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理事長トピックス

平成29年度 卒業式祝辞

二松學舍大学学位記授与式 祝辞

平成30年3月15日

 皆さん、ご卒業おめでとうございます。ただ今皆さんが手にされた学位記は、学士課程、修士課程、博士前期・後期各課程の学業を終えられた証であります。これまでの皆さんの努力を称え、敬意を表します。また卒業生のご家族や関係者の皆様にも、卒業式へのご列席を感謝いたしますとともに、御卒業心からお喜び申し上げます。さらに卒業生たちをこれまで熱心に指導してこられた先生方、勉学や就職、生活を支援されてきた職員の方々にも、この機会を借りまして改めて御礼申し上げます。多くの御来賓の方々、明秀学園日立高等学校校長、学校法人二松學舍顧問、役員、名誉教授の方々、松苓会会長、父母会会長、同役員の方々、その他二松學舍関係者全員が、本日の卒業式をお祝いするため集まっております。

 さて、卒業生の皆さん、皆さんは、これからいよいよ実社会へと出て行くわけです。皆さん自身自立した生活、自己責任の下での生活が始まります。
 これから皆さんが出ていく社会、グローバリゼーション、デジタリゼーションが進展しております。先ずグローバリゼーション、新自由主義の流れは、各国において所得、雇用、教育、福祉・医療等の面で格差の拡大をもたらし、一昨年来各国では、経済・政治・社会面で格差是正を図るため自由主義から保護主義への流れが加速するなど、大きな潮流の変化が見られており、今年もこの流れが続いています。米国は、国内の産業保護のためPPTからの脱退、CO2削減を標榜したパリ協定からの脱退等アメリカンファーストを貫く政策を展開、我が国でも教育の無償化や働き方改革等の政策を展開するなどの動きに象徴されております。一方デジタリゼーションについては、AI、IOT等が経済・社会の中に浸透してきており、ルーティンワークは、AIに代替され、デジタルレーバーが構成されていくため、今後10~15年後には、現在の仕事の5割はなくなるといわれています。こうした中では、人間にとっては、創造力と社会的知性の追求が新たな義務になったといっても過言ではない時代が、来つつあるということが云えます。
 こうした時代の変化が極めて急速かつ次元を超えていく社会の中に、皆さんが船出して行く上で、是非念頭に置いて頂きたいことを、2点申し上げておきます。
 第一点は、皆さんがこの二松學舍大学でどういう力を付けてきたかを整理しておきましょう。皆さんは基礎知識、様々な分野の専門知識を身に就け、その知識を使う技能であるコミュニケーション能力、文章力、論理的思考力、批判的な思考力、創造力等を身につけ、この結果、これらの知識・技能を兼ね備え、主体的に行動できる力が備わっています。従って、実社会では、皆さん自身の主体性、アイデンティティーをしっかりと保持し、自らの役割を自覚し、様々な変化、多様な価値観を受け入れながら、公正な判断を行い、自ら行く道を造りだしていくことが肝要です。2点目は「復元力」これを大切にしてください。毎年卒業される皆さんに、送っている言葉ですが、この復元力とは船が傾いたときに元に戻る力を言います。皆さんのこれからの人生はいつも順風満帆とは限りませんし、変化の激しい世の中です。想定外や板挟み、不意に訪れる逆境に対して、これに向き合い、乗り越える心、折れない心、強靭な心を持つ必要があります。是非、精神をポジティブに持つ訓練を日頃からして、復元力を念頭においてこれからの生活を送って頂きたいと思います。

「主体性を確立し自ら行く道を作り出していくことと復元力」以上2点を念頭において、皆さんはこれから仕事をし、研究を行い、人に頼らず、自らの能力を活かして収入を得て、自立した家計を営み、その上で、そうした仕事やあるいは社会的な活動の中で、日本や世界を、よりよい社会を実現する二松学舎大学卒業の有意な人材として活躍することを念願して、私の卒業式での祝辞、送る言葉とします。皆さん、頑張って実社会へチャレンジして行って下さい。

二松學舍大学附属高等学校・附属柏高等学校 卒業式 祝辞

附属高等学校 ― 3月1日 ―
附属柏高等学校 ― 3月3日 ―

 皆さん、ご卒業おめでとうございます。本日皆さんが手にされた卒業証書は、所定の学業を終えられた証であります。これまでの皆さんの努力を称え、敬意を表します。また卒業される皆さんを支えてこられたご家族や関係者の皆様にも、卒業式へのご列席を感謝いたしますとともに、心からお喜び申し上げます。さらに卒業生たちをこれまで熱心に指導してこられた先生方、その勉学や生活を支援されてきた職員の方々に対しましても、この場を借りて御礼申し上げます。本日ご列席のご来賓の皆様方と二松學舍関係者全員が、本日の卒業式をお祝いするために、集まってきておられます。

 さて、卒業生の皆さん、これからは、大人として自覚と責任をもって行動することが求められます。これから歩む道は一言でいえば「自立への道」です。「自立している」と云うことは、皆さんが将来やりたいことを決定し、それを実現するに必要な知識や人間関係を構築できる力を身に就け、その上で自ら判断し、行動出来る人になること意味します。従って、皆さんは自立するため、大学や専門学校などで、幅広い基礎・専門知識等を身に付け、新しい先生や友人と出会い・交流し、これらの人と協調し、ともに協力していく力を身に付けていく必要があります。このようにこれから皆さんの歩む道は、大切であり、こうした期間を送っていく上で、日々の生活で実行して頂きたいこと、3つの心得は、①世の中を幅広く見つめていく心、②寛容な心、③復元力の3つを鍛えて頂きたいと思います。

 先ず「世の中を幅広く見つめていく心」は、自分の回り、住んでいる場所、学校、日本や世界で、社会・政治・経済面で何が起こっているか、新聞やテレビ等で、吸収・理解し、主体的に知識を蓄積していくことが大切です。要は社会との繋がりを意識して学校生活を送ることです。
 次に、寛容とは相手の立場を理解できる心の余裕を持てるということであり、「寛容な心を持つ」ことは、社会的知性(Social Intelligence)があるということになり、論語で言えば仁愛です。新しい友人や意見の異なる人と接する場合、相手を否定するのではなく、その違いがどこから来ているのか、どうしたら協力できるのかを考ながら接することが大切です。今AI、人口知能の流れが世界で起きていますが、AIで代替されない知性といわれるものがこの寛容な心であり、社会的知性といわれるものです。今世界ではグローバリゼーションが進展しすぎた結果、米国や欧州諸国で反自由主義や移民・難民排斥など不寛容、寛容でない考え方が流れ始めております。人々が長い歴史をかけて築き上げてきた自由主義の3つの権利「自由、平等、博愛」( Liberté, Égalité, Fraternité)は、守り続けていくべきです。積極的に寛容であり続けることは、世の中だけでなく、自分自身や家族、周りの人との人間関係をも良くしていくことになります。
 三番目の復元力とは、傾いた船が元に戻る力を云います。心の広い、精神的にゆとりの有る様を指し、辛抱する、苦難を乗り越える強靭な心を持つということを意味します。与えられたことを辛抱強くこつこつと努力していくことです。皆さんのこれから歩む道は、変化の激しい道であり、常に平坦ではありません。時には壁にぶち当たり、スランプになったとしても、それを乗り越え、克服していく強い心を持つことが大切です。

 以上、いずれもが、皆さんが将来自立していくための必要な心構えです。これらの3つの心を頭に入れて、行動してください。その結果、皆さん各々が、これから出会う人々から、信頼され、尊敬され、その結果良好な人間関係を築いていけることとなり、大切な事柄です。皆さん一人ひとりの夢が叶う将来となるように期待して、卒業式のお祝いの言葉とさせて頂きます。

二松學舍大学附属柏中学校 卒業式 祝辞

 皆さん、ご卒業おめでとうございます。
保護者の方々にも心からお祝いを申し上げたいと思います。また、生徒の皆さんを指導し温かく見守ってこられた先生方本当にご苦労さまでした。
 さて、本日をもって皆さんは義務教育を終えられました。4月からは義務ではなく自らの意思で学問に取り組んでいくことになります。
 これを機に、私からは、一つの言葉を皆さんに贈りたいと思います。この話は昨年二松學舍140周年記念式典で漱石アンドロイドに祝辞として述べてもらったものなのですが、私の方からも申し上げておきたいと思います。
 道についてということです。
 100年ほど前に中国で活躍した「魯迅」(ろじん)という作家の言葉です。
「大地の上には、もともと道などはない。最初に歩く人がいて、続いて歩く人がいたので道ができたのだ」。
「地面の上には立派な道が既にあり、普通の靴で楽に歩いていけると皆思っている。でも、かつて道などはなかった。最初に歩き始めた人がいて、続いて歩く人がいたので今立派な道になっているのだ」といったことでしょうか。
 私は、この言葉には二つの意味があると思っています。
 一つには、今皆が立派な道だと思っている事もかつてはそうではなかったということです。141年前に学祖三島中洲先生が漢学塾を開かれるまで、二松學舍という学校はありませんでした。夏目漱石、犬養毅、嘉納治五郎、平塚雷鳥といった先輩方が中洲先生に続いて歩き、道を造ってきたのです。今卒業式を挙行しているこの素晴らしい体育館も10年前には存在していませんでした。それぞれの時代に、先生方、職員の方々、そして皆さんの先輩方が、一生懸命に「二松學舍という道」を作ってきた訳です。「二松學舍という道」を作ってきた諸先輩の努力に今一度思いをいたしてください。そして二松學舍で学んできたということに誇りをもってください。
「大地の上には、もともと道などはない。最初に歩く人がいて続いて歩く人がいたので道ができたのだ」という言葉にはもう一つの意味があります。それは、意欲と力さえあれば、個々の人それぞれに新しい道を造っていくことができるということです。
 ただ、最近のAI技術など第4次産業革命の急速な進展を考えると、未来はかなり不透明です。20年後には現在存在している職業の5割が消滅するという予測もあるほどです。
 こうした不透明な未来を歩んでいくことは、大地の上に新しい道を造っていくことに等しい大変ことだとも言えるかもしれません。

 そうした、道のない大地に道を切り開くのには、どのようなことが必要なのでしょうか。その意味でポイントとなるのは2点だと思っています。
 一つは、幅広いコミュニケーション能力です。是非高い視野に立って、様々な知識を身に着け、幅広いコミュニケーション能力を身に着けて行ってください。卒業生の皆さん、周囲を見渡してください。ともに学んだ学友の顔を見てください。附属柏中学で共に学んだ同窓生は人生の財産ですよ。同窓生は幅広いコミュニケーション能力の基盤の一つです。新しい道を造っていくには、共に歩んでくれる友人が必要なのです。
 もう一つは、回復力を持つことです。英語でレジリエンスと言いますが、船が傾いた際に、復原する能力のことです。道を造っていく際に、いろいろと困難が立ちふさがることもあるでしょう。そうした際に備え、心身ともに逞しい存在であることを心掛けてください。

 私自身は不透明な未来を見渡してみて、一つだけは確かなことがあると思っています。それは教育の重要性です。「教育とは世界を変えることができる最も強力な武器である」といった人がいます。「世界の難しい問題に対する答えはただ一つの言葉に帰着する。それは教育である」といった人もいます。不透明な未来であるからこそ、不透明な世界を切り開いていける人材、つまり「大地の上を最初に歩んでいく人」を教育で育てていくことこそが、最も重要なことだと思っています。二松學舍では、これまでも、これからもこうした考えに基づき人を育てて参りたいと思います。

 今日の卒業を機に、皆さんが自ら新しい一歩を踏み出すことを祝って、魯迅の言葉を贈り、祝辞に代えさせていただきます。

 ご卒業本当におめでとうございます。

学校法人二松學舍理事長 水戸英則
(代読 常任理事 西畑一哉)