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第13回 担当教員 森野 崇  専門 日本語文法史

日本語文法史(日本語学特殊研究②)

講義内容

 「日本語学特殊研究②」は、「日本語学特殊研究①」と交替で開いている、3年次生以上を対象とした講義科目です。「日本語学特殊研究」は、日本語についてちょっとディープに考えていく科目なのですが、②では特に、助動詞(とその仲間たち)をめぐるさまざまな文法の問題を検討しています。

講義からの豆知識

 上に「助動詞(とその仲間たち)」と述べましたが、「『仲間たち』って、何?」と思う人もいるかもしれません。ここでは、動詞に付いて文法的な意味を加える、助動詞の「仲間たち」の例として、「村田さんが手紙を書いている」「本田さんが走っている」などの「ている」を紹介します。学校の国語の時間に学ぶ文法では、「ている」は助動詞に含まれず、授業でとりあげられる機会もほとんどありません。しかし、「ている」によってその動作が進行中であることが表示されるのですから、「書いた」「走った」等、過去であることを表示する助動詞「た」と同じく、なかなか重要な存在です。
 さて、「書いている」や「走っている」で考えると、確かに「ている」は動作が進行中であることを示しているように思えますが、では「結婚する」や「消える」といった動詞だとどうでしょう?「彼女は結婚している」と言っても、教会で今まさに「誓います」と宣誓している最中だとか、市役所に婚姻届を提出している最中だとかの、進行中の場面を指すわけではないですよね。「リビングの明かりが消えている」にしても、照明が点滅を繰り返して消えつつある状況などではなく、消灯後の暗いリビングの様子を想起させます。さらにいろいろな動詞に「ている」を加えて考えてみると、「ある」や「いる」といった、そもそも「ている」が付かない動詞も見つかります。ほかにもまた、別のタイプの動詞グループがあるかもしれません。興味が湧いてきた人は、ぜひ調べてみてください。
 動詞の分類というと、中学校で学習した、五段やカ変といった活用によるものが思い浮かびますが、別の観点からの動詞の整理もできることを、「ている」は教えてくれます。「て+いる」と分解しておしまいにするよりも、これをまとまりとして捉え、「+ている」で明らかになる動詞の性質の違いなどを考える方が重要だし、おもしろいのではないでしょうか。助動詞「た」とともに、その仲間として「ている」を扱うことは、「過去」「完了」「存続」などと覚えた古典の助動詞「き」「けり」や「つ」「ぬ」「たり」「り」の理解にも結びつくのですが、そのあたりは実際の講義で…。

私の授業へのこだわり

授業風景

 助動詞やそれに関わる文法的な問題に関しては、小中高ととにかく暗記する作業を強いられ、その結果、つまらないものと思ってしまう人が少なくないようです。この講義では、そういった人たちに、助動詞の検討を通じて、文法のおもしろさを知ってもらうことをめざしています。文法に関するさまざまな事項を、守るべきルールとしてひたすら覚えるのではなく、なぜこうは言えないのか、その背後にどのような法則があるのか、なぜその法則は消えてしまったのか等々、文の法則をめぐる謎について、多くの例を手がかりにしながら迫っていく、それが文法的に考えるということでしょう。
 講義では現代語の助動詞も古典の助動詞もとりあげますが、受講生も「こうは言わないなあ」などと内省できる、現代語の助動詞を先行して扱います。たくさんの例を使ってみんなで検討していく、その過程を通じて、文法的に考えることの楽しさに少しでも気づいてもらえたら、うれしいですね。

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