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『恋する人文学 ― 知をひらく22の扉 ― 』を刊行しました

 このたび『恋する人文学 ― 知をひらく22の扉 ― 』と題した書を刊行しました。本書は、恋愛をキーワードに、二松學舍大学文学部国文学科の教員がそれぞれの研究分野の魅力を説いた本です。人が人を好きになるのは古今東西を問わず見られる現象ですが、感情の動き、相手への働きかけ、周りの反応などは、文化や時代によってさまざまな異なりを見せます。歌・物語・小説・映画・芸能・ドラマ・史実などを手がかりに、多種多様な恋愛のあり方に迫ろうというのが本書の狙いです。

 例えば、『万葉集』のウナヒヲトメの伝承(二人の男から求婚された女性が入水死する話)からは、外の人間と結婚することをタブー視する共同体の意識が透けて見えます。鴨長明『発心集』に描かれた遠距離恋愛の悲劇は、修行の道に入る機縁となったことに重きが置かれています。近代になると、恋愛は掟や宗教よりも尊いと見なされるようになり、夏目漱石を始めとする作家たちが自由恋愛を積極的に取り上げるようになります。男女の仲の描かれ方や意味づけられ方を分析すると、固有の時空における人間社会の特徴が浮かび上がってきます。
 国文学科には、国文学科専攻、映像・演劇・メディア専攻、日本語学専攻、日本文化専攻、比較文学・文化専攻の五つの専攻があり、豊富で広がりのあるカリキュラムを展開しています。各分野の専門家が執筆を分担した本書は、目の前の事実から見えない世の中の構造を考察していく学問の面白さを知るよいきっかけとなるでしょう。「文学入門」という、文学部の一年生が学ぶ必修授業のテキストとして本書は編まれています。そのため、記述は平易ですが、最新の研究成果を取り入れた中身は、間違いなく読み手に知的刺激を与えるはずです。
 恋する人文学」という書名は、恋愛を対象としているからですが、人文学という学問領域に興味を持ってもらいたい、つまり、恋してもらいたいという意味もこめています。ぜひ本書を手に取っていただき、気になった話題から読み始めていただければと思います。引き込まれること、請け合いです。