學vol.66

二松学舎教員エッセイ(池田卓馬 教諭)

二松学舎教員エッセイ(池田卓馬 教諭)

二松学舎教員エッセイ(池田卓馬 教諭)

東京都東大和市出身。明治大学農学部農芸化学科を卒業。新卒でSEとして上場企業に入社後、教職の道へ。附属柏中高に勤務して4年目、生徒の科学的リテラシーの養成を第一に考える。最近は健康を気にしてダイエットに奮闘中。

“コネクティング ザ ドッツ”

 大学2年生の夏、一足早く就職活動を始めました。焦りや不安からか、それともビジネスというものへの憧れだったのかはよくわかりません。ただ日々押し寄せるネットニュースやSNS、就活情報サイトからの情報の波にのまれていたことは確かです。2000年代の3G回線の登場によってネットが身近になり、2010年代中頃のスマートフォンの急速な普及によって、あらゆる価値観をボタン一つで共有できるようになりました。――使いこなさないと情報化社会で負けてしまう。そんな感情を抱いていたことも覚えています。

 いくつかの会社のインターンシップを経て、あるIT企業から内定をいただきました。苦労して得た内定に喜びつつも、小学校の時から好きだった科学の大事典や高校時代に夢見ていた理科教師への思いは消えず、希望と諦めが入り混じった気持ちで歩みを進めました。卒業研究の傍ら、Javaなどのプログラミング言語やネットワークの知識を詰め込むことが精一杯で、職業の選択が正しかったのかを考える寸隙さえもなく、それが逆に心の安寧でもありました。入社後もせわしない日々が続く中、ふとした時に同じ悩みが浮かんでは消えてを繰り返します。――教員の人生ってどんな感じなのかな。時間が経てば経つほど自分の選択が正しかったのかわからなくなりました。

 12月のある日、会社に退職の意を伝えました。真夏の暑さの中でも我慢して着たリクルートスーツや夜通し書いたエントリーシート、必死に磨いたITスキルも結局は徒労であったように思えて落ち込むこともありました。でも、そんな紆余曲折があったからこそ、今私は自分にしかできない教師の道を歩めていると、胸を張って言えます。

 もう一度人生設計を考える契機となったのはAppleの共同創業者である故スティーブ・ジョブズの“connecting the dots”という話でした。「過去の何かの経験、それらは一見関係なさそうに見えて、振り返った時に点と点が繋がるように、当時は思いもよらなかったことに活かせる」。将来を見据えて点と点を繋ぎあわせることができたら、それは素晴らしいことだと思います。でも、さまざまなことを乗り越え、振り返った時にできた点と線が作る絵は、想像以上の出来栄えになるということを、私は知っています。

 

二松学舎教員エッセイ(池田卓馬 教諭)

昔の趣味が今年の文化祭で復活!

學vol.66

広報誌 『學』アジアと世界の架け橋へ。