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第2回 「横溝正史旧蔵資料」 学校法人二松学舎所蔵

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今回は、「横溝正史旧蔵資料」を紹介しましょう。横溝正史の名は、みなさんもよくご存知だと思います。彼が創造した金田一耕助は、日本で最も有名な名探偵の一人。今から約30年前、あいついで映画化・テレビドラマ化された横溝の作品は、大変なブームを巻き起こしました。現在でも人気は根強く、何人もの役者が金田一耕助に扮しました。一番新しいところでは、2009年のお正月、フジテレビ系列で放映された『悪魔の手毬唄』で稲垣吾郎が金田一を演じています。高校生・大学生のみなさんには、『金田一少年の事件簿』の主人公が敬愛する「ジッちゃん」としても知られていますね。

二松学舎大学が所蔵するのは、横溝正史の自筆原稿や蔵書を中心としたコレクションです。原稿は、2006年6月、ご子息の横溝亮一氏が自宅物置で発見されました。資料の主なものを挙げると、原稿(約280点、約5,000枚)、映画化された作品のシナリオ(約300点)、洋雑誌(約290点)、洋書(約170点)、映画スチール写真(約880点)などがあります。これだけでも大変な量だということは伝わると思います。もちろん、内容的にも重要な資料ばかりで、例えば原稿には、『獄門島』・『犬神家の一族』・『八つ墓村』といった代表作の草稿や完成稿、『霧の夜の出来事』というこれまで知られていなかった作品が含まれています。洋雑誌は、少年時代の横溝が古本屋で買い集め、夢中で読みふけったもの。晩年まで手元に置いていたそうです。

横溝正史は、江戸川乱歩と並び、日本のミステリーを切り拓いてきた人です。横溝正史旧蔵資料は、横溝正史の研究、さらにはミステリーの歴史の研究に欠かせない、第一級の資料です。これまで詳しいことがわからなかった創作の舞台裏が、これらの資料で明らかにできるのではと期待されています。『犬神家の一族』には、いくつかの異なる下書き原稿が残されており、横溝が書き出しに苦心していることがわかります。また、『悪霊島』には取材ノートが残されていて、瀬戸内の架空の島を舞台にした作品を執筆する上で、横溝が岡山県の下津井の歴史をていねいに調べていたことを知ることができます。洋雑誌には書き込みや線を引いた跡があり、創作の上での影響関係を指摘できるでしょう。

現在、調査は進行中です。資料からは、さらにいろいろな発見が出てくることでしょう。横溝正史旧蔵資料の活用、紹介、さらに横溝正史文学の考察や愛読者の交流を目的に、2009年4月に『横溝正史研究』(戎光祥出版)という研究誌を創刊しました。創刊号の特集は、「金田一耕助登場!」、第2号では映像化作品を取り上げる予定です。二松学舎大学は、今後ミステリーの研究でも、拠点となっていくでしょう。興味のある方は、ぜひ今後の成果を楽しみにしてください。

画像は、横溝正史旧蔵資料の一部です。上段左は、『犬神家の一族』の書き出し部分の草稿。その隣は、同じく『犬神家の一族』のメモで、人物関係が模索されています。下段左は、『悪霊島』取材ノート。その隣は、『八つ墓村』雑誌連載第6回の草稿、そして、第7回の原稿です。金田一耕助ものの代表作ばかりで、これだけでも壮観ですね。(山口 直孝)

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