理事長トピックス一覧へ

理事長トピックス

平成26年 新年のご挨拶

 教職員の皆様、卒業生の皆様、本学関連の皆様に、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

「松 壽 千 年 翠」
松 壽 千 年 ノ 翠



 一見何一つ変化のない松の緑も、芽生え、幼葉、成長と目立たない無数の小さな変化を繰り返しながら、風雪に耐えて「千年の翠」を保っています。
 創立百三十七年目を迎える二松学舎は、長い歴史の上にまた歳月を重ねながら、その輝きを保ち、今よりも更に輝いていくためには、教職員が常に切磋琢磨し、努力をしていく必要があり、このために用意されたN'2020プランに基づくアクションプランの実行が切に求められるところであります。

 さて、安倍政権は、「大學は国力なり」との考え方の元、昨年初に教育再生実行会議を設置、精力的な議論を重ね、いじめ問題、道徳教育の必要性、教育委員会の有り方、入試も含む大学改革、6・3・3制の見直しの必要性などの提言を矢継ぎ早に行いました。
 なかでも大学改革は、少子化に伴う労働力の減少が、わが国のGDP(国内総生産)を将来減少させ、結果として国力減衰を招く虞があり、今後わが国の労働力の大層を占める「大卒の量と質」の引き上げが必要だとし、このための教育改革を強力に進めることを決めております。大学改革については、約20年前、平成3年に教育研究の高度化、高等教育の個性化等を骨子とする「大学設置基準の大綱化」が纏められ、施行されました。当時も単位の実質化、シラバスの充実、グローバル人材の育成等が標榜されました。しかしながら20年経っても、全く変わらない「大学改革失われた20年」です。なぜ変わらないのか、この背景をきちんと解きほぐす必要があります。
 大学進学率は、今や50%になっており、進学率10%時代と比較すると、当時の中卒・高卒の人たちが大学に進学していること、偏差値教育が進み、偏差値で自分の能力に限界を設けて、それ以上努力しない層が進学していること、また大学進学生の7割は、不本意入学生であることなどから、以前よりはるかに、大学教育に手間がかかる傾向があることなどがあげられるでしょう。加えて、知識基盤社会化、グローバル化など社会が目まぐるしいスピードで変化、連れて諸価値観も変化しています。そのため、教育内容・方法を時代の変化に応じて変えていく必要があります。要するに、教える側の教員が、こうした環境の変化をよく認識し、意識を変えて、教育方法を双方向型、課題解決型、体験型の教育に切り替えていく努力が必要となってきます。
 言い換えれば、「大学教育の質的転換」は、各大学がアカデミックな大学教育から、一般社会人を養成する教育への転換を図ることにほかなりません。それと同時に、知の時代に対応できる人材、社会を生き抜く力の有る人材、をどう養成するかという問題を提起しています。したがって、研究と同時に教育が非常に重要になってきます。今の大学の学位システムを、開講科目のナンバリング化やシラバスの充実、教育方法等組織的に作られたプログラムの中で運営される形に切り替えるということです。「学生の学修時間が少ない」という提起は、学生をどうやって系統的に勉強させるかというシステム作りへ進める、このような形の学士課程をどう大学の中で取り込んでいくかという問題が課題になります。
 次に入試改革については、高校時代の数次に亘る基礎テスト、大学入試前の達成度テストを導入し、センター入試を廃止するという提言です。1点刻みの、一発入試が中学・高校の偏差値教育を助長し、この時期の生徒に必要な幅広い教養、日本人としてのアイデンティティー、語学力やコミュニケーション能力、優しさや思いやりといった感性を磨く教育が行われなくなった経緯があります。したがって、今後初等・中等教育に於いても、教育課程を、そうした学習に切り替えるなど徐々に舵を切っていく必要があります。
 これらは、本学が、昨年末から始めているアクションプランの主要課題に盛り込まれておりますので、どうか関連する教職員は勿論、卒業生様に対しても、本プランの実現のため、引き続くご努力、ご支援、ご協力をお願いして、午年、新年のご挨拶と致します。どうか宜しくお願いいたします。