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第5回 日本漢文のすすめ!? 文学部中国文学科 町 泉寿郎

 私自身のことからお話しします。子供の頃から寺・神社・仏像・書画・茶道具など古い物が好きでした。高校時代の国語の先生に、小林秀雄という文芸評論家のことを教わり、その本を読んで、本居宣長・荻生徂徠・伊藤仁斎といった江戸時代の学者について書いているものが心に残りました。そして、近代以前の日本の学問に対する評価が十分に出来ていないと思いました。大学でやってみたいと思ったことはいくつかあったけれど、二松学舎に進学することになり、日本の漢文の研究をやろうと思いました。

 東アジア地域は、漢字文化圏という表現があるとおり、中国文明がその中心にあり、周辺諸国はその影響を受けてきました。日本だけでなく、朝鮮・ベトナム・タイなども同じです。日本人が中国文明を学んだ歴史は、それ自体が日本の歴史の非常に重要な分野なのです。ただ、周囲を海に囲まれていた日本は、外来の新しい文明を取り入れつつも、それらに完全に同化するのでなく、言語・文学・美術・医学・宗教など様々な分野で自分たちの文化を維持し育てることができたと言えます。

 私にとって日本漢文学とは、日本人が漢文文献を読みこなし、また漢文で表現した文献すべてを対象とする学問です。明治以前の書籍の少なくとも過半は漢文で書かれていて、漢文学という言葉からすぐに連想される漢詩などのいわゆる文学だけでなく、宗教も倫理も政治も経済も医薬も天文も音楽も絵画も、漢文で書かれています。結局それは、日本の学問世界・古典世界を勉強することですから、日本学術史、あるいは日本古典学と言い換えられるのではないかと思っています。

 私の場合、特に江戸時代(とその前後)を専攻したので、その時代の儒学が漢方医学と、内容的にも人的にも関係が深いと知り、儒学と医学を合わせて研究するようになりました。最近は「日本文化は医者と坊主が支えてきた」ことを再認識し、仏教にも注意しています。

 外国の日本研究者の多くは、日本を研究するために漢文が必要なことを理解しています。医学史についても、日本国内とりわけ二松学舎では「ヘン」なことをやっていると見られがちですが、外国では決してそんなことはありません。

 私は資料調査のために、なるべく図書館・資料館・博物館や、時には寺社・個人宅にも出かけます。最近は個人情報保護の規制もありますが、故人の事績を調べるには墓石を探すのが有効です。図書館やインターネット検索での調べで済ませるのではなく、現地に足を運ぶことから得られるものは必ずあるはずです。また事績調査には、漢文だけでなく日常往来の手紙など崩し字を読みこなすことも絶対に必要です。当たり前のことですが、その時代に身を置いて考えてみようとする姿勢が大切だと思っています。(文学部中国文学科 町 泉寿郎)

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