學vol.53

ゼミナール探訪 Vol.15

ゼミナール探訪 Vol.15

文学部中国文学科/髙澤浩一ゼミ【書道・書学】

書道の教育者を目指す人、当ゼミに来れ

 書道に関しては子どもの頃から親しみ、すでに段を得ている人も多いでしょう。しかし高校までの書道と、大学のゼミでの学びはまったくの別次元。高校までは「美しい書き方」を模倣し習得することに重点を置くことが多いかもしれません。しかし大学では、書くことだけでなく書の背景にある歴史や構造を学んだり、さまざまな書道の大会を経験することで、本当の意味で書の“道”に入っていくための素養を育みます。

 二松学舎大学に3つある書道のゼミのうち、髙澤ゼミは中国書道史を専門とし、中国古典の神髄に触れながらその上で自らの腕を磨く、理論と実技の両立をめざしています。

 この日の発表者が取り上げていたのは、元の時代に活躍し、故宮博物院にも所蔵されている趙孟頫(ちょうもうふ)の書。歴史や時代背景を発表したのち、全員で臨書(手本通りに書く)を行います。

 いま中国では書の再発見・発掘のブームが続いています。「中国への渡航歴が豊富な先生が、ご自身で撮影した動画を見せてくれながら、歴史にまつわる小話をしてくれるのが面白い」「それまで興味のなかった古典でも、皆で共有することで興味が増した」「本物の拓本を見ることができて感動した」など、学生たちはゼミの魅力を語ってくれました。

 「書の意味を深く知り、感動しながら書くことが大切。その気持ちが自分の書にも表れます。書によって、見る相手を感動させなければ意味がない。それが芸術というものです」と熱く語る髙澤先生。ゼミの先輩には、成田山新勝寺で筆耕の仕事に就いた人や、赤坂の日枝神社で御朱印帳を任されている人など、書道を仕事にしている人が数多くいます。

 また、毎年のように書道教員の現役合格者を輩出していることも髙澤ゼミの特徴です。髙澤先生の教えとともに、書道の教育者を目指す仲間たちに囲まれたゼミの2年間は、一生をかけて書と向き合う、心のあり方にも磨きをかけてくれるでしょう。

文学部中国文学科/髙澤浩一ゼミ【書道・書学】

国際政治経済学部 国際政治経済学科/押野 洋ゼミ【ドイツの社会と文化】

ドイツを知り、日本を考える相対化の視点をもってほしい

 「ドイツの社会と文化を学ぶことを通して、究極的には日本のことをもっと考えてほしい」という押野先生がこの日のディスカッションのテーマに取り上げたのは「ドイツの政治について」。同国の議会制度を再確認した後、ドイツで2017年9月に行われた総選挙の投票率(76・2%)と同年10月に日本で行われた衆議院選挙のそれ(53.6%)を取り上げ、さらには日本の18歳と19歳の投票率を黒板に記しました。前者は50・74%、後者は32.34%。

 「どうして日本の投票率、とりわけ若い世代のは低いんだろう?」

 押野先生はそう問いかけ、ゼミ生を3つのグループに分けて、討論を促しました。ドイツを題材として、「どうして日本の若者は政治に対する関心が薄いのか」を自分の事として考えてもらうためです。

 各グループの発表では、「ドイツの教育制度では10歳から12歳で将来のことを考えるので、社会へのかかわり方が日本よりも強い」「ドイツは家庭でも政治のことを話し合うのが当たり前」といった見方が発表されました。

 「(ゼミには)自分の頭で物事を考える人に来てほしい。常識にとらわれない自由な発想ができるように」という押野先生は自然な形で学生たちを「乗せて」いきます。ゼミ生のほぼ全員が「優しい、いい人」と口を揃えますが、押さえるところはきちんと押さえつつ、リラックスしてゼミに臨めるよう、自由に発言できる雰囲気をつくっていくのです。時にはドイツのお菓子で一息入れながら、楽しく議論をすることもあるとか。

 「ドイツのサッカー代表チームのなかで起こった差別の問題を卒論で書きたい」というゼミ生もいて、各々が押野先生の話に熱心に耳を傾けています。「二松学舎特有の教員と学生の距離の近さ、それによる両者の信頼関係」(押野先生)が率直な議論を可能にしているのです。

 ゼミ生たちは、押野ゼミで身につけた柔軟な発想と自由な発言をもって、積極的に社会に関わっていくでしょう。

国際政治経済学部 国際政治経済学科/押野 洋ゼミ【ドイツの社会と文化】

學vol.53

広報誌 『學』アジアと世界の架け橋へ。