理事長メッセージ

二松学舎創立147周年 年頭のご挨拶 「大変革の中での二松学舎のこれからの課題」

学校法人二松学舎 理事長 水戸英則

はじめに

 二松学舎は、本年(2024年)創立147周年を迎えます。本学は明治10年(1877年)10月に、漢学者であり法律家であった三島中洲先生により、東京・九段の地に漢学塾二松学舎として創立されたことに端を発し、「己ヲ修メ人ヲ治メ一世ニ有用ナル人物ヲ養成ス」を建学の精神として、道徳心を基に倫理観を醸成することを教育の基本理念に置き、誠実で真面目、豊かな人間力を身につけた、真の国際人を育成することを使命として、教育を行ってきており、設置校として二松学舎大学、同附属高等学校、同附属柏中高等学校を運営し、在籍総数約5,183名(2023年5月時点)の学舎へと発展してきました。

 さて、長引くコロナ禍は、私たちの生活や価値観に大きな変化をもたらし、また気候変動問題や経済のデジタル化、脱炭素社会の推進、ロシアによるウクライナ侵攻、中東における紛争など、大変革の中で年明けを迎えました。また、学校法人経営環境面では、18歳人口の予想を上回る急減、予想比10年も前倒しに減少が進んでいる現実、他方生成AI等テクノロジーの飛躍的な発展を背景に経済・社会構造における大学等に対する行政の理工農系優先の各種施策の推進が見られるところであります。

147周年と長期ビジョン「N’2030Plan」これまでの歩みと課題

 こうした中、今年創立147年目を迎える二松学舎では、長期ビジョン「N’2030Plan」も実施期間の前半を終え、残り半分の第一歩を踏み出す重要な局面に差し掛かっております。これまでの間、関係者の皆様のご尽力・ご貢献もあり、統括目標であるブランド力アップのためのさまざまな取組みは順調に進捗し、設置校である二松学舎大学、同附属高等学校、同附属柏中高等学校は着実にステップアップしてまいりました。私立大学・同高等学校等を取り巻く環境が大きく変化する中でも、本学の使命は、教育・研究の質を高める努力を不断に行いながら、教育機関そして研究機関としてのレベルを維持しさらに高めていくことにあると言えます。
 先ずはこれからの二松学舎大学の課題は、人文社会科学系大学として、その学問の存在意義を改めて社会へ問いかけ、重要性を示し続けながら、数ある私立大学においても独自の個性を放つ唯一無二の存在へと更に価値を高めることであります。

人文社会科学系学問と理工農系学問について

 申すまでもなく人文社会科学系学問は、人間の歴史や文化、社会の在り方などを探究し研究する学問です。人文学は、人間とその人間性、そして人間が生み出した文明や思想などを追究するものです。社会科学は、人間が主役として存在する社会における組織や行動を読み解きます。現代社会において、私たちが直面するあらゆる課題の解決には、理工農・医療系学問の知見は不可欠でありますが、それらを理解し、課題を抽出し、対策を練り、これを適切に活用するためには、人間を理解するための人文社会科学系学問の知見が欠かせないのです。

人文社会科学系学問の知見の重要性

 例えば、新型コロナウイルス感染症などのパンデミックには、医学や理工学の観点からの対応や対策が不可欠ですが、こうした対策等を社会に根付かせるためには、背景にある人間の行動や社会構造を理解することが重要で、心理学や社会行動学のような人文社会科学系学問の知見が必要になるでしょう。また、気候変動問題の解決には、自然科学分野における科学的知見が不可欠ですが、社会への影響や対策を評価するためには、そうした現象の起因となった人間の営み、活動などを人文社会科学系学問の知見から分析することが重要であることは言うまでもありません。このように、人文社会科学系学問は、理工農・医療系学問だけでは明らかにならない課題・問題への解決策や示唆を与える学問であり、両者は不可分の関係にあると言え、いかに人文社会科学系学問の知見が重要であるかを示唆しているわけです。

二松学舎大学の取り組み

 松学舎大学では、人文社会科学系学問の重要性を発信するために、①初年次教育における歴史や数理・データサイエンス科目を含む新カリキュラムの導入等文理融合教育の試み、②人文社会科学系の研究拠点の更なる充実・整備、③研究者による講演会やシンポジウムの開催、④人文社会科学系と理工農系の融合学部創設の議論の開始等の施策を推進していく方針です。そのほか、従来からの課題である教育の質保証、教学マネジメント面のDX化、留学ネットワークの充実強化、奨学金制度の充実等もあわせて進めてまいります。

両附属高等学校・中学校の教育改革 『論語』をもとにした人格教育

 また、両附属高等学校・中学校の教育改革については、『論語』に基づく人格教育を基本に、①文系・理系のコース別選択制の再検討(高等学校)、②アクティブラーニングを通じた教育体制の充実、③グローバル化・ICT化の推進等の施策を進めていく方針です。

学校法人の取り組み

 そして法人としては、公正な理事会運営を通じた風通しの良い法人運営、安定した財務基盤の維持や教職員の資質向上促進のための人材育成体制整備などの課題に取り組んでいく所存です。

いつも選ばれる大学・高等学校・中学校としての地位確立 創立150周年を目指して確実に着実にステップアップ

 最後になりましたが、本年も厳しい環境の中、大学、両附属高等学校・中学校を更にレベルアップし、いつも選ばれる大学、高等学校、中学校としてのゆるぎない地位の確立を目途に、創立150周年を目指して、皆様とともに、確実に着実に歩んでいきたいと考えております。引き続き皆様のお力添えを切にお願いして、新年のご挨拶といたします。何卒よろしくお願い申し上げます。

以上