學vol.60

ゼミナール探訪 Vol.21

ゼミナール探訪 Vol.21

文学部 国文学科 大藏 教義ゼミ【古典芸能(狂言)】

狂言の実技を通して美しい所作や
和合の精神を身につける

 4歳で初舞台を踏んだ能楽師の大藏教義先生から、狂言の実技を学べるゼミです。3年次に舞台の構造や面の種類、狂言の世界観などを学び、大藏家に伝わる台本を読んで、動きの少ない演目に挑戦。4年次には好きな演目を選んで練習を重ね、2月の舞台で発表します。卒業時には、4回分のレポートを合わせて編集した1万6000字の卒業レポートを提出します。

 この日は4年生が『酢薑』(すはじかみ)や『土筆』(つくづくし)といった演目の動きや所作、発声などの実技指導を受け、一部のゼミ生はオンラインで参加しました。指導を受けたゼミ生の台本にはびっしりと注意事項が書き込まれていました。

 「狂言は一挙手一投足が決まっています。それを素直に実行し、一度枠にはまったところから初めて個性がにじみ出てくるんです」と大藏先生。「日本人が大事にしてきた所作や正しい姿勢を身につければ、人からの信頼を得やすくなる。狂言に通底する、争い合っても最後には笑って許し合う和合の精神から、人とのコミュニケーションの在り方も学んでほしい」と、ここでの学びが卒業後も社会で活かされることを期待しています。

 附属高校出身のゼミ生は、「高校時代に高大連携の一環で大学の歌舞伎の授業を受ける機会があり、狂言にも興味をもった。レポートを書くうちに、昔から歌舞伎や絵画など、異分野の人たちも狂言を学んできたことがわかった」と目を輝かせ、「先生は初歩的な質問にも喜んで答えてくれるので、実技にのびのびと挑戦できる。日本の文化の中に生き続けてきた古典芸能のエネルギーに触れることで、人前で堂々と話すことに抵抗がなくなった」と語るゼミ生もいました。

 さらに、「現代に置き換えて説明してくれるので、狂言に親しみが湧く。ゼミを通して、人の営みに深く関わりたいと思うようになり、冠婚葬祭の生花店への就職を決めました」と、このゼミが自身の進路選択にまで影響を与えたというゼミ生も。大藏先生の思いは十分に伝わっているようです。

文学部 国文学科 大藏 教義ゼミ【古典芸能(狂言)】

文学部 都市文化デザイン学科 松本健太郎ゼミ【デジタルメディア・観光コミュニケーション】

当たり前を疑い、違和感をもつ
クリティカル・シンキングの力

 高校までの学びにはなく、大学で求められるものは、従来「当たり前」だと思っていたことを疑ってみる批判的能力(クリティカル・シンキング)であるという松本先生のゼミは、さながらその実践の場となっています。4年生が、現在執筆中の卒業論文の概要を3~4年生に対して発表する授業では、ある広告の歴史を振り返りながら、大手メーカーの炎上事例をジェンダー視点から批判的に論考する、また、観光のコンテンツ・ツーリズムにおける聖地巡礼のもつ意味が時代によってどのように変遷したかを検証するといった視点が提供され、質疑応答や意見交換がなされました。

 「デジタル技術が進歩していくなかで、20世紀に語られた写真とは何か、映画とは何かという問いへの答えが変容してきた」ことから「いまここで起きている変化を考える」デジタル・メディア研究に注力されている松本先生。現代の様々な事象が関わってくるフィールドは、自ずと分野横断的になり、学生の研究対象は実に多彩です。

 「ぼくより2世代くらい若い学生ですから、物事への感度やアプローチの方法は違います。そんな彼ら、彼女らはぼくの研究対象にもなっているんです」という松本先生に対する学生の印象は「楽しんで講義をされている」。それが学生にも伝わるのでしょう。ゼミには活気があり、先生と学生のコラボのようでもあります。

 研究とは先人たちが積み上げてきたものの上に石を置くような作業だとすれば、ゼミは先輩から後輩へ学びのバトンが引き継がれていく場でもある。現実がなぜこうなっているのかを考えることのできる人間は、人生で困難に直面しても闘える――先生から学生へのメッセージです。

文学部 都市文化デザイン学科 松本健太郎ゼミ【デジタルメディア・観光コミュニケーション】

學vol.60

広報誌 『學』アジアと世界の架け橋へ。