理事長メッセージ

「これからの140年に向けて」

学校法人二松學舍 理事長 水戸英則

二松學舍は昨年創立140周年を迎え、その折に新長期ビジョン「N'2030 Plan」の公表を行いました。本年は改めて、これからの140年の第一歩を踏み出す年であります。

明治10年、創立者三島中洲先生が、「漢学塾 二松學舍」を立ち上げ、以降、「東洋の精神による人格の陶冶」を建学の理念として、漢学を教授することで、真に役立つ人材の育成を目指し、多くの有為な人々を送り出してまいりました。その後、国語科教員を養成する専門学校を経て、現在は、二松學舍大学、同附属高等学校、同附属柏中学校・高等学校の1大学・2高等学校・1中学校を擁する在籍総数約4700人の学舎に発展してきております。

このように本学が、140年の長い歴史を重ねて来られたのは、建学の精神に基づく本学の教育と研究が、社会から評価され、必要とされ続けてきたことによるものです。そして、その主要な推進力はその時代時代の教職員の力によるものが極めて大きいことは疑いのない事実です。

本学はちょうど5年前の創立135周年時に長期ビジョン「N'2020 Plan」を策定、その着実な実行により、大学においては都市文化デザイン学科や国際経営学科等新学科の開設・新設、定員増、教育の質的改善、奨学金制度の充実、グローバル化対応、キャリア教育、学生支援、キャンパス整備等多くの成果を挙げて参りました。また、附属柏中・高等学校におきましても、超難関大学への入学等進学実績を挙げたところです。

しかしながら、私学を取り巻く環境はその後予想以上に大きく変化、すなわち、18歳人口はこれから2040年にかけ20数年間で40万人以上、毎年約2万人と急速に減少、これは定員1000人の大学が1年に20校学生を集められなくなるという厳しい現実を意味します。また、私学行政面では、定員管理の厳格化、23区内私立大学の増員抑制、強固なガバナンスが要求される私学法の改正問題等様々な制約が生じてきております。加えて、時代の大きなうねりとして、いわゆる第4次産業革命、AI・IoT・ビッグデータ等機能の進展により、10~15年以内には現存する職業の5割以上が消失する、もちろんこの間には現在ない新しい仕事が並行して現れることにもなりますが、いずれにしろ我が国の働き方や経済・社会状況が一変していくとの予想もあります。

こうした状況の激変と予測が極めて困難な時代において、本学の使命を今後とも永続的に果たし続けていくため、全学一丸となって新たな達成すべき共通の目標である2030年に向けた本学全体の進むべき指針として、新長期ビジョン「N'2030 Plan」を定め、140周年記念式典の席で公表したわけです。

この「N'2030 Plan」の概要については、詳細を別添のアドレスに掲載しておりますので、よく理解しておいていただきたい訳ですが、その大きな狙いを以下3点に絞って今一度説明しておきたいと思います。

第1点は、卒「20世紀型教育」です。すなわち本学の建学の精神に基づいた2030年時代を生き抜くために必要な能力と人間性を保持した学生を育成していく、「2030年型教育体制、21世紀型教育体制」の構築です。先に述べたように、今後、AI、IoT、ロボットなどの果たす機能が現在の定型業務や調査・分析業務などを代替、現存の5割の仕事が消滅していく中、AIで代替できない仕事に必要な能力である社会的・創造的知性などの涵養を通じて、「想定外」や「板挟み」と向き合い、乗り越えられる人材、AIで解けない問題・課題・難題と向き合える人材、創造的・協働的活動を創発し(創発とは、個々人の能力や発想を組み合わせて次の創造的な成果に結びつけること)、やり遂げる人材を育成していく必要があります。

したがって、N'2030 Planの育成する人材像は、N'2020 Planの建学の精神に基づいた育成する人材像を基本に、OECD教育部会が示した「2030年時代に必要とされる能力」、すなわち、①多様な協力関係を結び管理する能力、②情報収集力と新たな価値を見つけ出す能力、③深い専門知識と幅広い教養知識の涵養という3点に加え、④AI時代に必要な高い社会的知性や創造的知性の涵養、⑤厳しい時代に向き合い、生き抜く復元力2点を加え、これを現代的に解釈し、次の通りとしました。それは、「日本に根ざした道徳心を基に、良質な知識と英語・中国語等語学力を身に付け、我が国の歴史と文化を理解し、かかる知識を背景として、よりよき社会を実現する目標を持って、グローバルに活動する逞しい人材」です。そして、この人材像を実現するために、新時代に対応する能力を備えた『知識・スキル・人間性』の三位一体の総合能力を育むために各設置校である大学・高校・中学において、新しいカリキュラムを策定し、これを実施していく「2030年型教育体制」の構築を目指していきたいと考えております。

第2点は、大学、両附属高等学校、中学校をさらに優れた学校にしていく総括目標を設けたことです。学校運営を、経営資源、入学、在学中(教育段階)就職(出口)、卒業後の5局面に分けて、学校運営上の業績目標(KPI、key performance indicator)を30余り設定し、ダッシュボードに一覧にして収め、進捗状況を管理しつつ、総括目標を達成していく方式としました。具体的なKPI(業績目標)を申し上げますと、経営面の指標として、財務指標の経常収支差額比率や運用資産余裕比率、定員充足率、入学面の指標として偏差値、志願者倍率、在学中指標としては、授業アンケート調査や満足度調査分析結果等、卒業指標としては、就職率や一部上場企業の就職率、卒業後は寄付金率や卒業生情報の把握率を設定し、ベンチマーク校、目標とする学校の平均値との差を分析し、その差を埋めつつ、各設置校のブランドを引き上げながら目標を達成していくことを考えております。

第3点目は、1番目と関連しますが、新時代21世紀におけるカリキュラム改革です。身に付けるべき「知識・スキル、人間性」については、先に述べた新時代に対応する能力を備えた三位一体の教育を展開していくわけですが、大学であれば、アドミッション、カリキュラム、ディプロマ、各ポリシーに基づく体系的なカリキュラムを設計、これの実施を通じて、各学生が十分な学修時間による能動的・協働的な学修を通じて、新時代に向き合い、自立して生きる力を身に付ける教育体制を構築していく必要があります。先ず、アドミッションポリシーにおいては、入学時には本学で学びたいと思う学生が本学を選択・応募でき、本格的な学修をスムーズに開始できるよう基礎ゼミや教養教育等の充実を図ることが必要です。次に、カリキュラムポリシーにおいては、在学中、学生同士が切磋琢磨し、相互に刺激を与えながら能動的・主体的な学修習慣が身につき、成長できるようなアクティブラーニング環境を整えること、教える側では、高度な研究に裏付けられた体系的な教育と確かな教育力のある教員の更に質の高い教育を施すことが出来、その結果密度の濃い学修時間が増えることが期待されます。最後にディプロマポリシーにおいては、卒業時、学生が大学での学習が新時代で活用できるという実感を持つことが出来、かつ学修したことが就職活動で評価され、新時代に必要な能力を確かに備えて社会に出ることが出来るような体系的なカリキュラムとその教育環境を整えることが、必要となってくると思われます。

このカリキュラム改革は、大学のみの問題ではなく、中学校、高等学校も連携して、2030年時代に向き合い、生き抜く学力と人間力を身に付けるため、同様の改革を進めていかなければなりません。したがって、設置校毎に、議論を尽くしながら、成案をまとめていく必要があると、思っています。

本学の大きな挑戦について、これまで以上のご支援・ご協力を賜りますようお願い申し上げます。

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