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第5回 奈良絵本『保元物語』『平治物語』 二松学舎大学附属図書館蔵

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二松学舎大学附属図書館には、江戸時代前期制作の奈良絵本『保元物語』『平治物語』(以下、二松本とします)が所蔵されています。二松本は、『保元物語』『平治物語』ともに六巻六帖の完本であり、全一二巻一二帖です。

奈良絵本というのは、一般的には、室町時代末期から江戸時代前期にかけて盛んに作られた彩色絵入りの冊子本を指します。また、この時代に制作された絵巻物も含めて奈良絵本と呼ぶ場合もあります。奈良絵本という言葉は、明治時代以降に作られたものです。奈良絵本とはいいますが、実際には奈良ではなく、京都で制作されたと考えられます。おそらく奈良絵本の多くは、将軍家や大名家といったお金持ちが、絵草紙屋に制作させたものだと考えられます。

奈良絵本『保元物語』『平治物語』は、現在、二松学舎大学のほか、海の杜の見える美術館(広島県)や彦根城博物館(滋賀県)、エジンバラ市の図書館(イギリス)などにも所蔵されています。いずれも、江戸時代の版本である寛永三年版本をもとに制作されていますが、それぞれ絵の部分には個性があり、寛永三年版本にはない絵も多く含まれています。

二松本は、寛永三年版本をはじめとする他本と比較して、絵の数が非常に多く(見開き絵の数も多い)、豪華版です。絵は、細密に描かれており、色合いも実に鮮やかです。また、二松本は、他本と比較して、グロテスクな場面が描かれない傾向にあります。たとえば、合戦により斬られた首そのものを描いた絵も他本と比べると大変少なくなっており、血もほとんど描かれません。二松本の注文主が、おぞましい場面を嫌い、生首や血を極力描かず上品な作品にするよう、絵草紙屋に指示を出したのではないかと考えられます。

現在、二松本の研究は、進められているところです。2013年春と2014年春には、二松本についてのシンポジウムが二松学舎大学で開催される予定であり、2014年春には、二松本についての研究書が出版される予定となっています。シンポジウムの時には、二松本の展示も行なわれます。絵画の迫力というのは、実物からでなければ伝わってはきません。二松本についても同じことが言えます。興味がある方は、是非シンポジウムにお越しになり、二松本をご覧下さい。(小山 聡子)

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