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理事長トピックス

平成28年 新年のご挨拶

教職員の皆様、卒業生の皆様、本学関係者の皆様に、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

「寒 松 一 色 千 年 別」
寒松一色千年別なり

 松の緑は、寒い冬でも毅然として輝き、その青さ、姿は千年も変わることなく、みごとであります。本年10月、創立139年目を迎える二松學舍が、長い歴史の上に歳月を重ね、風雪の苦難に耐え、その青さを保ち続けて行くためには、教職員が切磋琢磨し、本学のブランドを保ち、引き上げて行く必要があり、このために策定されたN’2020 PLANに基づくアクションプランの不断の実行が、今年も求められるところであります。なお、昨年9月に理事長として再任され、引き続き、学校法人二松學舍のかじ取りを任されることになりました。これまでと同様、ご支援のほどよろしく願いいたします。
 さて、昨年の世界経済は、中国が減速傾向に陥りましたが、欧州、米国、日本等先進国が景気回復をみるなど、全体的には順調な状況を示しました。しかながら、難民とテロの年でもありました。これらの原因は、先進国や中東等において、格差、疎外感、絶望感を持った若者が、イスラム国に流れて自分の存在意義を初めて見出し、活動しているためで、フランスの経済学者ピケティーが言う「格差社会が進展すると、極端な解決策が出てくる」との指摘通りでしょう。これらの格差を無くす努力を、我々がしていかない限りは、難民とテロ問題は解消されないと思います。我が国でも、賃金・教育・雇用・医療等の格差が拡大しています。従って、ダイバーシティーの環境を整え、機会均等の社会を実現していくことが肝要であり、二松學舍の組織内においても同様であると考えております。
 次に私学経営を巡る環境ですが、毎年厳しくなってきております。少子化の進行で毎年確実に18歳人口が減少して行く状況、また都内に本部をおく私立大学の都心回帰により、都心部での学生獲得競争が激化し、結果として都心立地も優位性が薄れていく結果にあること、加えて昨年末から話題になり、平成31年度スタートの予定で、現在文部科学省で制度設計に移っている「実践的な職業人を養成する大学構想」、これは専門学校、各種学校、専門高等学校が一定の条件の下に大学に格上げになる構想であり、国家資格等が確実に取れるこの種大学の出現は、既存私立大学の競合相手となる公算が大きいこと、更に安倍政権の地方創生事業に伴う地方大学の優遇化措置(都心部の新学部増設禁止、定員充足率の引き下げ等)など、諸方面からひしひしとその強まりをみせております。こうした中、大学の志願者総数もここ2年度間、逐次減少傾向となっており、今年度入試は、これに歯止めをかけるべく、入試対策として、WEB出願、奨学金選抜付き、併願割引等各施策を講じております。こうした、対症療法に加え、抜本的な改革、従来から推し進めております教育の質的改善を通じた大学のブランドの引き上げ、すなわち、学部4年間で、真の実力を身につけるための教育の展開、例えばカリキュラム改革やアクティブラーニング等教育方式の転換、両学部における英語、中国語等語学力の強化やキャリア教育の徹底、高大接続と入試改革等抜本改革、時代の変化に応じた両学部の学科改組、まずは中国文学科の改組、定員を140名から90名程度に削減を行い、削減分50名で新学科を新設するという案を検討中です。そのほか、国際政治経済学部の時代の波に合った改組を進めていくことも喫緊の課題であり、今後、学生募集力を維持し、さらに高めるための根幹の諸改革を、推し進めていくことが必要です。
 次に両附属高等学校におきましては、幸い志願者総数は、予定の数字を上回る結果となっておりますが、その他の重要課題、すなわち引き続き難関大学の合格者数の引き上げや、語学教育の徹底、理数教育の強化、高大接続に向けた、アクティブラーニングの導入等授業方法の変更等の見直しが必要になってきております。また中学校の課題としては、27年度中に講じた数々の定員充足対策の効果を見守る段階にあるということがいえます。
 さて、来年10月には、本学は140周年を迎えます。既に周年記念事業準備委員会が設置され、その基本テーマを、「いままでの140年。これからの140年。」と決定し、周年記念ページを開設しました。周年事業の基本コンセプトは、「今一度、原点に立つ」との考え方の下、長期ビジョンで打ち立てた、本学の建学の精神とその教育・研究の基本方針を、再確認したいと考えております。すなわち、本学の基本的な教育理念は、学祖三島中洲先生が唱えた「東洋の精神による人格の陶冶」に基づき、その教育を、人々の長い歴史的な経験や英知が詰まった「古典」に重きを置き、「古典の中に未来がある」との考え方の下、その原点である「国語力」の習得を軸に据え、人間の考え方の根幹、本質を教え、「知行合一」(Knowledge & Action)の精神の下、「自ら判断し、行動する豊かな人間力」を付けることを目的とした教育であります。「知行合一」とは、「本当の知識は実践を伴わなければならない」という意味であり、これを体得させ「自ら判断し、行動する豊かな人間力を身につけた真の国際人」を育てる教育を最終目標としております。グローバル化、知識基盤社会が進展し、複雑化、混迷化するこの社会を、生き抜き、より良い社会の構築に貢献する人材が求められる現代において、この教育方針は、かかるニーズに合致する方針であり、その役割は非常に大きいと考えております。
今後もこの建学の精神に基づく本学の教育と研究の方針が、社会から評価され、必要とされるよう、役員・教職員ともども研賛していく所存であり、引き続き皆さまのご協力とご支援を頂きたいと思っております。宜しくお願い致します。これをもって申年、新年のご挨拶とします。