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著書紹介

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横溝正史研究 5

  • 著者:江藤茂博・浜田知明・山口直孝編
  • 出版社:戎光祥出版
  • A5判 322頁 2,400円(税込)
  • ISBN:978-4-86403-053-3-C0095
  • 発売日: 2013年3月31日発行

著書の内容

1.『横溝正史研究』の成り立ちとこれまで
 横溝正史の名前は、みなさんご存じでしょう。彼の創造した金田一耕助は、日本で最も有名な名探偵の一人。『八つ墓村』や『犬神家の一族』などを始めとする彼の活躍は、映画やテレビドラマにもなり、広く知られています。日本の探偵小説の歴史を作り、メディア・ミックスの先駆けともなった正史の作品は、文学・文化研究の題材としても興味は尽きません。 「国文学科の「お宝」紹介」のコーナーでも紹介したように(http://www.nishogakusha.jp/special/kokubun01/02.html)、二松学舎大学には横溝正史の原稿・草稿や旧蔵書など大量の資料が所蔵されています。資料の紹介を行い、同時に横溝作品の魅力や社会現象となった意味などを考察するため、2009年から『横溝正史研究』という研究誌の刊行を始めました。国文学科の江藤茂博・山口直孝の2人に探偵小説研究家の浜田知明さんに加わっていただき、編集を行っています。探偵小説家・愛読者・研究者の方々のご協力を得て、これまで「金田一耕助登場」(創刊号、2009年4月)・「ビジュアライズ横溝正史ミステリー」(2号、2010年8月)・「倉敷・岡山殺人事件」(3号、2010年9月)・「横溝正史の1930年代――『鬼火』から『真珠郎』まで」(4号、2013年3月)と、4冊の特集号を出してきました。いずれも、詳細な作品分析、関係者のインタビュー、未公開資料の翻刻紹介などを盛り込み、充実した内容です。
2.5号「横溝正史旧蔵資料(二松学舎大学所蔵)が語るもの」の読みどころ
 最新刊の第5号(2013年3月)は、創立135周年を記念する意味も込め、二松学舎大学が所蔵する資料の紹介を行う特集を組みました。初公開の資料が目白押しで、マニアでも初めて聞く話が多かったのではないでしょうか。 目玉は、『模造殺人事件』の一挙掲載。本作は、『スタイル読物版』という雑誌に1949年12月から連載されながら、掲載誌が休刊となったため、未完となった作品です。二松には雑誌掲載3回分に加えて、幻の第4回の校正原稿が残っていました。第5号では、発表当時の挿絵も添えて翻刻しています。途中で終わっているのは残念ですが、浜田さんの詳しい解説を参照すれば、ほぼ真相はつかめるはずです。
 自筆原稿の解読に挑んだのは、『犬神家の一族』の登場人物の関係と名づけとに対する作者の苦労を大量のメモからたどった「『犬神家の一族』生成の現場――草稿からたどる構想の軌跡」や、正史が専業作家になった時の創作に対する周到な準備をとらえた「『幽霊騎手』梗概の意気込み」など。愛読した洋書・洋雑誌からの影響の考察としては、金田一耕助の造型に一役買ったミルンの長編の掲載誌を突きとめた『赤屋敷の殺人』と『Everybody’s Magazine』や『本陣殺人事件』の執筆のヒントとなった海外の短編があったことを指摘した「『本陣殺人事件』と『The Premier Magazine』の三つの短編
――『生涯の仇敵』の材源」などがあります。さらに、300冊を超える映画・テレビ・ラジオのシナリオの特徴を説明した「横溝正史原作のドラマと映画――シナリオ関連資料が語るもの」も見逃せません。

学生の皆さんへ

 「シナリオ関連資料」および「洋書」一覧も収録しており、データブックとしても活用できます。横溝正史の愛読者はもちろんのこと、ミステリー・ファンにも楽しんでもらえる内容になっていますので、ぜひ一度手に取っていただければと思います。
作品の成り立ちを探っていく作業は、それ自体が謎解きの魅力に満ちています。文学研究に関心のある学生や受験生に、資料を調べる面白さが伝われば幸いです。(文学部国文学科 山口直孝)

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