學vol.62

ゼミナール探訪

ゼミナール探訪

文学部 国文学科/山口直孝ゼミ【近代文学研究】

文学研究を通じて、自分とは違う他者を理解する

 大西巨人の『神聖喜劇』という作品をご存じでしょうか? 太平洋戦争中、軍隊内部の理不尽さに論理で抵抗した青年を描き、完結までに25年の歳月をかけた大作で、戦後日本文学の金字塔と言われています。山口ゼミでは、3年次にこの大作を読んでグループ発表を行い、最後にゼミ論集『解纜』として出版します。

 「この作品を選んだのは、大学時代にこれだけの長編を読みこなしたと、後で誇れるような読書体験をしてもらいたかったから」と話す山口先生。1年間課題に取り組んできたゼミ生たちは「難解かつ深遠な作品で、ほとんど苦行のようでした。でも読み終えたときの達成感は忘れられない」。「2人1組で同じ箇所の発表をしたのですが、ふたりの着眼点の違いが面白くなり、読み続けることができました」と、山口先生の目論見どおり、文学研究の面白さに目覚めた様子。発表する機会が多い山口ゼミでは、毎回、活発な質疑応答から「そんな見方もあったのか!」と新しい発見が得られ、演習がとても楽しかったそうです。

 そして4年次となった今は、卒論の執筆準備が始まっています。又吉直樹の文学を研究したい、マンガ版の『風の谷のナウシカ』の考察をしたい、横溝正史など昭和の探偵小説か現代のミステリ『屍人荘の殺人』を選ぶか悩んでいるなど、さまざま。

 山口先生は「ゼミを通して学んで欲しいのは『他者性』。作品を深く読む力をつけることで、他者と〝言葉〟でわかり合おうとするスキルが身につきます。自分とは違う意見を持ち、違う時代に生まれ、違う言葉で語る人を理解しようとする姿勢、それは社会に出てからきっと役に立つと思います」と、ゼミ生たちにメッセージを送りました。

文学部 国文学科/山口直孝ゼミ【近代文学研究】

国際政治経済学部 国際政治経済学科/中垣陽子ゼミ【人口減少、少子高齢化、未婚化・晩婚化、社会保障制度】

自分の考えを発信でき、且つ他者の考えを受け止められることで、社会とのいい関係を築けるようになってほしい

 この日の授業は日本の置かれた厳しい状況を示す数字についての説明から始まりました。2021年(速報値)の出生数は84万人で戦後最低を更新、同死亡数は145万人で戦後最高を記録。人口の自然減は61万人で鳥取県の人口を超える。すなわちこれから毎年、都道府県がひとつずつ消滅していくことになる、というものです。

 日本社会が経験したことのないフェーズを迎えているなか、中垣先生は「少子高齢化がなぜ起きているのかの理解を得た上で、それによって経済社会がどのように変わるのか、それに対して、日本は、さらにはゼミ生一人一人が、どう対処していくべきかを考える」をゼミの方針としています。

 「大きなテーマは共通でも、その中のどのような側面に特に関心を持つかは人によってさまざまでしょう。それを各自が掘り下げていくと同時に、自身の研究から得られた知見をゼミ生みんなに明快に説明できるようにすることも大切です」

 それによって知識が共有できるからだけではありません。自分の考えを(反対意見があることを想定しながら)表明することでみんなを巻き込める。そのような議論の方法を身につけることによって、自分と社会とのいい関係が築けるからです。

 「本学の学生は真摯な人が多いので、それを伸ばすと同時に、自分のよさを打ち出す力や他者を理解する力、さらには度胸も磨いてほしい」

 ゼミ生からは中垣ゼミを選んだ理由として「現代社会を知ることで卒業後の進路を決めていきたい」「世の中の仕組みを理解すれば、将来の不安が解消できると思った」といった声が上がりました。中垣ゼミからどんな人材が輩出され、日本の課題解決に取り組んでいくのか、いまから楽しみです。

 ゼミ生からは中垣ゼミを選んだ理由として「現代社会を知ることで卒業後の進路を決めていきたい」「世の中の仕組みを理解すれば、将来の不安が解消できると思った」といった声が上がりました。中垣ゼミからどんな人材が輩出され、日本の課題解決に取り組んでいくのか、いまから楽しみです。

国際政治経済学部 国際政治経済学科/中垣陽子ゼミ【人口減少、少子高齢化、未婚化・晩婚化、社会保障制度】

學vol.62

広報誌 『學』アジアと世界の架け橋へ。