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第1回 「御裳濯河歌合(みもすそがわうたあわせ)」・「宮河歌合(みやがわうたあわせ)」二冊 版本(江戸時代)五月女肇志(本学教員)個人蔵

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どちらも中世文学の代表的な歌人である西行(さいぎょう)(1118~1190)の自歌合(自分の代表作を左歌右歌に並べて勝負をつける歌合の形式にまとめたもの)です。これらの作品の成立は平安時代末期ですが、作者の名声もあって、以後多くの人が競って書写を行い、百種類に近い写本・版本が現在残っています。

写真に見える2冊は、その中で、江戸時代に印刷されたもので、何年何月何日に誰が発行したかということが記されていない無刊記本と呼ばれるものです。江戸時代に印刷された本としては、これとは別の種類の寛文7年(1667)に刊行されたと記されているものが数多く残されていますが、無刊記本の方を所持している図書館、資料館、大学はほとんどありません。この歌合の本文研究として代表的な成果である寺澤行忠先生の『西行集の校本と研究』(笠間書院、2005年刊)によれば、『宮河歌合』一冊が三重県の神宮文庫に所蔵されているだけです。他には個人で維持している文庫の中に僅かに見られることが知られています。

以上のように見ることがなかなかできない希少価値の高い資料ですが、昨年私費で購入し、ゼミナール等の授業や研究で活用しています。 私が担当しているゼミナールの学生は実際に手で触れたり、写真撮影をしたり、読んでいくことが可能です。もちろん手を清潔にするなど、資料を傷めないために注意する点はありますが。

大きさは2冊ともに縦25.7センチメートル、横18.6センチメートルで、このサイズの本は「大本」と呼ばれます。購入直後、自宅の火災警報機が誤作動を起こしましたが、その時思わず持ち出したのが、済んだばかりの定期試験答案とこの2冊でした。

今後も皆さんが興味を持てるような本を探し出して、このページで紹介したいと思っています。(五月女 肇志)

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