學vol.54

ゼミナール探訪 Vol.16

ゼミナール探訪 Vol.16

文学部都市文化デザイン学科/髙間譲治ゼミ【都市文化デザイン】

表現方法は自由好奇心の翼を広げよう

 都市文化デザイン学科が設置されて3年、第1期生も3年生となり、今年からゼミナールがスタートしました。

 ゼミ担当教授のうち、髙間先生は文学部としては異色の工学系出身者。自身も研究者というよりは、都市計画やランドスケープデザインの実務家だと語り、その豊富な経験とスキルを、大学で初めて都市デザインについて学ぶ学生たちに教えています。1・2年次の講義や、イラストレーターやフォトショップなどデザインソフトの扱い方を髙間先生から学んだ学生が、ゼミに引き続き集まってきています。

 3年次の前期では「人間のスケール感を捉える訓練」の一環として、架空の敷地に公園をデザイン。200分の1の模型を製作し、学生コンクールに出品するというグループワークに取り組みました。「夏合宿の代わりとしてコンペに応募しようというのも、自分たちで決めました。好きなことを自主学習しているような、自由度の高さが髙間ゼミの魅力です」と学生たちは口を揃えて言います。

 髙間先生は「デザイン=意匠とは〝こころ・だくみ〟。すなわち、ぼんやりと心に浮かんだイメージをかたちにしていくことです。学生には興味があるコトを、どんな方法でもいいからかたちにしてみてほしい。模型でもCGでも、Webデザインでも小説を書くでもいいのです。若い世代の自由な発想からどんな作品が出てくるか、私自身も楽しみで、大いに刺激を受けています」と語ります。

 ゼミの運営方法もユニークです。いつでもどこでもつながることができる現代ならでは、先生を交えながら「LINE」でグループディスカッションをすることも多いそう。ゼミは教室で行うとは限らない。それも都市文化のひとつの実践だと髙間先生は捉え、LINEを使ったゼミ生との個別コミュニケーションを積極的に進めています。「新しい時代のメディアを取り入れる、ゼミにもいろいろなかたちがあっていいでしょう」。

文学部都市文化デザイン学科/髙間譲治ゼミ【都市文化デザイン】

文学部国文学科/荒井裕樹ゼミ【近代文学】

使えるコトバを増やせば、見ている世界の“画素数”が増える

 「近代文学」という名称ながら、扱うのは2000年以降に発表された短編・中編小説。現代の文学を研究したい人が集まっているのが荒井ゼミです。普段の読書では小説のストーリーを追って共感して読了になることが多いですが、ゼミでは全員で話し合いながらより深く読み込みます。たとえば、主人公の感情や文章の構造を解き明かし、出てくる固有名詞をピックアップして作者の執着を解明します。読書とは全く違った、新しい視点が得られることがとても楽しいとゼミ生はいいます。

 「ゼミの説明会では『荒井ゼミは厳しいよ』と聞かされましたが、やる気さえあれば大丈夫。発表資料を一から作るのは大変だけど、自分なりの自由な表現が許されることが魅力です」と、あるゼミ生は語ってくれました。

 現役の作家をゼミナールに招いて、作者本人を囲んで作品についての意見交換をすることもあります。この日は、ろう者の写真家・齋藤陽道氏と筆談で対話したときの記録を、全員でひとつのコンテンツにまとめるというワークを行っていました。

 また荒井ゼミでは毎年、各自の卒業論文に加え、全員で一冊の「ゼミ本」を制作しています。

 「ゼミ本」は文芸評論を中心としながら、テーマや原稿を書くだけでなく、挿入するイメージ写真なども小道具やモデルを揃えて自分たちで撮影。どんな装丁にするかも全員で議論し制作します。「書店に並ぶ一冊の本が生み出されるまで、多くの人が関わって成立しているということを経験してほしいから」と話す荒井先生。

 「文学を研究して、使えるコトバを増やすということは、見える世界の“画素数”が増えるということ。世の中がもっとクリアに見えるようになるということです。そして自らも言葉を生み出すことに、責任をもてる大人になってほしい」と、学生たちに伝えています。

文学部国文学科/荒井裕樹ゼミ【近代文学】

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広報誌 『學』アジアと世界の架け橋へ。