學vol.72

話題の卒業生に聞きました:「経験」から湧き上がる言葉は、人の胸にまっすぐ届く

話題の卒業生に聞きました:「経験」から湧き上がる言葉は、人の胸にまっすぐ届く

2025年の全国高校野球選手権の決勝戦でNHKの解説を務めた飯塚智広さん。
二松学舎大学附属沼南高校(現二松学舎大学附属柏高校)野球部の出身で、卒業後も大学、社会人と野球を続けてきました。NTT東日本の監督として都市対抗野球大会で優勝した輝かしい実績も持ちます。高校野球への深い愛情と、「言葉」に込めた思いをお聞きしました。

いいづか・ともひろ 1975年生まれ。二松学舎大学附属沼南高校(現二松学舎大学附属柏高校)在学中に、主戦投手として県大会優勝・準優勝を経験。亜細亜大学に進学後、外野手に転向。東都大学リーグでベストナインに2回、首位打者に1回選出された。98年NTT関東(現NTT東日本)に入社。日本選手権優勝とシドニー五輪出場を果たす。2007年に引退後、09年からコーチ、14年に監督就任。17年に都市対抗優勝を達成し、21年退任。現在は社業の傍らNHK高校野球解説者としても活躍。著書に『野球IQを磨け! 勝利に近づく“観察眼” 名将だけが知っている、勝負の分かれ目』(ベースボール・マガジン社)。

今夏の高校野球決勝で惜しくも敗退した日本大学第三高等学校について、飯塚さんは、「3396チームが挑んだこの決勝戦、多くのチームが敗退しました。その思いも背負ってここまで来ましたからね。胸を張って東京まで帰ってもらいたいですね」と解説し、視聴者の反響を呼びました。試合を言葉で伝える上で意識していることを教えてください。

飯塚 高校野球は老若男女、野球を詳しく知っている人から知らない人までが見るスポーツです。飲食店のテレビやタクシーのラジオでも流されている、いわば日本の風物詩。解説者になったばかりの頃は、バックネットの裏から試合を見ることにもワクワクして、興奮のあまり「すごいですね!」としか言えなかったこともありました。でも、今は何が「すごい」のかを言語化するよう意識しています。例えば、選手のバックグラウンドや、試合に至るまでの物語にも注目して、裏側の苦労も伝えるようにしています。

先の決勝戦での解説もそうだったのでしょうか。

飯塚 はい。高校野球では「決勝で負けても、1回戦で負けても一緒だ」という言葉をよく聞きます。でも「本当にそうなのか?」と感じたことを、今夏の決勝戦の解説で語りました。実は、私もかつて言われたことがあるんです。でも、たまたま勝敗がついただけで、両チームのプレーを見れば、とても厳しい練習を重ねてきたことがわかる。だからあのようなコメントが自然と出てきました。

ご自身の経験から生み出される言葉には力があります。

飯塚 やはり、経験から湧き上がる言葉には感情が入るし、嘘くささがないと感じています。高校野球は教職員や保護者、同級生、地域の方々など大勢の協力に支えられていることも、経験的に知っています。そうした方々への感謝も伝わるような解説を心がけています。その気持ちが選手に伝われば、試合に勝って喜ぶだけではなく、周囲にリスペクトをもってゲームセットを迎えられると思います。

グラウンドに立つ選手以外の存在も大切にされているのですね。

飯塚 レギュラーでなくても、声を出して試合中の仲間を励ます、アルプススタンドからエールを送る。高校野球は、そういうシーンにも感動するものです。NHKの放送では、試合前にスタッフの打合せがあり、それには解説者も加わります。「エースが注目されているけれど、実はこの選手がいるからチームが強い」「だったら、こういうカメラワークでいきましょうか」といった話をするんですよ。一つの作品をつくり上げる充実感のようなものがありますね。

最後に、卒業生や在校生にメッセージをお願いします。

飯塚 二松学舎で学んだことで、私は「言葉って美しいな」と思えるようになりました。言葉は相手を幸せにできるし、相手が幸せになれば自分も幸せになる。言葉を大切にすることで、皆さんの世界は大きく広がります。

學vol.72

広報誌 『學』アジアと世界の架け橋へ。