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著書紹介

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同盟の相剋―戦後インドシナ紛争をめぐる英米関係

  • 著者:水本義彦 (二松学舎大学 国際政治経済学部)
  • 出版社:千倉書房、2009年10月16日発行
  • A5版 320頁 3,990円(税込)
  • ISBN:978-4-8051-0936-6

著書の内容

 「真の同盟関係には共に武器を取るばかりではなく、不和のなかでも関係を維持する覚悟が求められる。」(本の帯より)

 本書は、戦後の3つの戦争(インドシナ戦争、ラオス内戦、ベトナム戦争)をめぐるイギリスとアメリカの関係を論じたものです。ベトナム戦争は、アメリカが戦った戦争の中で「もっとも長い戦争」であり、またアメリカが敗れた「唯一の戦争」ともいわれます。一方、イギリスはアメリカのもっとも重要な同盟国といわれています。戦争は、同盟の真価を問う政治的試練です。しかし、イギリスはベトナム戦争でアメリカに軍事協力をしませんでした。なぜイギリスは、同盟国アメリカの反発を予期しながらも、戦争協力を拒み続けたのか。ベトナム戦争にいたる英米関係を通して「同盟」が抱える諸問題を考察しています。

本書を執筆するにあたって

 本書は、構想から出版まで足掛け7年間の時間を要しました。初めから本全体の構想が決まっていたわけではありません。7年前、イギリスに留学していました。皆さんも一度は耳にしたことのあるウィンストン・チャーチル英首相について博士論文を完成させ、さあ、次にどんなテーマを研究しようかと考えていました。そのときに、本書の第6章と7章のもとになるベトナム戦争に興味を持ち始めました。その後、日本に戻ってきてから、いろいろな方々から知的刺激を受けながら、少しずつ研究を重ねてきたのです。

 歴史研究でもっとも重要な作業は、資料(政府文書など)の収集と解釈です。私も過去7年間、ロンドンにあるイギリス国立公文書館(http://www.nationalarchives.gov.uk)に4度足を運びました。イギリスでは、文書が作成されてから30年経過すると、原則すべての政府文書が公開されることになっています。戦争という人間の生死を左右する問題にかかわることは、世界の政治指導者にとっても苦渋に満ちた行為です。戦争にかかわった指導者は、実際何を考えながら決断を下していったのか。当時作成された文書を中心に、政治家本人の日記や手紙などを手がかりに、この問題を解き明かしていくのです。

 当時の政治指導者の直筆メモを手にとると、30年以上前の出来事を臨場感をもって追体験できます。でも、そう簡単には重要な資料にめぐり合えません。最終的に使える資料は、何百枚に1枚といった程度でしょうか。ですから、公文書館に行くと、朝から晩までひたすら、使えるかどうか分からない資料を1頁ずつめくって読んでいくしかありません。
このような地味な作業の繰り返しですから、途中で何度も行き詰ることがありました。今となっては、いままでの作業を本という目に見える成果にまとめることができて、なんともいえない充実感を覚えています。次の研究に向けての意欲が沸いてきました。

読者へのメッセージ (大学生・高校生の皆さんへ)

 「継続は力なり」とよくいわれます。本作りという作業を通じて、私はこの言葉の意味を実感しました。私にとっては、たまたま歴史研究が興味の対象だったわけです。皆さんにとっての興味の対象は何でしょうか?皆さんの夢や目標の中には、短期的には実現が難しいものがあるかもしれません。ですが、もっと長い時間の中で自分の夢を捉え、少しずつ力を蓄え、機会をうかがい、いつか必ず達成する。そういった息の長いビジョンを描いてみてください。

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