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理事長トピックス

平成30年度 卒業式祝辞

二松学舎大学学位記授与式 祝辞

平成31年3月14日
 
 皆さん、ご卒業おめでとうございます。ただ今皆さんが手にされた学位記は、学士課程、修士課程、博士前期・後期各課程の学業を終えられた証であります。これまでの皆さんの努力を称え、敬意を表します。また卒業生のご家族や関係者の皆様にも、卒業式へのご列席を感謝いたしますとともに、御卒業心からお喜び申し上げます。さらに卒業生たちをこれまで熱心に指導し、就職、生活を支援されてきた教職員の方々にも、この機会を借りまして御礼申し上げます。多くの御来賓の方々、明秀学園日立高等学校校長、学校法人二松學舍顧問、役員、名誉教授の方々、松苓会会長、父母会会長、同役員の方々、その他二松學舍関係者全員が、本日の卒業式をお祝いするため集まっております。

 さて、卒業生の皆さん、皆さんは、これからいよいよ社会へと旅立ち、自立した生活、自己責任の下での生活が始まります。
 振り返れば、平成の30年間、ベルリンの壁崩壊による東西体制の融合、アジアやロシア通貨危機、リーマンショック等経済危機、100年に一度という東日本、熊本等大震災に見舞われました。またバブル崩壊と長期の経済停滞の一方、後半の10年間はネットとスマホを起点とするデジタル革命による経済回復、その後AI,IOT等から成長したGAFAの盛行などサイバー社会の入り口に立っており、大変革の時代と言えたわけです。この間、世界は保護主義と自由主義等政治の二極化やポピュリズム(大衆迎合主義)の広がりが見られ、各種分断や格差が拡大しております。我が国においても、都市と地方の格差、教育プレミアム格差、教育を受けて技能を持つものと持たない者の格差が広がっているのが事実です。一部の勝者のみに富みが偏り、「欲望は善」という考え方が浸透した結果といえます。そこには、大衆が繁栄するはずのシステムであった資本主義の限界が到来しているといわれております。

 このような状況下、Oxford大学の経済学者Paul Collier教授が主張している考え方、それは、我々人間が本来持っている義務を果たすモラル観、道徳の大切さです。(「ノブレスオブリージュ」とも》勝者(身分の高い者)はそれに応じて果たさねばならぬ社会的責任と義務があるという、欧米社会における基本的な道徳観)。すなわちモラルある組織や仲間や家庭は、組織間、友人間、世代間でお互いに助け会う、モラル観に溢れる企業は従業員や地域社会に貢献する、企業に対する投資も、環境を重視し、社会性を重んじ、しっかりとしたガバナンスを保持している企業への投資、ESG( E:環境、S:社会、G:ガバナンス)投資、人権や環境保護に配慮した生産品の認証である「ファートレード商品」が主流になるなど、そこには、偏見や格差・分断を縮めるメカニズムが見られ、これを社会や国の施策ベースに組み込む方向性が見られています。

 こうした変化の激しい、混沌とした社会へ出ていく皆さんに参考になることを、2点申し上げておきます。 第1点は、仕事や研究に当たり、変化を受け入れ、日々新たな気持ちで仕事をしていくことです。毎日の仕事は、同じ繰り返しではいけない。昨日より1歩でも進んだ形、「日々これ新」という気持ちで、仕事をしていくことが、変革期にある我が国社会の中での生き方ではないかと思うわけです。

 2点目は、本学の建学の精神にあるように「東洋の精神による人格の陶冶」、この言葉を大切にしてください。東洋の精神とは、道徳心であり、モラルと云えます。これからの複雑な社会、格差社会の中にあって、人間相互の思いやりや相手の立場に立っての、人間関係の構築、すなわち社会的な知性、モラルを根底にした社会生活を送っていただきたいと思います。

 「変化に対応し、日々これ新たな気持ちで仕事をし、自ら行く道を作り出していくこと。モラルを根底にした社会生活」以上2点を念頭において、皆さんはこれから仕事をし、研究を行い、人に頼らず、自らの能力を活かして収入を得て、自立した家計を営み、その上で、そうした仕事やあるいは社会的な活動の中で、日本や世界を、よりよい社会を実現する二松学舎大学卒業の有意な人材として活躍することを念願して、私の卒業式での祝辞、送る言葉とします。皆さん、頑張って実社会へチャレンジしていって下さい。

二松学舎大学附属高等学校・附属柏高等学校 卒業式 祝辞

附属高等学校 ― 3月1日 ―
附属柏高等学校 ― 3月2日 ―


 皆さん、ご卒業おめでとうございます。本日皆さんが手にされた卒業証書は、所定の学業を終えられた証であります。これまでの皆さんの努力を称え、敬意を表します。また卒業される皆さんを支えてこられたご家族や関係者の皆様にも、卒業式へのご列席を感謝いたしますとともに、心からお喜び申し上げます。さらに卒業生たちをこれまで熱心に指導してこられた先生方、その勉学や生活を支援されてきた職員の方々に対しましても、この場を借りて御礼申し上げます。本日ご列席のご来賓の皆様方と二松學舍関係者全員が、本日の卒業式をお祝いするために、集まってきておられます。

 さて、卒業生の皆さん、これからは、大人として自覚と責任をもって行動することが求められます。これから皆さんが歩む道は一言でいえば「自立への道」です。「自立」とは、皆さんが将来やりたいことを自分で決め、目標実現に必要な知識や人間関係を創る力を身に就けた人になることです。

 これから皆さんは、大学などで、様々な知識を身に付け、先生や友人などと出会い・交流し、お互いに協働・協調する力を身に付けていく必要があります。皆さんのこれから歩む道は、大切であり、こうした期間を送っていく上で、先ず①環境変化に耐えられる人間力の涵養と社会のつながりを意識した生活を送っていくこと、次に②モラルに基づいた寛容な心、③復元力の3つを身に付けるよう、お願いします。

 現在の社会はAI.IOT.ビッグデータ等デジタルテクノロジーにより急激な変化が進んでいます。皆さんはそういう中でこれから生活をして行かなければなりません。色々な変化に対応して、これを受け入れ、主体的に自ら学び、チャレンジし、課題を発見し、解決していく能力が必要になってきます。このためには、日頃から日本や世界でどういうことが起きているか、環境問題・政治・経済問題等のニュースを知識として蓄えつつ、社会とのつながりを意識して生活をしていくことが必要です。 

 次に、寛容とは相手の立場を理解できる心の余裕を持てるということであり、社会的知性を身に付けているということになります。
 
 今、世界は、民族間の分断や富裕層と貧困層の格差が拡大しております。我が国においても、都市と地方の格差、教育を受けて技能を持つものと持たない者の格差が広がっているのが事実です。この格差を解消する手立てが見つからない現状です。
 
 このような状況下、最近見直されている考え方、それは、我々人間が本来持っている義務を果たすモラル観、道徳の大切さです。すなわちモラルある組織や家庭や仲間は、組織間、世帯間や友人間でお互いに助け会う、モラル観に溢れる企業は従業員や地域社会に貢献する、そこには、こうした格差を是正しようとするメカニズムがあり、これを社会や国の施策ベースに組み込む方向性が見られています。
 
 従って、皆さん一人ひとりがモラルをもって積極的に寛容であることは、自分自身や家族、周りの人、ひいては社会の格差や分断をより縮める結果となる訳です。

 三番目の復元力とは、傾いた船が元に戻る力を云います。心の広い、精神的にゆとりの有る様を指し、辛抱する、苦難を乗り越える強靭な心を持つということを意味します。与えられたことを辛抱強くこつこつと努力していくことです。皆さんのこれから歩む道は、変化の激しい道であり、常に平坦ではありません。時には壁にぶち当たり、スランプになったとしても、それを乗り越え、克服していく強い心を持つことが大切です。

 以上、いずれもが、皆さんがこれから自立していくための必要な心構えです。これらの3つの心を頭に入れて、生活をしてく、その結果、皆さん各々が、これから出会う人々から、信頼され、尊敬され、良好な人間関係を築いていけることとなり、大切な事柄です。皆さん一人ひとりの夢が叶う将来となるように期待して、卒業式のお祝いの言葉とさせて頂きます。


二松学舎大学附属柏中学校 卒業式 祝辞

― 3月20日 ―

 卒業生の皆さん、本日は誠におめでとうございます。
 保護者の皆様、ご家族の皆様、ご子息・ご息女のご卒業、心からお喜び申し上げます。また、卒業生を支えて頂いた関係者の皆様、校長先生をはじめとした教職員の皆様に対し、この場をお借りしまして感謝申し上げます。

 さて、卒業生の皆さんは、一四二年の歴史と伝統ある二松学舎の附属中学校の第六期生として立派に成長されました。
 大きな希望と期待を胸に、中学校の門をくぐってから三年、皆さんは、校訓である「仁愛・正義・誠実」の教えのもと、人に対する思いやりの心を持ち、道徳心やルールを守って行動し、誠実な態度で生活をし、日々勉強に、部活動に、或いは生徒会活動に励み、しっかりと結果を残してきました。また、都市の教室、沼の教室、雪の教室、古都の教室、世界の教室などを通じ、多くの体験プログラムを重ね、ひと回りも、ふた回りも大きく成長した姿を見ることができ、大変誇らしく嬉しく思っています。
 四月から、殆どの皆さんは、二松学舎大学附属高等学校の一年生として、他の中学校から入学する生徒達とともに、新しい道への第1歩を歩みだします。同じ高校一年生ですが、二松学舎の生徒としては皆さんが先輩ということになります。この三年間附属柏中学校で立派に過ごされた皆さんなら、附属柏高校に入学後も自ら学ぶ積極的な姿勢を持って、それぞれの目指す道を歩んで行ってくれることでしょう。
 これからの時代、人口減少社会の到来やAI、IOT等第四次産業革命と言われるイノベーションが起き、我々の生活が大きく変わっていく、いわゆるAI社会、サイバー社会、SOCIETY5.0時代が到来すると言われています。調査・分析等反復作業の多くはAIなどに代替され、人間の仕事ではなくなっていく時代、必要なのは「正確・迅速な処理力」よりも「問題解決力、想像力」など創造的知性や社会的知性を涵養することが大切です。二松学舎の建学の精神である「東洋の精神による人格の陶冶」、「己ヲ修メ人ヲ修メ、一世ニ有用ナル人物ヲ養成スル」に基づき自分で考え、判断し、行動する二松学舎の生徒として、自覚と責任、そして将来を見つめる広い視野を持ち、大きく羽ばたいて頂くことを期待しています。
他の高校に進学する皆さんも、附属柏中学校で学んだ校訓を糧に充実した高校生活を送って頂きたいと思います。
 最後に皆さんの今後のご健闘をお祈り申し上げ、祝辞とさせて頂きます。

学校法人二松學舍理事長 水戸 英則
(代読 常任理事 五十嵐 清)