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二松學舍創立135周年記念式典 渡辺和則学長 式辞

二松學舍大学は、本年創立135周年を迎えました。これもひとえに二松學舍大学を支え、応援して下さった皆さまのお陰であると深く感謝し、深甚なる謝意を表します。
ご来賓ならびに関係にはご多用中のところ、ご臨席を賜り心より御礼を申し上げます。
さて、二松學舍大学は、明治10年の漢学塾二松學舍の設立に始まり、二松學舍専門学校、そして今日二松學舍大学へと発展してきた伝統濃き学舎です。しかし、その伝統は放置して継続するものではありません。伝統は常に塗り替えて、移り行く時代に適応していかねば色褪せてしまいます。本年のような節目の時には、平素忘れかけてはいても、まず学祖三島中洲先生の求めたものを求め、さらにそれをどのように現代に生かしていくかを考えることが肝要です。
中洲先生の学説には重要なものが多数あります。特に「義利合一論」と「道徳経済合一説」は、かつ二松學舍の舎長を務めた渋沢栄一が人間の経済行動に応用し『論語と算盤』を著したことで知られる重要な学説です。中洲先生は、ご自分の学問の標準は「義利合一」であると述べています。先生は「俯仰天人に愧じず」と「公にして無私」を生活の原理原則に置き、そこから「義利合一」の思想を導きました。「仰天人に愧じず」は省みて自分のすることにやましいところはないという意味ですが、さらに掘り下げて考えると、使命感と責任感をもって物事に真剣に取り組むことであると解することができます。従って物事を「俯仰天人に愧じず」に基づいて考えると「何をなすべきか」がわかります。
また、「公にして無私」とは私心を離れ公利を念頭に置いて行動するということです。従って物事を「公にして無私」に基づいて考えると「いかになすか」がわかります。「何をなすべきか」は「義」の問題であり、「いかになすか」は「利」の問題です。中洲先生は、「俯仰天人に愧じず」を「義」の判断基準とし、また「公にして無私」を「利」の判断基準として「義」と「利」の関係を、次のように規定しました。
「物事を行うかどうかを考える場合、まずは『義』の側面において『何をなすべきか』を考え、次いで、『利』の側面においてそれを『いかになすか』を考える。さらに、結果に照らして再び『義』の側面において『何をなすべきか』を考える。このように『義』と『利』は意思決定のプロセスにおいて、対立的な関係としてではなく、一体的な関係として捉えられるべきものである。しかし、本質は『何をなすべきか』という『義』の問題であり、『いかになすか』という『利』の問題ではない。『利』の問題は方法の問題に過ぎない。ただし、方法が誤っていれば、いかなる物事も成就しない。従って、『利』は『義』の制約条件である。」
以上が中洲先生の「義利合一論」の骨髄です。私たちは社会構造が大きく変動しつつある状況にあって、いまだそれに適応する策を持ち得ていません。今こそ、中洲先生の言わんとしたことを噛みしめ、「二松學舍大学は何をする大学なのか」を常に中心に置いて教育研究活動に取り組んでいかねばならないと考えております。
次に、本学の将来展望について触れさせていただきます。二松學舍大学は漢学塾の時代以来135年間、この九段キャンパスを教育研究の拠点としてきました。来年度からは柏キャンパスでの教育研究活動を九段キャンパスに集約し、本格的な都市型大学を目指します。施設設備の面で厳しい制約はありますが、教育内容の充実や教育研究力の増進を図ることにより、これまで本学が継承し発展させてきた伝統的学問の振興に寄与するとともに、社会の新しい要請に応えて行く所存です。今後の二松學舍大学の教育研究活動に大いなる期待を寄せていただきたいと思います。
最後になりましたが、本日ご臨席いただきました御来賓をはじめ関係各位の皆さまの益々のご健勝を心より祈念するとともに、更なるご指導、ご支援を賜りますようお願い申し上げます。また、これまで二松學舍大学を支えてくださいました皆さまに感謝を申し上げ、私の式辞といたします。