『論語と算盤』の真実 日本近代史の中の渋沢栄一

『『論語と算盤』の真実 日本近代史の中の渋沢栄一』

『論語と算盤』の真実 日本近代史の中の渋沢栄一
編者 :二松学舎大学東アジア学術総合研究所
出版社:長久出版社 2022年3月31日
A5版 152頁 1,400円+税
ISBN :978-4-910392-00-4

『『論語と算盤』の真実 日本近代史の中の渋沢栄一』紹介

 東アジア学術総合研究所では、2022年10月で創立145周年を迎える二松学舎の周年記念事業として、まず文学部・国際政治経済学部と合同で、シンポジウム「『論語と算盤』の真実――日本近代史の中の渋沢栄一」を開催した。基調講演は、日本の近代史にも詳しい中国学の小島毅教授を招き、『論語』の倫理観を近代という時点の中で解析してもらった。また本学の小和田恆名誉博士には、日本の近代の問題を外交という視点から語っていただいた。
『万国公法』とは何だったのかという詳解は、異文化の衝突や西欧化の問題を含む近代の本質に繋がる大きな示唆に富んでいる。二本の講演を基軸に据えて、各報告は漢学・自己語り・金融・鉄道・孔子祭祀と多岐にわたり、本学教員がその研究視点から渋沢を分析した。本書はその成果をまとめたものである。
 今、世界は再び大きな混迷の渦中にある。疫病の蔓延、大規模な気候変動に加えて、侵略戦争まで勃発した。おそらくそれは、民主と科学を大きな価値に掲げた近代というものが、終焉を迎えつつあることの表れなのではないだろうか。異文化間の衝突や力による征服というものは、法や理念やイデオロギーによって克服できるものではないという事態が、まさに目の前に展開しているのだ。しかし、だからこそ、この現実から目をそらすことなく、冷静に受け止め客観視すると同時に、時代の変化を超えて残る人々の智慧を過去から学び未来へ繋ぐことが切実に求められるのではないかと思う。『論語と算盤』を通じて近代の意味を問い直し、東洋と西洋の智慧の結晶を精査する作業は、我々高等教育機関が注力すべき最重要事だと思っている。本書がその一端を担うことができれば幸いである。(「緒言」より抜粋)

目次

  • 緒言牧角悦子
  • 特別講演 近代日本の万国公法(The Law of Nations)との出会い小和田恆
  • 基調講演 栄一、論語を説く ―人格と修養の視点から―小島毅
  • 報告 『論語と算盤』の漢学的意味牧角悦子
  • 報告 【コラム】渋沢栄一の自己語り林英一
  • 報告 渋沢栄一と近代金融制度今井悠人
  • 報告 渋沢栄一と鉄道事業菊地宏樹
  • 報告 渋沢栄一と斯文会から近代漢学を考える町泉寿郎
  • 総合討論 『論語と算盤』の真実
  • シンポジウムを終えて 『論語と算盤』の記憶と私感江藤茂博