権の「新しい資本主義」の考え方を継承していく方針を打ち出しています。「新しい資本主義」とは、マーケット、市場原理主義から脱却し、人が主体になって社会全体の調和ある成長を重視する経済への転換を目指すものです。これまで市場競争を優先してきた結果、資本主義が取り残してきた外部不経済と言われる貧困や社会格差問題、地球温暖化や異常気象等の環境問題など、様々な課題が顕在化して来ました。
 「新しい資本主義」という新たな経済政策は、これらの課題を「人的資本」への投資によって解決しようとするものです。人に投資し、リスキリングや教育の無償化もその流れですが、さらに私見を加えれば、生成AIを交えた総合知、文理融合の知識を付けた人材育成に力を入れ、こうした人材を、課題のある箇所に適材適所に配置して、解決しつつ、人を主体とした格差のない、調和のとれたより良い社会を実現しようという考え方です。
 実は、この考え方は、渋沢栄一先生が唱えた「合本主義」に通じる考え方です。合本主義とは、適材適所の人材と資本を集め合わせ、公益を追求するという考え方です。渋沢先生は、社会福祉、教育、医療、銀行、電気、ガス、鉄道各事業など、当時のインフラ部分を整備・構築して、生活の利便性を飛躍的に向上させたわけです。新しい資本主義も、人に投資をし、人材を育成し、人々が協働し、課題を解決しつつ調和のとれたより良い社会を築くことを目指しており、これは、まさに渋沢先生の合本主義的な考え方を現代に蘇らせる試みと言えるのではないでしょうか。
 最後になりましたが、本日は、渋沢史料館の桑原功一館長をお迎えし、渋沢栄一先生について詳しくお話いただきます。渋沢先生の思想は、現代の私たちにも多くの示唆を与えてくれるものと思われます。皆様には、本日の講演を最後までご清聴いただければ幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。         以上

本学 水戸英則理事長

渋沢史料館 桑原功一館長