二松学舎大学21世紀COEプログラム 「日本漢文学研究の世界的拠点の構築」

日中文化交流班、中洲研究会 共催

シンポジウム「 漢文学の近代的転回 」

      2005年9月10日(土) 13:30〜18:00

      二松学舎大学 6階 608教室

      事前申し込みは不要です。  皆様の参加を歓迎します。

      

   パネリスト

     劉 建 輝(国際日本文化研究センター)

     戦 暁 梅(東京工業大学)

     佐藤一樹(二松学舎大学)

近代における文化と社会の激しい変容の中で、日本語の中の一文体としての漢文、漢文読み下し文、文芸・学問の一ジャンルとしての漢文学、そして知識人の一員としての漢学者はどのようなポジションを喪失し、またどのような新たなポジションを獲得したのだろうか。

近代での漢文や漢文学について、衰退の文脈で語られるのでなければ、体制教学の烙印が押されることが多いが、それはもっぱら公教育の展開にそって眺めた場合の話である。教育に限ってみても、民間の塾やさまざまな出版物、あるいは習い事など、学校以外にさまざまな経路が存在したことにも目を向けなければならない。書道やそろばんと並んで、漢学や詩吟の塾も昭和前期頃までは日本全国に散在していたことが確認できる。

文学はいうまでもなく、学術や芸術、あるいはひとびとの人生観や社会観のなかに漢文学、漢学の濃厚な存在を読みとることはそれほど難しい作業ではない。国民道徳への儒学の取り込みはもちろんのこと、明治作家の残した漢文作品や新たな文体創成における漢文体の果たした役割などについてはすでに多くの研究の蓄積がなされてきた。

ただ、漢文学やその文体が近代日本の文化の表と裏それぞれの部分で持続と再生の営みを続けてきたことを、総合的に捉えようという試みはこれまであまりなかったように思われる。日本の近代文化に漢文学の形跡を見いだす作業は、公定の国民文化形成に焦点が集まりがちだったこれまでの視点を再考するよい契機となるだろう。もちろんこうした試みについては、今回のシンポジウムを契機に、定期的な研究会の組織化につなげていきたいと考えている。