學vol.72

二松学舎教員エッセイ(手賀 裕輔 教授)

二松学舎教員エッセイ(手賀 裕輔 教授)

二松学舎教員エッセイ(手賀 裕輔 教授)

専門は国際政治学、アメリカ外交史。1960年代から70年代にかけてのベトナム戦争の終結プロセスについて、外交文書に基づいて研究している。NFLのサンフランシスコ・49ersのファン。アメフトのプレー経験はまったくなし。

授業や研究とはまったく関係のない話

 秋は、私にとってアメリカン・フットボール・シーズンのはじまりだ。秋から冬にかけて私の生活は、NFLの贔屓チームの試合結果に左右される。文字どおり一喜一憂する日々だ。

 最初はまったく興味がなかった。ヘルメットとプロテクターに身を固めた筋骨隆々の大男たちがぶつかり合っているだけで、何が面白いのかさっぱり分からない。でも、アメリカ人があれほど熱狂し、年間チャンピオンを決めるスーパーボウルは毎年お祭り騒ぎである。分かればよほど面白いに違いない。そう思い、一念発起して学びはじめ、気づいたら典型的なファンになっていた。

 アメフトの面白さは、選手の飛び抜けた個性、高度な戦術、一発逆転を楽しめるところにある。

 アメフトは、徹底的な分業制だ。攻撃と守備はそれぞれを専門とする選手が担い、ポジションによって求められる身体能力は大きく異なる。とにかく速く走る力、タックルする突進力、向かってくる相手を食い止め仲間の盾となる力強さ、冷静で的確な判断力など、飛び抜けた個性(と欠点)を持ったスペシャリストたちが集まり一つのチームを形成している。

 個性の塊のような選手たちは、高度に洗練された戦術の下でプレーする。アメフトは基本的にすべてのプレーがセット・プレーから始まるため、戦術が果たす役割が大きい。コーチたちは膨大な戦術の中から、相手の状況に応じて選択を行い、選手に指示を送る。試合中のプレーや相手の戦術は瞬時に分析され、それに応じて最適な選手が投入される。状況は目まぐるしく変わり、相手の裏をかく戦術が実行される。もちろん、相手は裏の裏をかいてくる。こうした頭脳戦もアメフトの大きな魅力だ。

 高度な戦術性とは裏腹に、アメフトでは、条件が整えば残り時間1分からでも得点を奪うことができる。点数差にもよるが、最後の最後まで一発逆転が可能なのである。タイムプレッシャーがかかり、ミスが許されない状況で慌てず動じず、一か八かの賭けに出て、最後の瞬間に目標をクールに達成してみせる。これ以上にアメリカ人が盛り上がるシチュエーションは、他にないだろう。

 ぜひ、みなさんにも一度このクセの強い、しかし最高に面白いスポーツの醍醐味を味わってもらいたい。

學vol.72

広報誌 『學』アジアと世界の架け橋へ。