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平成28年度 『論語』の学校 -RONGO ACADEMIA- 開会挨拶

平成28年11月19日(土)、九段1号館中洲記念講堂において、「『論語』の学校-RONGO ACADEMIA-」が開催され、307名を超える多くの方にご参加頂きました。水戸理事長の開会のご挨拶を掲載いたします。

 皆さんこんにちは。今年も「論語の学校 ―RONGO ACADEMIA―」に、沢山の方々にお集まりいただき、誠にありがとうございます。開会に当たりまして、一言ご挨拶をさせていただきます。「論語の学校」は学校法人二松學舍の主催で、平成17年度を皮切りに本年で12回目の開催となります。また、本学は今年で創立139年目となり、来年は創立140周年を迎えます。それに向けて、大学、両付属高等学校で様々なイベントを計画しておりますので、ご注目頂きたくお願い申し上げます。

 さて、みなさん、「不易と流行」と云う言葉を御存じだと思います。この言葉は松尾芭蕉が「俳諧の理念」を例えて使った言葉です。不易とは、人間社会にとって、不朽の価値観を言い、流行とは時代、時代の流行りを言います。不易と流行は教育の世界でも当てはまります。すなわち「教育の不易」とは、社会がどんなに変化しようとも、「時代を超えて変わらない価値のあるもの」、例えば「 豊かな人間性、正義感や公正さ、誠実を重んじる心、他人と協調し協働する心、思いやる心、人権を尊重する心、自然を愛する心など」いつの時代、どの国の教育においても大切にされなければならないものです。次に「教育の流行」とは、教育も社会の変化に無関心であってはならない、「時代の変化」(流行)に柔軟に対応していくことであり、これもまた、教育に課せられた課題であります。皆さんご記憶のことと思いますが、十数年前、ゆとり教育という教育がはやりました。小学校、中学校、高等学校で盛んに展開されました。しかしながら、その後OECDの加盟国生徒の学力調査により、我が国生徒の学力が、低下したことが判明し、ゆとり教育は失敗であったと反省されております。では現在の流行りの教育は何かと申しますと、「アクティブ・ラーニング」です。文部科学省の教育用語解説によりますと、「学生の主体的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称」であり、学生の主体的な学修を通じて、グループ・ディスカッション、グループ・ワーク 等を交え、課題解決・発見・体験的な学習を行うことが、有効なアクティブ・ラーニングである、とあります。要は授業の進め方を、一方通行的な講義から、学生と意見交換・実地の学習を交えながら、双方向教育へ転換しななさいと云うことです。なぜこのような教育が必要になったかというと、現代はグローバル化、情報化社会が進み、いわゆる知識基盤社会が進展している状況下、世の中が複雑で不透明なことがあまりにも多い、例えば、英国の欧州共同体からの離脱、事前の予想は残留で一致していた、また米国の大統領選挙も、トランプ氏が事前の劣勢をひっくり返して、選出されたことなど、枚挙にいとまがないわけです。従ってこういう複雑で、不透明かつ解の無い問題だらけの社会では、論理的思考力、想像力、構想力、課題解決力、倫理的な能力に加え社会を生き抜く力を、つけてやる必要が出てきているからです。このアクティブ・ラーニング、今は流行りですが、不易の教育と云う地位を得られるかどうか、単なる流行りに終わるのかは、これからの実効ある展開にかかって来ると思われます。

 本日の「論語の学校」、ゲスト講師として、私学振興・共済事業団、この組織は私立学校の頼れるラストリソートでありますが、その理事長で居られる河田先生をお招きしております。河田先生は、同時に著名な中国哲学研究者であり、古典から現代までの中国について精通されておられる先生です。どうか最後までご静聴いただき、質疑応答等にもアクティブに展開して頂ければ幸甚です。どうか宜しくお願いいたします。