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第4回 落語家の配り物 中川桂(本学専任講師)個人蔵

これまでこのコーナーで紹介されている正真正銘のお宝とはあまりにも価値が違いそうで、ちょっと気が引けますが…。文献以外にもお宝は存在するのだ、という紹介の一例として、しばらくおつきあいを願います。

落語家に限らず伝統芸能に携わる方々は、ご贔屓に配ったりするための手拭や扇子などを作っています。とくにそれらが必要となるのは、真打昇進や大きな名跡を受け継ぐ襲名披露の時で、その際には挨拶文と扇子・手拭を「三点セット」として用意します。

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まずは東西の、今は亡き大御所の手拭から。右側、東京の五代目柳家小さん師匠はふくよかなお顔立ちが狸に似ており、子狸が出てくる滑稽落語も得意のレパートリーでした。そんな芸風がよく現れた図柄です。小さん師匠は1995年に落語界初の重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されました。残念ながらこれはご本人から直接いただいたものではありません。

左側が上方の桂文枝師匠。小文枝から五代目文枝を襲名されて間もない時期に大阪の落語家のお祭り「彦八まつり」でいただいたもので、確か師匠のCDを購入した特典か何かだったような…。ちょうど師匠がおられて、進んでサインを入れてくださいました。

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次は現役の噺家さん。大阪の実力派で、数年前に放送されたNHKの朝の連続ドラマ「ちりとてちん」では落語監修を担当、出演俳優さんへの落語指導もされた林家染丸師匠が、1991年に前名の染二から染丸の名を継いだ際の配り物です。この時私は師匠の主催落語会の会員、単なる一ファンでしたが、この5年後に私の弟が染丸師匠に入門、私も「染丸師匠の弟子の兄」になるとは思いもよりませんでした。ちなみに染丸師匠、2009年度の芸術選奨・文部科学大臣賞を受賞されたばかりです。

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最後に本学にゆかりのあるものを。国文学科卒業生の三遊亭好二郎さんが、2008年に初代三遊亭兼好と名を改めて真打に昇進した際の配り物です。私が本学に着任した年に二松学舎大出身の落語家として初の真打誕生、これも何かのご縁だと思ったものです。昇進後の兼好さん、ますます腕に磨きがかかり、幅広い活動を展開されています。

ここに紹介した品々は直接研究の対象になるというものではありませんが、これらに象徴される伝統芸としての落語の歴史は、文学部の学問として取り組む価値を有する、魅力のあるものなのです。(中川 桂)

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