學vol.66

ゼミナール探訪

ゼミナール探訪

国際政治経済学部 国際政治経済学科/大塚敬子ゼミ【国際法】

あなたも国際社会の一員
学ぶ面白さを探究してほしい

 ゼミでは沈黙が続くことがあります。そういうとき大塚敬子先生は学生が語り始めるのをじっと待っています。

 「基本的に私は『だんまり』です。議論を前に進めるためにコメントをすることはありますが、ゼミでは学生が『場』をつくることになっています。各自が発表、司会進行、質問といった役割を担い、その場で調べたり、考えたりすることも。だから『沈黙』の時間が生じるのですが、これも大事な時間です」

 この日の研究発表は、1994年にアフリカのルワンダでフツ族とツチ族の対立から起こったジェノサイド(集団虐殺)について。当時、市長の地位にあった人物が、ツチ族の虐殺を扇動するなど国際法上の犯罪行為をしたことにより訴追され、ルワンダ国際刑事裁判所が終身刑の判決を下したという事件です。国と国との関係を定める国際法が個人を裁いたケースといえます。

 研究する対象は、本ゼミのテキストでもある『国際法 判例百選』から学生が選びます。今回発表を担当した学生がルワンダの虐殺を取り上げたのは「なぜこのようなことが起こったのかを知りたかった」から。国際関係に興味があったため、今年度から新たに始まる本ゼミで学びたいと思ったそうです。司会役の学生は「小学生だったころにテレビで見た難民支援活動が印象に残っていて、ずっと関心を持っています。そうした問題は国内法だけでは解決できないと思った」。質問担当の学生は「これまでは日本が関わっていることにしか関心がなかったけれども、初めての海外旅行を機に広く世界に目を向けるようになった」と、それぞれ本ゼミを選んだ理由を語ってくれました。

 「国際法というと遠いところの話だと思われがちですが、判例を丁寧にひもといていくと、人権の問題など自分たちとも関係があることがわかります」という大塚先生。世界で起こる事象は他人ごとではなく、自分のしていることが他者に影響を及ぼし、他者の行動が自分に関わっていることが、国際法を学ぶことで理解できるとも。

 大塚ゼミはグローバルで多様性に富んだ、今の時代に必要な考え方を語り合える場といえます。

国際政治経済学部 国際政治経済学科/大塚敬子ゼミ【国際法】

文学部 国文学科/妹尾好信ゼミ【中古文学②】

「好き」が生む楽しい空間
課題に立ち向かう力を養う

 今年度の本ゼミでは、『伊勢物語』の注釈書である『伊勢物語残考』(1808年刊)の版本に記された変体仮名やくずし字を解読していきます。容易ではありません。「もともと手書きの文字ですから、なんとでも読めるものもあります。時には文脈から判断しなくてはならない場合も。そこで、高校で習った古文の文法が活きてきます。より正確に読もうとするときに、これまで勉強してきたものが役に立つわけですね」と妹尾好信先生。

 ゼミ生の多くは「平安時代の王朝文学を学びたいと思った」「『伊勢物語』や『源氏物語』の内容や時代に興味があった」とのこと。妹尾先生が本学に着任したのは今年度からということもあり、ゼミ生が1・2年次だったときには顔を合わせることはなかったものの、「2年生のときの授業で使われた妹尾先生の解説書を読んだとき、『すごい方がいる』と衝撃を受けました。だから迷わずこのゼミを選びました」という声も。

 実際にゼミが始まっても、難しい箇所でも丁寧にかみ砕いて説明してくれる先生のおかげで理解が進みやすく、不安は全くないようです。妹尾先生は、「私はこれまで西日本の国立大学で教育・研究に携わってきました。東京の私学に当初は慣れないことも多かったのですが、文学部の学生の『文学を学びたい』、なかでも『古典文学が好き』という思いは、どこでも変わらないことがわかりました」

 ゼミや先生のことを笑顔で話すゼミ生たちからは、好きなことを学ぶ楽しさや嬉しさが伝わってきます。ここでの学びを今後も活かしていきたいというゼミ生に、妹尾先生はこんなエールを送ってくれました。
 「変体仮名やくずし字が読めるからといって実生活に役立つことはまずありません。でも初めて触れるものを相手に、真剣に勉学に取り組んだという経験は、将来どんな仕事をするにしても活きてくるはずです」
 古典の魅力を再発見するのはもちろんのこと、読めなかったものが読めるようになるという体験を通し、人生における貴重な気づきを教えてくれるゼミでもあります。

文学部 国文学科/妹尾好信ゼミ【中古文学②】

學vol.66

広報誌 『學』アジアと世界の架け橋へ。