學vol.55

ゼミナール探訪 Vol.17

ゼミナール探訪 Vol.17

文学部国文学科 足立元ゼミ【日本文化】

文化研究を通して世の中に関わっていく

 「何を学ぶか」よりも「どのように学ぶか」。学生がその手法を身につけることを足立ゼミは第一の目的にしています。社会に出ると仕事や世の中について自分で調べて考えてアウトプットする機会が多くなる。それに対応できる能力をいまから高めていってほしい、というのが足立先生の願いです。

足立ゼミを選んだよかった理由を学生たちに聞くと、「自分の研究したいことを自分たちの方法でやらせてくれるので、各人のいろいろな切り口が発見できるし、その内容が楽しくて、ためになる」ことを挙げます。

 ただし、すべてが自由なわけではありません。最初の年のテーマは「危機と文化」。これに関わるものであれば、どんな内容でもいいのですが、プレゼンテーションはほぼ必須。この日は、各自の持ち時間やパワーポイントの資料枚数が厳格に決められている「ぺちゃくちゃ」という方法で発表を行いました。制限がある中でいかに効果的にメッセージを伝えるか、がとても重要です。

 プレゼンテーターは5人。昔話の残酷な部分を柔らかいものにすることの是非、イエネコは自由か否か、日本における野球受容の変遷、重臣若槻礼次郎の歩み、そして学習塾が目指すべきものと多岐に渡り、発表を聞いた他の学生が質問やコメントを投げかけます。足立ゼミでは必ず発表があるので、学生たちは「常に頭を働かせていなくてはなりません」。

 「お互いに刺激を受け、『仲間がここまでやるのであれば、自分もやってみよう』と思うようになる」と言う足立先生。なぜ「危機と文化」というテーマを設定したのかといえば、「文化は危機とともに形を変えて現れるので、学生は文化を通して現実問題にコミットメントすることになる」から。学生が自分たちのことを「互いにあまり干渉せず、自分なりの考えをもっている」と評するのは足立ゼミメンバーの特徴のようです。

文学部国文学科 足立元ゼミ【日本文化】

国際政治経済学部  国際経営学科 岩田幸訓ゼミ【ミクロ経済学】

行動経済学で社会事象を捉え直そう

 「損失回避性」「ナッジ」「現在バイアス」といった言葉を聞いたことはありますか? 「人間は必ずしも合理的に考え、行動するわけではない」という立場から経済活動を捉える経済学の分野を行動経済学と呼び、これらの言葉は行動経済学で用いられます。

 「たとえば、よほど強い意欲に支えられないと、人は目の前の宿題を先延ばしにしがちであり、それを行動経済学では『現在バイアス』と呼びます。理論を使って物事を考えてみる、行動経済学という思考の枠組みを通じて社会を理解していくというのが、このゼミでやっていることです。分析対象は何でもよく、広く社会問題、社会現象に興味のある人に来てほしいと思います」と岩田先生。

 3年の後期は『行動経済学の使い方』(岩波新書)をテキストとしながら、学生が自分の関心事と行動経済学の理論とを関連づけて研究発表を行っています。この日の発表は、いま注目される働き方改革についての考察。他の学生もそれぞれ投票行動、ソーシャルゲーム、観光、中小企業の経営、SNSマーケティングなど、思い思いのテーマを行動経済学の思考法で分析し、発表していきます。

 「これからの社会を生きていくのに、用意されている道などもはやない、自ら道なき道を切り開いていくための基礎固めをしてほしい。それがゼミの目標でもあります」(岩田先生)。

 ゼミの応募条件にも『自主的に学習できる者に限る』とハードルの高さが明示されているなかで、手を挙げて集まってきたゼミ生達は「好きなテーマで自由に研究ができるところが魅力」「発表に一人ひとりの個性が出て、自分の研究にも刺激になることが多くて面白い」「先生の専門ではないことも調べてきてくれて、学生のためにアドバイスをくれるところがありがたいと思います」等々、演習への向き合い方も真剣。発表のあとの質疑応答の時間には、密度の濃い議論が飛び交っていました。

国際政治経済学部 国際経営学科/岩田幸訓ゼミ(ミクロ経済学)

學vol.55

広報誌 『學』アジアと世界の架け橋へ。