學vol.59

【創立145周年と二松学舎教育研究振興資金】建学の精神に基づいた教育理念の継承と変革に対応できる人材の育成を使命に─────学校法人二松学舎 理事長  水戸英則

【創立145周年と二松学舎教育研究振興資金】建学の精神に基づいた教育理念の継承と変革に対応できる人材の育成を使命に─────学校法人二松学舎 理事長  水戸英則

 二松学舎は、1877(明治10)年、漢学者の三島中洲先生により、東京・九段の地に漢学塾二松学舎として創設されたことに端を発し、爾来144年の歳月を経て、来年2022(令和4)年10月に創立145周年を迎えます。「東洋の精神による人格の陶冶」「己ヲ修メ人ヲ治メ一世ニ有用ナル人物ヲ養成ス」を建学の精神として、道徳心を基に倫理観を醸成することを基本理念に置き、人材育成を行う教育機関としての使命を果たして参りました。

 漢学塾創設後は、昭和3年中等学校国語漢文科教員養成専門学校設立、戦後新私立学校法施行の元、昭和23年二松学舎高等学校(現附属高等学校)設置、同24年二松学舎大学へ移行、同44年附属沼南(現柏)高等学校、平成23年附属柏中学校を設置、2021年5月現在、在籍総数5200名(10年前の2011年は4550名)の学舎に成長して参りました。これらは、皆様方のご協力とご支援の賜物であり、ここに改めて御礼申し上げます。

 長年、募金活動については、周年記念ごとなどにお願いして参りましたが、2007(平成19)年には募金体制の更なる充実強化を図るため、恒常的な募金体制に刷新、現在の「教育研究振興資金制度」を発足させました。この間の募金総額は、2020年度末で約6億8千万円、13年間の年平均で5千1百万円の募金が集まり、各校の教育環境整備、奨学金基金、震災・水害等被災や低所得世帯学生・生徒への支援等各設置校で有効に活用され、大切な役割を果たしてきました。

 さて、本学の長期ビジョン「’N2030 Plan」も今年で4年目に入りました。建学の精神に基づいた育成する人材像を、SDGsなど時代の先行き、AI等ニューテクノロジーによる経済・社会構造の大変革や多様性を展望し、「道徳心を基に、よりよき社会を実現する目標を持って、グローバルに活動する逞しい人材」と定め、2022年度には数理データサイエンスを含む初年次教養教育を両学部共通で導入開始するなど、大学をはじめ両附属高等学校及び中学校とも連携しながら、カリキュラム改革を進めていく所存です。各設置校の整備計画も、大学は九段キャンパスへの統合後、九段地区に1・2・3・4・5号館の新築、土地・建物の購入、アキバラボの賃借、ICT環境整備等(総額120億円投資)、柏では体育館の新築、各校舎の改築、キャンパス整備(総額32億円)等一巡しており、今後は附属高校の校舎新築といった事業が控えております。また、来るデジタル教育時代に備えるための各種ICT環境整備や「奨学金ファンド10億円構想」など145周年事業として、奨学金制度を大幅に拡充する計画もあり、学生・生徒を支援するための資金はまだまだ必要です。そうした意味で、教育研究振興資金の果たす役割は、これからますます重要になります。

 今後も、創立以来の建学の精神に基づいた教育理念を継承しながら、様々な変革に対応できる人材の育成を使命として果たして行くため、150周年に向けた募金活動の継続と教育研究振興資金制度の重要性は増すばかりです。どうか、役員、教職員、卒業生、保護者、父母会や関連するステークホルダーの皆様におかれましては、引き続き本振興資金へのご協力をお願い申し上げます。

企画・財務部に聞きました。

❶二松学舎教育研究 振興資金制度発足の経緯

 本学では「教育研究振興資金」ができるまで、周年記念及び新入生の父母の方を対象に寄付依頼を行っていましたが、この方法では寄付者の所得税等の控除対象にはなりませんでした。このため、「全ての関係者及び一般の方」を対象に行う現在の方式へと制度変更を行いました。(副部長 島田穂隆)

❷これまでの募金体制の改善事項

 発足当初は振込票を利用した寄付方法のみでしたが、寄付者の利便性向上のためインターネット上の寄付金受入システムを導入し、クレジットカード決済、コンビニ支払い等、様々な方法で寄付が可能になりました。2020年10月には運営費等の合理化のため新システムを導入しました。(係長 鈴木道之介)

❸寄付文化の醸成に関する担当者の所感

 「クラウドファンディング」形式の寄付金制度が社会に浸透すると同時に、若年層にも「自分の好きな事、好きな物を支援したい」という寄付文化は広がっていると感じます。今後は、寄付金の使途を更に細分化して、寄付者の意向を汲み取れるような制度も必要だと考えています。(副部長 島田穂隆)

❹教育研究振興資金制度のこれからの展望等

 今まで、「所得税控除対象になるための制度変更」、「寄付金受入方法の多様化(振込のみ→クレジットカード・コンビニ決済の導入など)」、「寄付者のインセンティブ拡充(ノベルティグッズプレゼント、顕彰制度の創設など)」といった様々な寄付金募集体制の改善を行ってきました。今後は、例えば東京大学が行っているような、法人全体の寄付金制度の中で更に各研究組織や学生クラブ団体等が活動資金の支援を直接呼びかけることができるような方法も検討したいと考えています。(財務担当常任理事・部長 西畑 一哉)

九段キャンパス再整備のため2014年に完成した九段4号館

▲九段キャンパス再整備のため2014年に完成した九段4号館。遠隔操作できるプロジェクターやAV機器など最新設備が整った教室のほか、次世代型自主学習スペース「ラーニング・スクエア」や靖国通りの桜や緑を臨む「SAKURAテラス」などが整備されている。

二松学舎教育研究振興資金の推移(単位:千円)

學vol.59

広報誌 『學』アジアと世界の架け橋へ。