各学部・学科ホームページ
お問い合わせ
スペシャルコンテンツ

第1回 中国語を学ぶメリット 文学部中国文学部 石村 広

 最近では、ディズニーランドのような有名な観光地ばかりでなく、デパートや家電量販店、駅の構内など、街の至る所で中国語を頻繁に目にするようになりました。近隣のアジア諸国から大勢の外国人が日本を訪れるようになり、日本人が中国語に触れる機会が確実に増えてきているのです。南青山や表参道に中国語の看板が立ち並ぶ日も、もしかしたらそう遠くはないかもしれません。

 外国語というと、その国に行って使うものと思いがちですが、これからは日本にいても中国語の知識が役立つ機会が増えていくのではないでしょうか。卑近な例ですが、店に高級ブランド品を買いに来た中国語しか話せない旅行者にとって、安心して買い物ができるのは、やはり中国語の分かるスタッフが対応してくれる店の方だろうと思います。顧みるに、大学の中国語教育は、専門を学ぶために必要な語学力の養成はもちろんのこと、こうした社会の変化にも柔軟に対応できる汎用性の高い教授法を採り入れる必要があるでしょう。

 中国語は、見た目は親しみやすくても、耳には大変疎遠なことばです。発音や文法構造の違いを知ることで、中国語が日本語と異質なことばであることが分かり、その国に行かなくても異文化を疑似体験することができます。外国語を学ぶ楽しさは、この疑似的な異文化体験にあると思います。それに、慣れの部分も大切ですが、ことばの仕組みの違いをちゃんと理解しながら学んでいる人の方が、語学の上達は速いようです。私たちはあまりにも自国語の型に慣れすぎているため、どんな外国語をも日本式に理解しようとする傾向があります。とりわけ日本人の中国語学習には、こうした傾向が強く見受けられます。中国語を外国語として学ぶことで(当たり前のことですが)、同文同種と思い込む誤解を払拭する効用も期待できます。

 中国語を学ぶメリットは、他にもあります。それは、漢族とは異なる言語・習俗をもつ諸民族(いわゆる少数民族)について調べる際にアクセスが容易になる、ということです。私はずいぶん前に北京で満州語(清代の公用語でした)に関する資料を集めた時、この言語に関する文献や辞書が豊富に存在することにあらためて気付かされました。この情報量の差は、やはり中国語の知識がないと埋めることができません。チベット文化の研究をしている先生のお話でも、中国には大変優れたチベット語の辞典があるのだそうです。このことは、多民族国家中国の社会や歴史、文化の多様性を知る上で、もっと強調されてよいと思います。

 そんなことを考えながら、教室という実践の場で効果的な教授法を模索し、今も試行錯誤を繰り返しているところです。(文学部中国文学科 石村 広)

「アジアンデパ地下 試食コーナー」一覧はこちら