學vol.61

二松学舎教員エッセイ 福田真美子 教授

二松学舎教員エッセイ 福田真美子 教授

二松学舎教員エッセイ 福田真美子 教授

地歴公民科主任。軽音部顧問。大学・大学院で十五年戦争前後の国民意識や社会思想を研究。『千葉県の歴史』共同執筆。これまで集めたCD・レコードは2000枚。欧米や日本の60・70年代のROCKやPOPSも守備範囲。

「大好き」は世界を救う‼

 私は音楽が大好きです。幼い頃からピアノを習っていましたが、主体的に音楽と向き合うようになったのは、バンド活動を始めて、音楽を深く知りたくなった中学2年生のときです。

 そんな折出会ったのがR&Bの帝王James Brown。「The Ed Sullivan Show」というアメリカの娯楽番組の再放送で、1966年の回に登場した彼を見て、体に稲妻が走ったような衝撃を感じました。鼓動のリズムが演奏のビートにぴったり合っていくような心地よさ、キレのあるダンス、パーカッションのような歌唱、全てに魅了されました。それ以来、60年代のBlack Musicに夢中です。放送翌週、音楽関連書籍を買いに半蔵門にある学校から神保町の三省堂書店まで歩き、翌々週に同じく神保町のdisk union、翌月には渋谷・下北沢のレコード屋へ足をのばしました。

 音楽との出会いは将来も方向づけました。古本屋、disk union、楽器屋、レトロな喫茶店、立て看あふれる大学。これら愛おしい文化が溢れる東京一素敵な街・神保町で一生過ごしたいと思い、この街にある大学への進学を決心しました。

 加えて、近現代史研究のきっかけもつくってくれました。60年代は、人種差別やベトナム戦争、ジェンダーなどのひずみが表面化し、若者やミュージシャンが立ち上がり、既存の価値観を大きく揺さぶる運動やカウンターカルチャーが高揚した時代。高校生になった私は、そんな時代の闇も知らず、浮かれて音楽を聴いてきたことが恥ずかしくなり、しっかり社会に向き合おうと、プロテストソングも聴き、戦争や歴史に関する書物にも触れるようにしました。私には平等や平和を声高に歌う歌唱力もなければ、それを表現するクリエイティビティもありませんが、教育という場で一人でも多くの若者に戦争や差別の背景、歴史を生きた市井の人々の思いを伝えられたらと考え、近現代史研究を志しました。

 音楽との出会いがあったから、長年歴史を研究し、教師となった今の自分がいます。好きなものを追求すると、思いがけず自分を変えてくれたり、成長させてくれたりするもの。「大好き」を心の底から大事に思う気持ちは誠実さと、誰かの「大好き」を尊重する寛容性を育むと信じています。だから、若い皆さんも、自分の「大好き」をとことん追求してください!

二松学舎教員エッセイ 福田真美子 教授

大学のサークルではオルガンを担当。写真は愛器のオルガンと集めたレコードの一部。

學vol.61

広報誌 『學』アジアと世界の架け橋へ。