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平成29年度 『論語』の学校 ―RONGO ACADEMIA― 開会挨拶

 皆さんこんにちは。今年も「論語の学校 ―RONGO ACADEMIA―」に、沢山の方々にお集まりいただき、誠にありがとうございます。開会に当たりまして、一言ご挨拶をさせていただきます。「論語の学校」は学校法人二松學舍の主催で、平成17年度を皮切りに本年で13回目の開催となります。また、本学は今年で創立140年目となり、この10月10日に創立140周年記念式典を開催しました。これまで140年間、教育機関としての使命を果たしてこられたのも、社会から認められ続けた結果といえます。今後も引き続き、ご支援をお願いする次第です。
 140周年を契機として、私共、学校法人二松学舎としての、長期ビジョンN'2030Planを策定しました。今から13年後の二松学舎の目指す目標を立て、それに向かって、進んでいこうというプランです。策定にあたり、2030年の人口動態や経済・社会環境、我々の仕事がどうなっているかの予測を立てたわけです。その中で、現在のAI、すなわち人口知能が、人間のIQを超えて発展していく、その結果、現在の仕事をAIが代替していくことになります。野村総合研究所とオックスフォード大学のマイケル A. オズボーン准教授との共同研究によれば、国内601種類の職業について10~20年後にAIやロボット等で代替される割合は定型業務や反復業務などを中心に約5割という推計があります。言い換えれば現在の仕事の5割が無くなるということです。
 ではAIに代替されない仕事とは何か、それは、人とのふれあい、優しさ、思いやりなどの知性を通じて人間に豊かさをもたらすことができる仕事、具体的には、医師、看護師、介護士、教員(小中高大)、弁護士、ジャーナリスト、ITスキル技術者、各種コンサルタント、理・美容師、芸術家、音楽家、学芸員等約50業種が挙げられています。すなわち相手の立場を理解し、相手の立場に立って、コミュニケーションができる知性、いわゆる社会的・創造的知性の持ち主ということになります。実はこれは、論語で言う「仁愛精神」に他ならない知性であると言えます。確かに、AIは、ビッグデータを背景にそのずば抜けた計算力・整理力・分類力で人間のIQを越え、またディープラーニングを学べば、汎用的な能力すなわちEQの領域までは越えられるかもしれません。しかし、人間特有のプレミアムな感性である社会的・創造的知性は、超えることのできない壁となるのではないでしょうか。この点からも論語の中で孔子がその中心にすえた倫理規定である「仁愛」は、人間と人間が構成する社会において、「人として踏み行うべき正しい道」の言葉通り、重要かつ我々が身に付けるべき徳目であるといえますし、AIが代替できない能力、人間が持つプレミアムな知性であると思われます。
 最後に言うまでもありませんが、私どものN'2030Planにおける2030年型教育の目標には、この「仁愛」という知性を、基礎として、深い専門知識と幅広い教養知識、それを使うスキルであるコミュニケーション力、創造力、論理的思考力、情報収集力を身に付けさせ、これら知識とスキルを兼ね備えた社会的・創造的知性すなわち、仁愛精神に溢れ、倫理観のあるリーダーシップのある逞しい人間を育てる、そういうような教育を目指しております。皆様の関連する御子弟様にもぜひ本学の教育の経験をされるよう、中高大とありますので、ご検討を頂ければ幸甚です。

 さて、本日の「論語の学校」、講師として本学の市来津由彦特別招聘教授、ゲスト講師としてコモンズ投信の社長であり、明治・大正の実業家、日本資本主義の父と言われた渋沢栄一の第5代目の子孫である渋沢健先生に、大変ご多忙のところ、講師をお願いしております。興味深い話が多々あると思いますので、皆さん最後まで、ご静聴いただき、質疑応答等にもアクティブに展開して頂ければ幸甚です。どうか宜しくお願いいたします。