學vol.62

二松学舎のSDGs vol.1

二松学舎のSDGs vol.1

附属柏中学校の体験教室
「田んぼの教室」―肌で感じるSDGs

 2015年に国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」。2030年までの国際目標として、17の世界共通のゴールが設定されました。二松学舎でも、法人・大学・附属校が一丸となりSDGsへの取り組みを表明しています。
 この連載では、二松学舎がどのようにSDGsに関わり、取り組んでいるかを、毎回いろいろな角度から紹介します。第1回目は、附属柏中学校で実践している体験教室「田んぼの教室」です。自然の中で体を動かし、農業に向き合うことで、さまざまな学びを得る活動として継続して行われています。

カッパを着て3年ぶりの「田んぼの教室」が始まった。

「身をもって体験する」ことで生まれる「食」への関心

 雨の中、学校近くの田んぼで田植えに挑戦する生徒たち。隣にいる友達と、植える間隔を確かめ合いながら、真剣に作業を進めます。時には、田んぼの中に入れた足の感触に笑ったり顔をしかめたり、何かを見つけて驚いたり、普段の教室では見られないはじけた表情も浮かべています。昨年、一昨年は新型コロナウイルス感染拡大防止のため中止となり、「今年はなんとしても実行したい!」と、実施まで天気予報とにらめっこの日々。当日はあいにくの雨となりましたが、それでも決行したのは、こうした体験教室が二松学舎の学びにとって、とても重要な位置づけにあるからです。

 この「田んぼの教室」では、近隣に住む農家の方の指導を受けながら、中学校1・2年生の生徒全員が稲作体験を行います。5月の田植えに始まり、9月の稲刈り、11月には収穫した米を炊いて食べる収穫祭を開催。自然の中で食物を育てるということを「身をもって体験する」ことで、生産者の苦労や喜びを理解できるようになると同時に、「食」についての関心も自然に高まります。

 食糧の生産から消費までの流れを、実体験を通して学ぶことのできる「田んぼの教室」は、SDGsの達成目標にある「つくる責任 つかう(食べる)責任」「陸や海の豊かさを守ろう」「飢餓をゼロに」など、食の視点で問題を考える心構えが自然に身につくプログラムです。

米作りの楽しさを通じて命の大切さを知ってほしい

 田んぼの教室」を支えているのは、附属柏高校の卒業生。学校近くの田んぼを提供する吉野敏幸さんと、稲作の指導を行う齊藤定市さんです。お二人とも教室が始まった当初から、生徒たちに米作りと食の大切さを伝えようと、自身の農作業が忙しい中、ご協力いただいています。

 「体験を通じて、米をもっと好きになってもらいたい」、「命の大切さを知って、食べ残しをしないように」というお二人。秋の稲刈りに向けて、稲の成長を見守ります。

吉野敏幸さん(左)と齊藤定市さん

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●体験教室とは?

 附属柏中学校が開校した2011年から行われている、中学校3年間を通じた学習プログラムの一つです。教室を出て、校外でのさまざまな体験から学び、「自問自答」を探究する――。自発的に学ぶ姿勢や広い視野が育まれ、将来大きな力になると考えます。
 多彩なプログラムが用意された体験教室。例えば、学校近くにある「手賀沼」の環境や歴史を学ぶ「沼の教室」、博物館や資料館を訪ねて、歴史や文化など幅広い学びを経験する「都市の教室」など。校外でのさまざまな体験を通じて、生徒たちの興味の幅を広げ、主体性を高める取り組みを続けています。

●教室を終えて

文学・史学・哲学を網羅した漢学の伝統は本学科にも生きています。(王 宝平教授/専門分野:中国史学・日中交流史)

學vol.62

広報誌 『學』アジアと世界の架け橋へ。