學vol.63

ゼミナール探訪

ゼミナール探訪

文学部 中国文学科/町泉寿郎ゼミ【日本漢学】

創立時より受け継がれる「漢学」は日本の学術を知るために不可欠

 漢学塾からスタートした二松学舎。「漢学」は本学にとって根幹となる学問ですが、このゼミで学ぶ「日本漢学」とは、どのようなものでしょうか。

 日本に大きな影響を与えた中国の文学や思想を理解し、日本人自ら著した漢文を通じて「日本の学術を学ぶ」。これが日本漢学です。このゼミでは、江戸から明治期に書かれた漢文文献を題材に、漢文の読解力を養い、思想や文化などを学んでいきます。

 この日の授業は、夏合宿で読んだ中江兆民『民約訳解』の後をうけて、「福沢諭吉と中江兆民の自由観」と題した論文についての考察です。日本の近代化・民主化に貢献した二人の思想について、発表者が感想や自身の見解を説明します。これをうけて、他のゼミ生が意見を述べ、その後、町先生が講評を行いました。当時の歴史的・文化的背景や、人物像などをわかりやすく説明してくれるので、難解な文献がぐっと身近に感じられます。

 近代以前、学問の中心だった「漢学」も、現代では難しいイメージを持たれるのは否めません。しかしながら、町先生は近年、大きな変化があったと感じています。

 「広く漢学への関心が高まり、国際的な研究が進んでいます。30年前には、考えられなかったことです」。デジタル技術の進歩によって、海外から漢文文献に触れることができるようになり、アジア・欧米諸国との共同研究や交流が盛んになったそうです。

 町先生は、こうしたグローバルな傾向にある漢文を学ぶゼミ生に、「漢文を通じて、幅広い分野に目を向けてほしい」とし、「自分自身で、問題点を発見してもらいたい。つまずいて、気づきを得ることが大切」と助言しました。

 ゼミ生の多くが、中学校・高等学校教員など教育関連の道を目指している日本漢学ゼミ。「漢文の読解力をつけて、教師として生かしたい」、「とっつきにくいと思われがちな漢文。面白さを伝えたい」と、思いを話してくれました。

 創立者・三島中洲が切り拓いた教育の道を学生たちが追随し、学びをつないでいくことが期待されます。

文学部 中国文学科/町泉寿郎ゼミ【日本漢学】

国際政治経済学部 国際経営学科/菊地宏樹ゼミ【経営組織論、イノベーション論】

膨大な情報を的確に処理し論理的に考え、伝える力をつける

 モノやサービスだけでなく、働く場、給料なども提供する企業という存在は私たちの生活と深く関わっています。2年生を対象とした本ゼミでは自動車、電機、アパレル、通信、レジャーなど様々な業界から注目すべき企業を取り上げ、その経営戦略やマーケティング手法、イノベーション創出についての研究を行います。

 この日の題材は大手牛丼チェーンの経営破綻から再生への道筋でした。新しい経営方針を立ててから債務を返済するまでの流れを因果図式で示すというもので、菊地先生は、新メニューの提案、少数店舗での試験販売、手当てやコンクール表彰による従業員のモチベーション向上といった要因が単線ではなく、複線でつながることを示唆し、一人一人に助言をしていきます。多くの学生が本ゼミを選んだ理由として、菊地先生の講義の面白さ、丁寧な指導を挙げていることがわかります。

 菊地先生が学生に強調するのは、膨大な情報に負けず、それらを処理し、論理的に筋道を立てて説明することの大切さです。

 「将来、企業で働くようになれば、新規事業の提案などを行う機会もあるでしょう。ゼミではそのための能力も身につけてほしい」

 企業が目標達成のために定める行動指標であるKPI(Key Performance Indicator)について、何を基準にするかで変わる成果主義における評価の難しさといった話も交えながらの授業は、企業が時代とともに変化する生きた教材であることを教えてくれます。

 今後はゼミ生が各自選んだ企業の事例を発表し、それをもとにグループで議論をする機会を設けるとのこと。将来は企業経営を目指しているという学生もいる本ゼミでは、企業の方の話を直接聞きたいという声もあり、毎回活発な議論が交わされそうです。

国際政治経済学部 国際経営学科/菊地宏樹ゼミ【経営組織論、イノベーション論】

學vol.63

広報誌 『學』アジアと世界の架け橋へ。