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著書紹介

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横溝正史研究 6

  • 著者:江藤茂博・浜田知明・山口直孝編
  • 出版社:戎光祥出版
  • A5判 303頁 2,500円+税
  • ISBN:978-4-86403-149-3
  • 発売日:2017年3月28日

『横溝正史研究』の成り立ちとこれまで

 『横溝正史研究』は、その名の通り、日本を代表する探偵小説家横溝正史をさまざまな角度から検証する目的で作られた研究誌です。二松学舎大学文学部の江藤茂博・山口直孝の2人に探偵小説研究家の浜田知明さんに加わっていただいて、編集を行っています。二松学舎大学に所蔵されている横溝正史旧蔵資料(概要については、「国文学科の「お宝紹介」のコーナーをご覧ください。http://www.nishogakusha.jp/special/kokubun01/02.htmlを活用しながら、横溝作品の成り立ちや魅力、社会的な現象としての意義などを考察しています。これまでの特集は、下記の通りです。「金田一耕助登場」(創刊号、2009年4月)、「ビジュアライズ横溝正史ミステリー」(2号、2010年8月)、「倉敷・岡山殺人事件」(3号、2010年9月)、「横溝正史の1930年代――『鬼火』から『真珠郎』まで」(4号、2013年3月)、「横溝正史旧蔵資料(二松学舎大学所蔵)が語るもの」(5号、2013年3月29日)。新しい知見を提供して、愛読者と研究者、いずれにも読んでもらえることを心がけながら制作しています。

6号「横溝正史旧蔵資料が語るものⅡ――世田谷文学館からの眺め」の読みどころ

 最新刊の第6号(2017年3月)では、世田谷文学館所蔵の横溝正史旧蔵資料を紹介する特集を組みました。正史が世田谷区成城に住んでいた縁で、世田谷文学館には原稿・日記・手紙・蔵書など膨大な資料が収められています。今回はその中から、まだ知られていない資料をいくつか取り上げました。
 例えば、正史が自身の書いたものやインタビューを切り抜いたスクラップ・ブックがあり、そこには知られていないものが多数含まれていました。警視庁を訪れた時の見聞を記した珍しいルポや『八つ墓村』のヒントの一つとなった津山事件を知るきっかけになった座談会など、貴重な資料を「横溝正史単行本未収録エッセイ・座談会集」としてまとめて掲載しています。また、雑誌の切り抜きや草稿などから、正史が『夜光虫』と題した作品を同時期に二つ構想していたこと、敗戦直後にユーモア小説の翻訳に取り組んでいたこと、友人のSF作家海野十三の急死で途切れた雑誌連載小説を書き継いだことなどの新事実を明らかにしています。
 巻頭には正史の次女野本瑠美さんの特別手記「ネコの目 イヌの目 スエッ子の目」を掲げました。童話作家である瑠美さんが、幼い子の目線で綴った回想記は、やわらかで鮮やかな印象を読む者に与えます。家庭人としての正史の姿を豊富なエピソードで語ったロングインタビュー「横溝正史と横溝孝子――次女から見た父と母」とあわせてご覧いただければと思います。 さらに金田一耕助シリーズの一編『香水心中』の改訂増補版を収録しています。大幅に書き足す作業がなされながら、放置されていた原稿を活字化したもので、金田一耕助が、軽井沢のホテルのバルコニーで、夜空を眺めながら酒を飲むシーンなどが新たに登場しています。
 ほかにも論考、コラム、「『宝石』・『別冊宝石』横溝正史関連記事目録」、「横溝正史年譜事典」など盛り沢山の内容になっています。どこを読んでもらっても、発見があるはずです。横溝正史、探偵小説に関心のある方は、ぜひご覧ください。(文学部国文学科 山口直孝)

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