學vol.64

ゼミナール探訪

ゼミナール探訪

文学部 国文学科/増田裕美子ゼミ【日・欧米比較文学・文化】

豊かで充実した人生のために
今しかできないことをやろう

 「代助に褒められた銀杏返しの髪形を三千代がしようとしなかったのは、あえて本心を隠そうとしたからではないか」「赤い風船など文中に『赤』が使われるのは代助の不安に駆られた心情を表しているのだと思う」。夏目漱石の作品『それから』の十四章から最後の十七章までをテキストに、人間の心理の奥底にあるものを発表者が読解していきます。

 各自の意見や疑問を受けて、増田先生からは、明治時代に日本に入ってきた「愛」という概念が漱石文学でどのように受容されたのかについてのコメントがありました。漱石作品の背景にある西洋文化の影響やシェイクスピアの『ロミオとジュリエット』との類似性にも気づかせてくれます。

 「先生は学生の発表を否定するところから入らず、意見を受け入れてくださるので話しやすいです」という学生の言葉のとおり、自由で闊達な議論を交わすのが本ゼミの特長のひとつ。三週間に一回は出番が回ってくるそうです。一冊の本をみんなで読むことで、違う視点が得られる、それによって自分の考えも深まるとのこと。「人はこういうときにこう考えて行動するのかといった人間観察の力が身についた」「私は営業職など人と話す仕事につきたいと思っているので、ディスカッションが中心のゼミはとてもためになります」といった声も聞かれました。

 すぐれた文学作品・芸術作品を通して美しい人生に出会える体験をしてほしいという増田先生。

 学生に「一年後には卒論で大変な思いをするから今から準備を」と念を押しつつ、「社会に出たらなにかと制約があるので、自由な時間がある今だからこそできることをやってほしい。一度きりしかない人生を充実したものにするためにも」とメッセージを送りました。

文学部 国文学科/増田裕美子ゼミ【日・欧米比較文学・文化】

文学部 都市文化デザイン学科/堀野正人ゼミ【観光社会学】

さまざまな要素が絡み合う
「観光」のあり方を多角的に問う

 観光と社会・文化の関係を学ぶ「観光社会学」。3年次生19人が学ぶ人気のゼミです。

 この日は、世界有数の観光地であるハワイについての解説から始まりました。賑やかなワイキキビーチは、実は人工の浜であることや、フラダンス禁止令などの史実に触れ、ゼミ生の興味が一気に高まります。

 このゼミでは単なる観光に留まらず、文化や歴史、経済、政策、メディアなど、さまざまな要素との関連性を考察し、多角的に分析する力を養います。また、近年注目されるアニメの聖地巡礼やインスタ映えといった社会現象にも着目し、観光と絡めて考えます。

 通常の授業では、文献の輪読、学生の意見発表と議論、先生の解説といった流れで進みますが、座学だけでなく、フィールドワークにも出かけます。

 サイコロを振って、無作為に山手線駅周辺を調べるワークでは、エリアを歩いて地域の人と話し、調査を行います。「実際に足を運ぶと、発見が多かった」「一括りに東京といっても、それぞれの町ごとに違った表情があった」と、足で歩いたからこその収穫があるそうです。

 ハワイの解説に続き、この日は、2人のゼミ生から卒業論文の構想について発表がありました。

 1人目の構想は「バリアフリー・ツーリズム」について。国内の事例を紹介し、景観保全との両立や、事故などの課題を発表しました。これに対し先生は、海外事例など調査対象を広げるようアドバイス。さらに、バリアフリー観光に力を入れる飛騨高山の現状に言及しました。

 2人目は、「観光資源としての図書館」について。魅力的な図書館で、博物館などのように観光客を誘致するという構想です。先生は、「美術館や水族館と同様になりうるか」とし、活用の具体例を調査するよう指摘しました。

 こうした指摘やアドバイスを足掛かりに、さらに調査研究を進め、卒論を練り上げていきます。

文学部 都市文化デザイン学科/堀野正人ゼミ【観光社会学】

學vol.64

広報誌 『學』アジアと世界の架け橋へ。