2019年度シンポジウム
「アンドロイドに魂は宿るか? 漱石アンドロイドをめぐる3つの視点」
佐藤大氏脚本 漱石アンドロイドによるモノローグを上演します

 アンドロイドになって、漱石は本当に「甦った」のでしょうか。私たちは「甦らせた」と言えるのでしょうか。甦らせるためには、何が必要で、どうすればよいのでしょうか。改めて問い直す機会を設けました。
文豪の魂はどこに宿るのか。漱石アンドロイドに魂は(いかに)宿るか/我々は宿すことが出来るのか。…そのヒントはどこにあるのでしょう。 そんなお話をうかがいたくて、強力な論客をお招きしました。「人形」「写真」「虚構 vs 現実」の3つの視点から、総合的に討論を試みます。

  • ◇日時:2019年11月9日(土)13:00~17:30(12:30開場)
  • ◇主催:二松学舎大学大学院文学研究科/大阪大学大学院基礎工学研究科 共催
  • ◇場所:二松学舎大学 中洲記念講堂 九段1号館地下2階 (東京都千代田区三番町6-16)
  • 二松学舎大学までのアクセスマップ

入場無料 先着順・事前申込不要

※満席の場合は、立ち見・別室モニター観覧等となる場合があります。

プログラム

【オープニング・アクトの部】13:00~13:10

【トーク・セッションの部】13:10~17:30 ※途中、休憩あり

詳細

【オープニング・アクトの部】

内容紹介:

 明治の文豪・夏目漱石の魂は、どこに宿るか。当然、その作品にも宿ることでしょう。百年の時を経て、漱石の作品が今日の私たちに訴えかけてくるものは何か。アンドロイドとして甦った漱石が、自らの作品を朗読するとき、また、かつて自ら綴ったことばの数々を踏まえていま私たちに語りかけるとき、時を越えて私たちが受け止めるものは何か。
 文脈のうえに成り立つことばの意味や情報が、文脈から自由になって、剥き出しのセリフとして組み上がったとき、私たちはそこから何を感じ取るか。異なる時代背景の中でもなお私たちに響く普遍性のあるメッセージは、作品に宿る文豪・漱石の魂を感じさせてくれるのではないでしょうか。

 今年のオープニングアクトは、漱石作品のテキストに基づいて、音楽における“サンプリング”のように得られた素材を再構築しながら、ある時は独りごち、ある時は問いかけるように語られるモノローグ作品となっています。

 アンドロイドが発するセリフの音声は、文字列に従って機械的に生成された合成音声。漱石の孫にあたる夏目房之介氏の発話から採取した「音素」(子音や母音など、「声のもと」となる要素)を組み合わせて作られた人工的な音ですが、それを微調整して人間の話し声に近づける作業を今年担当したのは、音声学を含む「日本語学」を専門とする本学の島田泰子文学部教授です。今年のディスカッションのテーマに沿って、作り物のアンドロイドに「魂を宿す」べく、できるだけ生々しい語り口に仕上げてみました。夏目房之介氏による朗読の録音を使っているのか、と間違える人も、中にはいるかもしれません。
 また、漱石アンドロイドのジェスチャも、講演とは異なりモノローグらしい、やや地味な動きに仕上げてあります。今年、アンドロイドの動作プログラムを作成・調整し、上演本番でも操演を担当する二木潤さんは、文学部2年生の学生です。大げさな身振り手振りとは対極的な、どちらかと言えばかすかな動きに、むしろ生身の人間に近いリアリティが感じられることでしょう。

 眠りから覚めた漱石が、まだ少し眠そうにゆっくりと、ぼそりと話しはじめるモノローグは、次第に熱を帯び、かつての講演での語り口を思わせる名調子で聴衆にたたみ掛けるシーンも。生前、大の落語好きであった漱石が、ところどころ女の声音(こわね)を使って怪談噺ふうに語り聞かせるシーンも見どころです。終盤には、ぞくーーーっとするような凄みさえ感じる瞬間もあるかもしれません! 合成音声とは思えない滑らかさでぬるぬる喋る漱石アンドロイドの語りを、時代を超えて胸に響く深いメッセージを、ぜひお楽しみください。

【トーク・セッションの部】
プレゼンター(発題者)紹介

菊地 浩平さん
 人形という存在を通じて「人間とはなにか」を模索探求する、気鋭の研究者。担当授業は常に立ち見が出るほどの大人気、ご著書『人形メディア学講義』がメディアの注目を大いに浴びるなどいま話題のこの方には、私たちがアンドロイドを含む最新テクノロジーとどのように関係を構築し得るのか、人形劇やぬいぐるみや着ぐるみ論を補助線としながら考える見方などについてお聞きしたいと思います。
大山 顕さん
 土木・建築・都市景観論などを専門とするドボクライターで、工場・ジャンクション・団地愛好ムーブメントの仕掛け人。マンション・ポエム分析など、ユニークな切り口から多角的な評論活動を展開して来た方ですが、今回は、写真家として、自撮りや遺影、心霊写真などとも対照させながら漱石アンドロイドの存在を考察していただきます。亡くなった人をアンドロイドにすることは、これまでのさまざまな営為とどう関わるのでしょうか。
佐藤 大さん
 「カウボーイビバップ」「攻殻機動隊 S.A.C.シリーズ」「交響詩篇エウレカセブン」「ドラえもん」などSFアニメ作品を中心に、ゲームや漫画・小説・映画・TVドラマなどさまざまなメディアでの企画・脚本を手掛けるクリエーター。史実に基づく歴史ドラマで描かれること・描かれないことは、どのように選ばれ、それは何を意味するのでしょう。近過去に実在した歴史上の人物をアンドロイドにすることともつながるお話が聞けそうです。

 “熟議”系徹底討論を目指して行う本イベントでは、通常のシンポジウムよりも各発題者のプレゼンタイムを長めに取り、まずはそれぞれのお話をじっくり伺います。ご発題を受けての総合討論も、時間をたっぷり掛けてじっくり行います。
台本無し、司会者無し、予定調和無し、手に汗にぎる“知恵熱”トークを通じて、アカデミズムの枠を超えたさまざまな観点から「漱石アンドロイド」をめぐる多軸多焦点の議論が熟す過程に立ち会い、言論が立ち上がるプロセスそのものをお楽しみください!

問い合わせ

漱石アンドロイドシンポジウム事務局

soseki-a@nishogakusha-u.ac.jp

シンポジウムポスター/チラシ